2020/10/15更新0like5206view

著者:佐藤ゆうか

風害に強い土地選び・家づくりのポイント

この記事を書いた人

佐藤ゆうかさん

2級建築士。
工業高校卒業後、中小規模の建設会社に勤務。
木造住宅を中心に新築やリフォームの設計に携る。
現在は3児の育児を中心に在宅ワークに励み、いつか現役復帰を夢見ながら建設業界にしがみつく日々。

毎年、各地に大きな爪痕を残す台風。
これからの家づくりでは、台風の対策もしっかり考えたいですね。
今回は、住まいが台風に遭っても、家族が安心して過ごせるように、「風害に強い家」をつくるためのポイントをまとめました。
土地選びから、家づくりで気を付けたい6つのことを確認して、風害に強い家づくりにお役立てください。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

風害とは?

風害とは、強い風がもたらす災害のことを言います。
強い風の原因として、台風、低気圧、竜巻、ダウンバーストなどの突風や暴風が挙げられます。
建物への被害としては、屋根や外壁の飛散や、倒木や飛来物による、外装や窓ガラスの破壊などがあります。
強い雨を伴うことも多く、この場合、風害と水害を分けることは難しくなり、「風水害」とすることも多いです。

風害に負けない!土地の選び方

世の中に「絶対に安全」と言い切れる土地はありません。
しかし、これから紹介するポイントを確認した上で土地選びをすれば、風害に遭うリスクを減らすことができます。

1.風の強さを確認する
篠原乃生子「『Akiya House』海沿いの家」
(※画像はすべてイメージです)

その土地が、風が強い地域か、あまり心配のない地域かを確認しましょう。
風の強さを知る方法として、立地によって、「地表面粗度区分」という指標があります。
「地表面粗度区分」を参考にすると、立地によって、以下のように風の強さが分類されます。

海岸・湖水沿い(区分I)> 住宅が密集していない田畑などの場所(区分II)> 住宅密集地や市街地(区分III)> 大都市(区分IV)

海に行った際、海から離れた部分から強い風が吹いてくるのを経験したことがあると思いますが、同じ建物でも、一般的な住宅地より海沿いの方が風によるダメージは大きくなります。
風害を意識した土地探しをする際は、その土地がどんな場所にあるか地図上や現地で感じてみてください。

また、高い建物が近くにある場合や、風上に山脈がある場合、「ビル風」や山から下ってくる強い風の被害に遭うことがあります。
その地域の風の特徴を知った上で、家づくりの際に対策ができるといいですね。

2.防風対策がされているか
小堺文彦「ジンバランに沈むバリの夕陽」
風が強い地域では、「防風対策」がされている場合もあります。
風と建物の間でクッションのような役割をしてくれる「防風林」「防風柵」などです。
家づくりの際に、風害対策のために自分の土地の周りだけ高い塀で覆うのは、費用的に現実的でありません。
風が強い土地を購入する場合は、近隣に防風対策がされているか確認してみましょう。

3.ハザードマップを見る
災害の際に発生する被害予想を確認できる「ハザードマップ」は、自治体のホームページや、情報提供サービス、土地探しに協力してくれる不動産会社などでもらうことができます。
風害に関するハザードマップはありませんが、土地探しの際には一度確認しておくと安心ですよ。

風害に強い家づくり6つのポイント

強い風に遭ってしまっても、家づくりの工夫次第でダメージを小さくすることはできます。
風害に強い家づくりのために、やっておきたい6つのポイントをお伝えします。

1.家を飛ばさない
強い風によって、家の全体が飛ばされるとういうことは、よほどの限りないと思いますが、強い風に屋根や外壁などが部分的に飛ばされてしまうことは多々あります。
「飛ばされない」ためには、家づくりの際に以下のことを確認しましょう。
・屋根材一枚一枚について、しっかり固定されるか
・外壁や屋根に使われる工法がどのくらいの耐風力があるか
・木造の場合、「ひねり金物(ハリケーンタイ)」や「ホールダウン金物」などの耐風力に有効な金物が使われるか
・アンテナは使わないか、室内に設置する
・物干し竿はしっかり固定される金物を使う or 低い位置につける or 使わない

台風で木造住宅に被害が出る風速は、20m/sを超えるあたりからです。
工法や家の耐風性を確認する際の目安にしてみてください。

2.飛んでくるものから家を守る
強い風に対して、自分の家を強化しても、他所から飛んできたもので被害を受けることもあります。
飛散物から被害を受けやすいのが、屋根や外壁などの外装と開口部です。
外装については、飛んでくるものによって大きく破壊されてしまうことがありますので、家の構造や外装材をタイル貼りなどの丈夫なものにすることで対策しましょう。

3.開口部を強くする
飛散物や強い風で破壊されやすいのが、窓などの開口部です。

開口部が破壊されると、家の中にいる人がケガをしたり、家財に被害が及ぶ恐れがあります。
また、室内に侵入した強い風が、内側から屋根を押し上げ、吹き飛ばす事例もあります。
開口部の風害対策は家全体を守るためにも必要不可欠です。
家づくりでできるポイントとして、以下のものがあります。

■広い開口部をつくらない
大きな開口部は、開放的で気持ちがいいですが、その分「的」が大きくなりますので飛散物に破壊されるリスクも大きくなります。
広い開口部を作る場合は、ガラス部分を強化する、ベランダなどで囲むなどして、飛散物が当たりにくい配慮をしましょう。

■ガラスが割れても飛び散りにくくする
飛散防止フィルムを張る、網入りガラスにする、強化ガラスにすることが効果的です。

■シャッターや雨戸をつける
最近の住宅では、シャッターや雨戸をつけない窓もよく見かけますが、やはりシャッターや雨戸があると弱いガラス部分を守れますので、安心です。
雨戸に比べて、シャッターは強い風に弱いため、車庫や広い開口部などは、耐風性に優れたシャッターの取り付けを検討しましょう。

4.構造を考える
住宅の構造として、一番風に強いのは鉄筋コンクリート造(RC造)です。
建物の重量があり、木造住宅に比べて固く、屋根材が飛ばされにくいなどの風害に強い特徴があります。
毎年、強い台風に襲われる沖縄県では、鉄筋コンクリート構造が最も普及しています。
構造については、予算や、立地条件などに合わせて検討したいですね。

5.形状はシンプルに
建物の形状は、凹凸が少なく、シンプルな方が強い風による被害を受けにくいです。
特に、1階部分より2階部分が飛び出している「オーバーハング」や、外壁から一部だけ飛び出したベランダや、軒や庇は風圧力を受けやすく、下から吹き上げる風も集中しやすくなります。

6.停電、断水に備える
風害では、停電し、照明や冷蔵庫やエアコンなどの生活に欠かせない設備が使えなくなってしまうことがあります。
戸建て住宅の場合、停電によって断水する心配はありませんが、強い風のために外壁に沿って配管されている給水管が損傷し、水が出なくなることはあります。

台風シーズンとなる9月前には家の周りを点検し、配管の状況に異常がないか確認しておくといいでしょう。
停電への備えとして、太陽光発電システムと蓄電池を設置すると、長期の停電でも対応できます。

また、断水時の備えとして、家庭用貯水タンクを設置する方法があります。
新築やリフォームで両方を備えれば、台風はもちろん、地震の際にも役立ちます。
風害に負けない家づくりについて、土地選びと家づくりのポイントをお伝えしました。家づくりの対策に加え、住み始めてからの定期的なメンテナンスも大切です。

特に、屋根と外壁は、メンテナンスを行わないと飛散しやすくなり、周囲にも被害を及ぼす恐れがあります。新築時の対策と、定期的なメンテナンスを行い、長く安心して住み続けられる家づくりをしましょう。

【関連する記事】
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