住宅には様々な年齢、体格の人が同時に生活します。その中で、家づくりを計画する人が一番軽視してしまうのは、高齢者への配慮ではないでしょうか。例えば自分が30歳であれば、60歳の人の気持ちや体力を理解するのは困難だと思います。私は、高齢者の身体能力を体験する機会があり参加した経験がありますが、想像より遥かに辛かった覚えがあります。2世帯住宅で一緒に親と住まわれる場合はもちろん、10年後には自分が事故や病気でハンディキャップを負っている可能性もあります。少なからず、数十年先は自分も高齢者です。だれでも快適に過ごせる家づくりを目指しましょう。
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住まいにユニバーサルデザインを取り入れる
ユニバーサルデザインの例
ユニバーサルデザイン住宅で配慮すべき3つのポイント
廊下と建具のポイント
段差のポイント
水まわりのポイント
デザインを優先したい場合でも
住まいにユニバーサルデザインを取り入れる
ユニバーサルデザインとは、誰にでも使いやすいデザインと言う意味です。とても素敵な考え方ですね!
バリアフリーと意味合いは近いですが、こちらは障壁を排除しようとする考え方ですので、少しだけ違います。実は今、住宅に使われている製品はこのユニバーサルデザインを大いに取り入れて出来ています。さりげないことなので気づかないことも多いですが、その一部を紹介します。
ユニバーサルデザインの例
ユニバーサルデザインは、握力を必要としないデザインで作られたものが多くあります。
その例がスイッチ。現在、多くの製造メーカーはプッシュ式のスイッチを採用しています。ひと昔前までは摘まむ操作が必要だったり、操作できる面積が小さく、指に力が必要でした。
しかしプッシュ式であれば、複数の指を使ったり、握りこぶしで入り切りが可能です。高齢者は握力の低下が著しいので、このように工夫されていますが、若い人でも必要のない力はなるべく使いたくないですよね。まさにこれこそユニバーサルデザイン!
画像はプッシュ式のスイッチに色分けをして工夫しています。デザインも可愛いですが、高齢者にとっても、色で識別してもらえるのは非常に分かりやすく良いアイデアです。
ユニバーサルデザイン住宅で配慮すべき3つのポイント
では、具体的にどういったところに注意して住宅を考えるべきでしょうか。主なポイントを以下の3つに焦点を当てて考えましょう。
①廊下と建具
②段差
③水まわり
これら3つのポイントを中心に見ていきましょう。どこまでやるかは難しいところですが、現状でハンディキャップのある人がいないのであれば、「この程度対応しておけば良い」という目安にしていただければ幸いです。
廊下と建具のポイント
廊下と建具はなるべく広くとりましょう。具体的には、介護用車いすが通行可能な幅として、有効で78cm以上欲しいところです。
自力で歩ける場合も考慮すると、将来手すりが設置可能なように、壁の裏に木の下地を入れて補強しておきましょう。また、建具は出来るだけ引き戸にしてあげましょう。車椅子の場合、開き扉だと一度扉の軌跡から移動する手間ができてしまいます。
なお、画像のように、引戸の引手は握ることができるバー状のものとしてあげるとより使い勝手が良くなります。
段差のポイント
高齢者のためを考えると段差は無くし、段差ができてしまう場合は手すりを設置するのが基本です。
しかし、段差にも上り下りしやすい段差・つまずきやすい段差など様々です。例えば、フローリングと畳の間を見切るために、敷居と呼ばれる木材が入っていることがあります。この木材が少しだけ出っ張っていて、そこにつまずくことがあります。
階段のようにしっかりとした段差であればこのようなことはありませんが、足が上がりづらい高齢者にとって、微小な段差が危険になりえます。無くせる段差はなくし、中途半端な段差は避けるべきです。
また、階段の考え方にも注意が必要です。なるべく上る傾斜を抑え、螺旋階段のように廻り部で段差がある状態は避けたいところです。もちろん、手すりの設置も忘れずに。
水まわりのポイント
最後に水まわりについて考えましょう。
2010年の厚生労働省における調査データの中で、65歳以上における家庭内事故死亡者数で最も割合の高いのが、浴槽での溺死です。十分に注意して計画をしなければなりません。
具体的には、段差を無くすことに加え、浴槽へのまたぎ部分・洗い場での立ち座り・浴槽内に手すりがあると安心です。また、浴槽へのまたぎ部分に一度座れるよう、サポートベンチ、またはフチの大きな浴槽を採用しましょう。
お風呂での動作は高齢者にとって運動です。しっかり計画してあげましょう。また、冬場に部屋と比べ、お風呂やトイレが寒く温度差で血圧が上昇してしまう場合も考えられます。浴室暖房などの計画も有効です。
デザインを優先したい場合でも
ユニバーサルデザインを取り入れることは、誰もが使いやすいデザインを目指すことです。高齢者やハンディキャップのある人に対しての配慮が大きいですが、あくまでも、それを考えることで同時に若者や健常者にも使いやすいデザインとすることが目的です。
子供や高齢者を考えると、どうしてもデザインが大ぶりになりがちです。デザイン優先で考えたいという場合でも、一度ユニバーサルデザインをしっかり考えた上で選択をしていただければ、後悔しないのではないでしょうか。全ての人にとって快適な暮らしを考える上で、10年・20年先の未来の家族像を見越し、家づくりの計画をしましょう。