住宅を購入する際、多くの人が加入する火災保険。その名の通り、火災における被害を補償する保険ですが、実はそれ以外の風水害などの被害にも適用されるということはご存じでしょうか。自然災害の発生時にも活用できる、火災保険について詳しく見ていきましょう。
▽ 目次 (クリックでスクロールします)
そもそも火災保険とは?
火災保険の対象
では実際のところは?
被害に遭ったらどうすればいいのでしょうか。
どういうものが火災保険の対象になりますか。
どうせ入るならカバー範囲が広い火災保険が良いのでしょうか。
補償を受けるまでは、どういう流れで進みますか。
鑑定人による査定に問題はないのでしょうか。
鑑定の結果、保険金に不満がある場合はどうすれば良いですか。
そもそも火災保険とは?
火災保険とは、火災や風水害などの被害を補償する損害保険です。保険の対象となるのは、「建物」と家の中の物品などの「家財」です。
損害保険は「実損払い」といって、被害額に対して保険金が下りる仕組みです。そのため実際の損害以上の補償を受けることは基本的にできません。
そして、火災保険の対象となるかどうかは被害の原因によって決まります。その原因が、ご自身が加入している火災保険の補償範囲内かどうかがポイントです。
火災保険の対象
火災保険の主な対象は以下です。
・火災(隣家からのもらい火も含む)
・落雷
・爆発(ガス漏れによる爆発など)
・風災、雹(ひょう)災、雪災(強風で飛んできた物で屋根に穴が開いたなど)
・水災(台風による洪水での床上浸水、土砂崩れによる家屋の倒壊など)
・外部からの物体の落下、衝突
・水濡れ(漏水や給排水設備事故による水濡れなど)
・騒擾(そうじょう/集団による暴力行為)
・盗難
・破損・汚損など
これらのうちどこまでがカバーされるかは、加入している火災保険によって異なります。一般的に、「住宅総合保険」などと呼ばれるタイプは上記の大半を網羅しており、一方で、「住宅火災保険」などと呼ばれるタイプは、火災、落雷、爆発、風雹雪災などに限定されています。(※各呼称や補償内容は、保険会社や契約内容によって異なります。詳しくは、各保険会社に確認してください)
なお、地震、津波、噴火などの大規模災害は対象外です。地震による火災も対象外となりますのでご注意ください。これらは地震保険による補償となります。
では実際のところは?
横浜市・千葉市を拠点にリフォームを行う
エイケンホーム(株式会社永建ホーム)取締役である久保田健義さんに、詳しい内容をお聞きしました。
「多くの方は住宅ローンを組む際に火災保険に入っているのですが、契約内容の詳細まで覚えていらっしゃる方は少ないかもしれませんね。そして、火災保険が火災以外の災害にも適用されるということを知っている方も少ない印象です。弊社はリフォーム会社でありながら保険代理店も兼ねているので、災害対応のリフォーム時に、火災保険の利用についてもご案内するようにしています。皆さん、火災以外でも使えることをご存じないので、けっこう驚かれますね」
被害に遭ったらどうすればいいのでしょうか。
「災害などで住宅が被害を受けたら、施工会社(工務店・リフォーム会社等)に連絡すると共に、加入している保険会社の事故受付センター、または取扱代理店に連絡してください。また、被害状況を写真に収めておいてください」
※もし、どこの火災保険に入っているか分からない場合には、下記へ問い合わせると良いでしょう。
▼
自然災害等損保契約照会センター(一般社団法人 日本損害保険協会)
TEL. 0120-501-331(平日9:15-17:00、土日祝・年末年始を除く )
被害状況の写真を撮影しておくことは、市町村から罹災(りさい)証明書を取得するときに役に立ちます。罹災証明書とは、災害により被災した住家の「被害の程度」を市町村長が証明するものです。様々な被災者支援策を受ける際に必要となります。
被害の程度を証明するための写真なので、住宅の片付けをする前に撮影しておきましょう。
▼参考
災害に係る住家の被害認定 : 防災情報のページ - 内閣府
どういうものが火災保険の対象になりますか。
「原因が何なのかによって、対象かどうかが決まります。たとえば、強風で屋根に穴が空いた場合は、火災保険の対象となります。しかし、経年劣化は対象外なので、外傷のない雨漏れなどには適用されませんのでご注意ください。
一方、バルコニーの排水口が詰まって水があふれて住宅に浸水した場合は、給排水設備の事故による水濡れに当たるため、契約内容によっては火災保険の対象となります。このあたりは判断が難しいと思いますので、保険会社に確認するようにしてください」
どうせ入るならカバー範囲が広い火災保険が良いのでしょうか。
「補償範囲が広い保険のほうが保険料は高くなりますから、内容を聞いたうえで必要かどうか判断するのが良いでしょう。よりカバー範囲が広い住宅総合保険であれば、破損や汚損など不測かつ突然的な事故も補償してくれますので、小さなお子様がいるご家庭の場合には特に安心かもしれませんね」
補償を受けるまでは、どういう流れで進みますか。
「火災保険を申請すると、保険会社による事故受付の後、損害保険登録鑑定人という専門家が派遣されます。彼らが現地の災害状況を調査し、損害額を算定します。この鑑定人は、保険会社からの要請で鑑定を行いますが、立場上は第三者機関です」
鑑定人による査定に問題はないのでしょうか。
「鑑定人は専門性を持ち、中立・公平・公正に判断することを求められます。とはいえ人間ですので、人によって判断が異なる可能性もあるでしょう。また、現場を見ていると、鑑定人による査定が、我々のようなリフォーム会社による見積もりと乖離(かいり)するケースもたまにあります。実際のリフォーム工事にどのくらいかかるのか、部材や職人の工賃がどのくらい必要かは、現場を知るリフォーム会社のほうが正確な場合があります。ですので、火災保険を申請する際には、あらかじめ工務店・リフォーム会社にも声をかけておくと良いでしょう」
鑑定の結果、保険金に不満がある場合はどうすれば良いですか。
「その場合、日本損害保険協会という一般社団法人が運営している
『そんぽADRセンター』という相談窓口に問い合わせると良いでしょう。外資系損害保険会社の場合は、
一般社団法人保険オンブズマンという機関があります」
よく分かりました!久保田さん、ありがとうございました。
これまで想像もつかなかった自然災害が多発する日本において、火災保険の役割はより一層重要なものとなっています。いざという時のためにも、ご自身が加入している火災保険の補償内容を確認するようになさってください。