2020/10/09更新0like2768view

著者:tennto1010

台風に負けない家にするための窓ガラス対策

ここ数年、日本列島は「これまでに経験したことがないような暴風雨」と表現されるような深刻な自然災害に見舞われています。そして、誰もが自然災害の脅威にさらされているという現実を認め、対策を講じていく必要があります。

そこで今回は、台風時にあわてないための家づくりについて、特に『窓』を取り上げて考えます。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

台風の怖さは窓からやってくる

どんなに堅牢な住宅であっても、台風などによる暴風雨に対して脆弱な部分があります。それが『窓』。

暴風雨で窓ガラスが破損すれば、破片で怪我をすることはもちろん、たとえ小さな破損であっても、そこから一気に吹き込んだ風雨が家中をめちゃくちゃに破壊し、天井・屋根までをも吹き飛ばしてしまうほどの大きな被害にもつながりかねません。

つまり、台風対策=窓対策、と言っても過言ではないでしょう。

※画像はすべてイメージです。
前田 慎「H邸」

台風時に求められる窓の性能とは?

災害のない日常生活では、窓の断熱性能や遮音性能などに意識を向けがちですが、災害時には、耐風圧性や気密性、水密性といった基本性能に加えて、安心・安全に屋内で過ごすための防災性能が求められます。

意外に思われるかもしれませんが、一定の基準を満たした窓ガラスであれば、強風時の風圧による破損の可能性は非常に少ないと考えられています。
伊佐 強「読谷村の家」
一方で、住宅被害で最も警戒が必要なのは、飛来物による窓の破損です。

風速20m/s以上程度(何かにつかまっていないと立っていられないほどの非常に強い風)で、看板の落下や屋根葺材の飛散が起こるとされていますが、看板や瓦に限らず、小石や無造作に干したままの雑巾、ベランダに置きっぱなしのスリッパでさえも、窓ガラスを突き破るような破壊力をもつ危険な飛来物になることも知っておかなければなりません。

つまり、飛来物からガラスを守ることが台風対策の要になると言えるのです。

ガラスの種類ごとにみる、性能と台風対応力

それでは、飛来物への対策に有効な窓ガラスとは、何を指すのでしょうか。
ネーミングが紛らわしいものもあるので、ここで改めて住宅で使用される主な窓ガラスについて、本来の性能と台風時の対応力を見直してみましょう。

※ただし、ここでは単体で使用した場合の一般的な性能について解説しています。各メーカーで複数の種類のガラスを合わせた商品も出されているので、個々の製品の性能についてはご確認ください。

1. ペアガラス(複層ガラス)

【イメージ】二重のガードで強そうだけど?
【主な性能】ガラスの間に空気層を設けたもので、主に断熱性能を高める目的で使用されることが多い。
【台風対応力】ガラス自体が普通の単板ガラスであれば、衝撃に弱く、台風対応力は低め。
2. 網入りガラス
 
【イメージ】網が入っていれば強度が増して割れにくい?
【主な性能】 火災時の熱割れによるガラス飛散・脱落を防止し、延焼を食い止める目的に網を入れたもの。
【台風対応力】飛散防止の効果はあるが、ガラス自体に強度はなく衝撃には弱いため、台風対応力は低め。
3. 強化ガラス 

【イメージ】強度を活かして天窓やデザイン階段に使われることも多いけど、災害にも強い?
【主な性能】熱処理後急冷し、表面を圧縮させることで強度をもたせたガラス。普通の板ガラスの3〜5倍の強度をもつ。また、万一割れても破片は細粒状になるため安全性も高い。 
【台風対応力】風圧には強いが、鋭利なものによる衝撃には弱い。破損時の安全性は高い。
4. 合わせガラス・防犯ガラス

【イメージ】ペアガラスとは違う?防犯には対応していても、防災には不向き?
【主な性能】ガラスの間に特殊なフィルムを挟んで、貫通防止や飛散防止効果をもたせたガラス。中間膜を重ねて特に防犯用として性能を高めたものを防犯ガラスと表す。
【台風対応力】こじ開け防止等の貫通防止力は、飛来物の貫通防止力の強さともイコール。また、万一割れても破片が飛び散りにくいので被害を最小限に食い止めることができる。台風対応力は高い。

以上から、ガラス単体としては、防犯ガラスが台風対策に最も有効だということが分かりました。

リフォームで可能な台風対策は?

それでは、災害への備えを考えた場合、リフォームの範囲で行える窓対策にはどのような方法があるでしょうか。

1. ガラス交換

災害に強い防犯ガラスなどへ交換する方法。既存のガラスと変更後のガラスの厚みとの差が対応範囲内であれば、サッシ交換なしでガラスのみ交換が可能です。防災対応の複層ガラスへの変更などで厚みが増す場合は、アタッチメントをつけることで、ガラスの厚みにかかわらずガラス交換だけで済む場合もあります。いずれも個々の設置条件によりますので、ご確認ください。

2. サッシ交換

古いサッシの水密性や気密性に問題があれば、サッシごと交換することも選択肢にあがります。外壁を壊す工事が必要な場合もありますが、既存のサッシに新しいサッシを被せる比較的簡単な工法もありますので、設置条件や予算に応じて検討してみましょう。
3. 雨戸やシャッター、その他同機能のしつらえを

むき出しの窓を飛来物から守る意味で、雨戸やシャッターの効果は大変大きいと言えます。防犯の観点から、一階の大きな掃出し窓にのみに設置する住宅も多いですが、二階やスリット窓などへの対策も一度検討してみては?それ以外の、事例のようなFRPグレーチングで作られたものや家と同じくらいの塀なども、暴風や防犯になるはずです。
岩田 和哉「『小さな平屋』内部と外部の関係性を見出すFRPグレーチング」
FRPグレーチング扉を閉めた状態。
意匠性も高く、光も入ります。
岩田 和哉「『小さな平屋』内部と外部の関係性を見出すFRPグレーチング」
大開口であっても、庭を挟んで向こうに家と同じ高さの壁があるのは防風避けに良さそうです。
4. マンションの窓ガラス交換やシャッター設置

マンションの場合、窓は共用部とされていますので、基本的にサッシ交換をともなう窓の変更やシャッターの後付けは不可です。

ガラスのみの交換については、外観を変えない、耐風圧や防火性能などそのマンションに要求される基本性能を満たしているか等、交換の可否をマンション規約で確認のうえ、必要な場合には管理組合に許可をとったうえで施工する必要があります。

5. 飛散防止フィルム

手軽かつ効果が高いアイテムとして飛散防止フィルムや防犯フィルムの貼付も検討しましょう。合わせガラス(防犯ガラス)のもつ防災性能をある程度満たすため、一定の効果が期待できます。

6. その他(養生テープやダンボール)

昨年の台風接近時には品切れが続出し、ちょっとしたパニック現象もおきた養生テープやダンボールでの対策。これらは、ガラスの飛散防止のための緊急措置としては一定の効果がありますが、破損防止の効果はありませんので、誤解のないように対策が必要です。
「うちは大丈夫!」という慢心が、災害の被害を広げかねません。もしもの時の対策を万全にして、安心・安全な住まいづくりを心がけたいですね。
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