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日当たりの良い南側の一面を、素足で過ごすことができる左官磨きの土間広縁に。作業を家族で参加、一生の思い出です。
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設計を担当
南斜面に宅地開発された敷地に建つ築46年の戸建木造住宅の改修です。 南斜面の宅地のため南からの陽当たりの良い周辺環境となっています。 この日当たりの良い南側の一面を左官磨き仕上げの土間の広縁にしました。
この広縁は土の磨き仕上げなので素足で過ごすことができます。土間は蓄熱性があるので、夏は日陰で昼間でも冷んやりとして、冬は陽が当たって夜でもじんわり暖かい床になっています。この土間の広縁は心地よい家族の居場所になっています。
施主の祖父の他界により祖父母の家をどうするかを親兄弟が話し合っていたそうです。その時に祖父母の孫である施主が「家を引継ぎたい」と親兄弟に打診したことが、この家づくりのきっかけでした。
とは言え築50年近くなる家や土地を引き継いで良いものか不安だったようで、この家にどのような可能性があるか、相談を受けるところから始まりました。
まずは家と造成宅地の劣化状況を診断するホームインスペクションを行いました。表面的には古びた感じの経年的な劣化が見受けられましたが、御祖父母は本当に丁寧に住まわれていたのだと感じさせられるお家でした。
2階の和室の天井に不思議なシミのようなところがたくさんありました。雨漏りでもなく獣害でもなく結露跡でもなく、いったいこれは何だろうと尋ねると、自分たち孫たちがジャンプして天井にタッチした跡が経年で浮き出た結果だったのです。この家は親世代の兄弟たち、孫世代の従姉妹たちの集まる家だったということを窺い知ることができました。家族みんなに慕われていた家であり、家を引き継ぎたいという施主の想いから、この家の良さを引き出したプランにしましょう、ということでスタートしました。
この家の建っている敷地は南斜面を造成した宅地で、その斜面の最も高い位置にあります。長い坂道を登らないといけないのですが、何と言っても南側の気持ち良さはこの家の魅力です。南側には庭があって、居間からよく出入りしていたそうです。この南側を「広縁」に見立てて、窓を閉めると内部になるけど、フルオープンになる窓を開けると土間の縁側になるように、内部だけど外部のような、外部だけど内部のような、曖昧な空間にしました。
土間の広縁は左官による土の磨き仕上げで、素足でもきもい良い土間になっています。
「完成してしまうのが寂しい」と言っていただけるほど、楽しい家づくりだったと言っていただきました。施主のご希望で家づくりに積極的に参加していただきました。既存の柱をサンダーで磨いてもらったり、壁や床の左官仕上げをプロの左官と一緒に仕上げ作業するほか、子どもたちも参加できる工夫もしました。家づくりが家族にとっての一生の思い出になったのではないかと思います。
施主と最初にお会いしたのは共通の友人である土地家屋調査士からのご相談からでした。まずは祖父母の家を引き継ぐ価値はあるか、見てもらいたいということで、ホームインスペクションを行い、現状の建物の診断をしました。浴室などの水回りは著しく劣化していましたが、通常の劣化状況でした。その診断結果とともに、耐震改修と断熱改修をすれば新築と同等の性能は確保できるし、リノベーションで今の暮らしに合ったお家になりますよ、とアドバイスしました。
その後、この家を引き継ぐことを決意され、土地家屋調査士の共通の友人とともに、親世代の相続を調整するサポートをはじめました。それと並行してリノベーションの設計もはじめました。
本来であれば相続の調整がはっきりしなければ条件が変わる可能性があるため並行して設計を進めることは望ましく無いのですが、子どもの入学のタイミングもあり見切り発車せざるを得ない状況でした。
そのため設計の進め方にも工夫があります。仮に相続の関係で改修工事費にかけられる費用が少なくなったとしても、多少の設計の変更で工事費を調整できるプランになっています。
例えば階段の位置を変えない方針を決めたのですが、予算によっては2階は改修工事を最小限にするという選択肢を取ることができるようにしています。その他、トイレや浴室の位置を大きく変えないなど、既存の基本的な家の構成を大きく変えることのなくリノベーションプランが成立するように進める方針にしていました。
結果、やはり相続の条件について想定から変更があり予算を減額する必要が発生して、それが着工の直前に判明したのですが、2階は耐震改修と断熱改修をするということだけという方針に変更することで工期に影響が無く進めることができました。
広縁の土間工事が最後の工事でした。
最後の仕上げ工事はキメの細かい布で磨く作業なのですが、これを家族皆んなで、私たち設計者も一緒になって磨きました。
それがこれから住むお家に気持ちを込めているようで、とても和やかな雰囲気でお家の完成を迎えました。
よく「家に愛着があるか」という話をしますが、その家に住むまでに何をしてきたか、という過程の体験が愛着に関係していると、我々も確信した家づくりとなりました。
広縁の土間の下塗りをした後、モルタルが余ったらしく、私の友人でもあった左官さんから「どこかで使わない?」という話があり、急遽勝手口の土間に使うことになりました。
ちょうど施主に子どもたちも見にきていたのですが、左官さんの粋な計らいで、子どもたちにデザインしてもらうことになりました。
子どもたちが手に持っていたビー玉を埋めるアイデアで話が盛り上がり、ビー玉の埋まった勝手口土間が出来上がりました。
LDK横の寝室の建具は既存のお家の和室に使われていた建具をそのまま使っています。
広縁の土の磨き土間との相性もとても良いです。
階段は設計図では予算の都合上、杉の集成材だったのですが、
「無垢の一枚板の製材だったら最高なんだけどなー」とぼやいたら、工務店の粋な計らいで吉野杉の節無し赤身持ちの板材を用意してくれました。ちなみに階段の手摺りは削り出しで作っています。
予算が無く、、ということで天井の仕上げはセルフビルドにしたのですが、左官さんに軍手仕上げという方法があるよということで方法を教えていただきました。鏝(こて)を使って天井を塗るのは高度なのですが、軍手で漆喰材を掴んで天井に塗りつけてグルグルと弧を描くようにすれば、手作業で子どもたちにも作業できます。手作り感ありますが、鏝ムラのような表情にも見え、良い仕上がりになりました。
南斜面の宅地のため南からの陽当たりの良い周辺環境となっています。 この日当たりの良い南側の一面を左官磨き仕上げの土間の広縁にしました。 この広縁は土の磨き仕上げなので素足で過ごすことができます。土間は蓄熱性があるので、夏は日陰で昼間でも冷んやりとして、冬は陽が当たって夜でもじんわり暖かい床になっています。この土間の広縁は心地よい家族の居場所になっています。
LDK横の寝室の建具は既存のお家の和室に使われていた建具をそのまま使っています。 広縁の土の磨き土間との相性もとても良いです。
磨き土間の広縁でつながるダイニングキッチン。 キッチンは木製のII型です。既存の柱を利用してキッチンとダイニングを緩やかに区切っています。
磨き土間の広縁は家の南側の端から端まで人がっています。
階段は設計図では予算の都合上、杉の集成材だったのですが、 「無垢の一枚板の製材だったら最高なんだけどなー」とぼやいたら、工務店の粋な計らいで吉野杉の節無し赤身持ちの板材を用意してくれました。ちなみに階段の手摺りは杉材を削り出しで作っています。
南側のフルオープンウィンドウで開放的になっています。 現在は南側の庭にウッドデッキが出来上がっています。
ご夫婦でセルフビルドされています。 プロの左官さんに指導していただきました。 後ろ姿はプロみたいです。
磨き土間床の広縁の下塗りをしています。 子どもたちも興味津々です。
広縁の土間の下塗りをした後、モルタルが余ったらしく、私の友人でもあった左官さんから「どこかで使わない?」という話があり、急遽勝手口の土間に使うことになりました。 ちょうど施主に子どもたちも見にきていたのですが、左官さんの粋な計らいで、子どもたちにデザインしてもらうことになりました。 子どもたちが手に持っていたビー玉を埋めるアイデアで話が盛り上がり、ビー玉の埋まった勝手口土間が出来上がりました。
広縁の土間工事が最後の工事でした。 最後の仕上げ工事はキメの細かい布で磨く作業なのですが、これを家族皆んなで、私たち設計者も一緒になって磨きました。 それがこれから住むお家に気持ちを込めているようで、とても和やかな雰囲気でお家の完成を迎えました。