2017/03/19更新0like5371view

著者:tennto1010

古さを愉しむ家づくり 〜知りたかった古材利用 Q&A〜

近所の風情ある木造の民家が解体され、跡地には、短期間でパタパタとありふれた住宅が建っていく光景に、もどかしい思いをすることがあります。様々な理由から解体を余儀なくされていく古民家ですが、こうした古民家を住み継いでいくための一つの方法に、古材の再利用があります。今回は「使ってみたいけど、特別なものなのでは?」と、思われがちな古材利用についての様々な疑問について、考えてみたいと思います。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

古材を再利用する魅力とは何か?

古民家を改装したショップやカフェは世代を問わず人気がありますよね。こうしたことからも分かるように、その自然な風合いや長い年月を積みかさねてこそ出せる深い趣には、誰をも惹きつける魅力があります。自然のままの形状や柔らかな肌触りは、人工的には作り出せないものです。

また、古材は長い年月を経て自然乾燥しているため、ひび割れや収縮、狂いが少なく安定している建材だということも、施工するうえでの大きな魅力です。

さらに、軽くて加工しやすい、加工しやすいということは、再利用しやすい、再利用しやすいということは、環境にもやさしい!ということになりますから、古材を再利用することは大変理にかなった選択だと言えるのではないでしょうか。

古材の定義とは?

おおむね戦前に建てられた、主に伝統構法(金物を使わずに仕口・継手によって木の接合部を組み合わせて構築する構法)の建物に用いられた良質な国産木材と定義することが多いようです。

戦前の日本では、一般の民家でも大断面で良質な木材が多く使われてきました。
これに対し戦後に建てられた住宅は、復興のため短期間で建てられたものが多いために、強制乾燥させた木材や貧弱な木材、安価な輸入材が金物や接着剤で接合されており、再利用に適さないものが多いとされています。

こうした理由から、戦前に建てられたものかそうでないか、というのが、古材を定義する一つの目安とされているようです。

古材の種類と再生可能な古材とは?

古民家は、土台や柱、梁といった構造材と各種の造作材で構成されていますが、これらすべての部材が再生利用可能というわけではありません。土台や床下材など、地面の湿気やシロアリ被害などを受け傷みが進んでいる部位などがあるからです。

再利用のために採取されるものは、主に、柱(ヒノキやスギなど)、梁(松など)や、大黒柱(ケヤキなど)などが占めるようです(樹種は地域によって傾向が異なります)。
使われていた部位にそのまま使用することが多いですが、板材に挽きなおして再生したり、家具に加工することももちろん可能です。

板材(外壁や床材など)は採取に手間がかかり、破損することも多い部材ですが、商業施設などに人気があり多用されています。
りっぱな曲がり梁 新材で入手することは困難!
もとの敷地に積まれていた苔むした石 これも素敵な古材再利用
エトウゴウ建築設計室「鎌倉の家 旗竿敷地に建つ中庭のある家」

どのような処理をされて再利用されるの?

古材は古民家を手壊しで解体することによって得られます。その後、洗い(煤や埃、カビなどを除去)、釘抜き、埋め木(虫食いや傷んだ箇所を削って同じ樹種の古材で埋める)、磨きといった丁寧な工程を経て、商品となります。

強度は大丈夫?

鉄やプラスチックなどの工業製品は新品の時に一番強度があり、経年変化で強度は落ちていきます。対して木材では、年月が経つほど強度が増す性質を持っていると言われています。

例えば、ヒノキは伐採後2〜300年で強度が最高点に達するとされており、建立後1300年以上経った法隆寺のヒノキは今は強度の最高点から緩やかに下降中の地点ですが、それでも新材と同等以上の強度を保っているというから驚きです!

欠損や虫害などによる傷みをのぞけば、古材には構造材としての強度は十分備わっていると言えます。

古材の査定や価格設定 安いの?高いの?

骨董品のように扱われ、価格設定が不明確な点が、古材が流通しにくい要因とも言われていますが、材の長さや太さ、樹種の他に、以下のような査定基準もあります。
例えば、プラス査定されるものには、
・ 手斧跡(ちょうなあと):手斧という「く」の字型の道具でつけられた魚のうろこ模様のような削り跡
・ 墨字:建築当時の年号や、大工の棟梁や建築主の名前の墨書き
・ 煤色:囲炉裏で燻されて黒光りしているもの
・ 長物:長さが4m以上のもの
などがあります。

一方、マイナス査定されるものには、
・ 虫食い・欠損 
・ ペンキの塗装
などがあります。

古材の価格は、材料そのものの価値に加えて、解体費や洗浄などの処理費用、保管料、運搬費などが加わって決まります。

まるまる一棟、古材を使って新築すれば、相当な割高になりますが、適材適所で古材を取り入れるのであれば、必ずしも手が届かないものではありません。

ひとつとして同じ材がないので金額の比較は単純にできませんが、古材を扱う業者は部材をサイズや樹種ごとに仕分けした価格リストをつくっているので、数件を比較し、使いたいイメージの部材の適正価格を知ることはできるのではないでしょうか。

古材はいつ、どのように入手する?

工事が始まってから古材利用を検討したのでは、使える古材に制約が多くなってしまうので、計画中に設計者に相談するのが一般的と言えます。

構造材として古材を使う場合は、必ず専門家の判断が必要ですので、設計者、施工者などと同行し、現物を見て選択するのが望ましいでしょう。構造材に限らず完成イメージを共有する意味でも、関係者と一緒に現物を確認することは重要です。

昨今は、古材利用が注目されるようになっていますので、地域に根ざした古材利用をすすめる事業者のグループやNPOなども増えています。その土地で採れた木材で建てられた古民家を、同じ地域で活かすのが(地域文化継承の意味や気候の面などからも)ふさわしいというのが古材の考え方にありますから、地元の業者や団体に相談することは、その土地のものを活かすという意味合いも含まれています。運搬費の点からも、地元で材を探すというのが理想です。

どのように使う?

日本の民家は、構造材を現すことで意匠を兼ねているところに特徴があります。古材を利用したにもかかわらず、新建材で覆ってしまうのでは残念すぎます!是非、古材の趣を存分に味わえるように使いたいものです。

さて、ここまでは主に柱や梁の構造材を再利用する際の疑問を紹介してきましたが、その他にも、古建具や古道具など、取り入れやすいアイテムからまず探してみたいと考えている方も多いことでしょう。

一つ古建具があるだけで、家の雰囲気が一気に深みを増します。ネットショップなどでも扱われていますので、入手がしやすくなっています。SUVACOの事例でも、味のある古建具や古道具をつかった雰囲気あるお部屋が多数紹介されています。
家づくりにおける数ある建材の選択肢の中で、古材はやっぱり特別です。特別ではあるけれども、決して遠いものではない!と、多くの人の理解が広がっていくことで、日本の住宅も変わっていくかもしれませんね。
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