私たちの生活は、音に溢れています。特に家にいる時間が長くなるほど、住宅の防音対策の重要性がみえてきます。
住まいの防音について知ることで、プライバシーを守り、ストレスの少ない快適な家づくりをすることができるようになるでしょう。この記事では、住宅の防音の必要性や基本的な知識、家づくりでできる防音方法についてお伝えします。
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住宅でも防音は必要?
防音とは?dBとは?知っておきたい基本の防音用語
どの程度防音するべきか?
住宅で防音する方法
知っておくと理解が深まる防音用語
住宅でも防音は必要?
はじめに、住宅で防音する必要性について考えてみましょう。
住宅街を歩いている時、住民のくしゃみやテレビの音が聞こえたことはありませんか?
おそらく窓が開いているか、住まいの防音対策が十分でないことが考えられます。
くしゃみやテレビの音などの生活音が外に漏れている状況、なんだか恥ずかしいですよね。
場合によっては、生活音が原因で近隣とトラブルになり、住みづらくなる恐れもあります。
また、家の中ではいろいろな音が発生します。
扉の開閉音、掃除機の音、足音、家電製品が動く音、ペットの鳴き声、楽器の音、トイレの音、赤ちゃんの泣き声…
これらの音は、一緒に暮らす家族であっても不快に感じたり、睡眠や健全な生活を妨げる場合があります。
家の外から聞こえてくる音も、家の中に入れないことが大切です。
車の音や、飛行機の音、近隣住民の生活音など、外からの音は防ぎたいものです。
住宅の防音は、内装材や扉や窓などの防音性を組み合わせて、「家の外に音を出さない」「家の中に音を入れない」ようにすることで、その家に暮らす人と近隣に住む人が快適に過ごすためにとても大切なものなのです。
防音とは?dBとは?知っておきたい基本の防音用語
防音を意識した家づくりやリフォームを行う場合、防音の性能を表すいろいろな用語を目にすることになるでしょう。
ここで、家づくりをする際に知っておきたい基本的な防音用語について確認しましょう。
・防音(ぼうおん)
住まいの音対策の総称のことです。
音対策には、「遮音」「吸音」「防振」などがありますが、すべてを含めて「防音」といいます。
・遮音(しゃおん)
部材に音を反射させて、通り抜ける音を遮ることをいいます。
通り抜ける音が小さい部材ほど、遮音性が高いということになります。
遮音性能が高い部材を使いすぎると、音が反射しすぎて過ごしづらくなりますので、バランスを考えた部材選びが大切です。
・吸音(きゅうおん)
部材に音を抜けさせて、反射させる音を小さくすることをいいます。
反射する音が小さい部材ほど、吸音性が高いと言えます。
遮音材と組み合わせて使うことで、音の伝わり方をコントロールすることができます。
・防振(ぼうしん)
振動の伝達を抑えることをいいます。
防振性は、足音や音楽の低音を下の階に伝えないために、床に求められます。
・dB(デシベル)
音の大きさを表す単位です。
日本建築学会の「建築物の遮音性能基準と設計指針」では、音のうるささや騒音の程度をdBを用いて数値化しています。
音の感じ方は人それぞれですから、音の大きさを数値化することで、防音工事によってどの程度防音できるかを確認することができます。
・L値(エルち)
床の衝撃音に対する遮音性能を表す指標で、上階の床の音がどの程度下階に伝わるかを示します。
フローリングなど、防音性能のある床材に等級が定められ、「L-40」「L-45」「L-50」というように表現されます。床材のカタログ等でよく目にする数値で、低いほど防音性に優れます。
音の大きさを表す単位はdB(デシベル)やL値(エルち)以外にもさまざまあります。
この記事の最後で詳しく解説します。
どの程度防音するべきか?
防音を意識した家づくりをする際に、防音によって何を目指すか?を検討しましょう。
楽器の演奏やカラオケなど、芸術活動を気にせず行いたい場合、防音室の検討をしてください。
環境省の定めた騒音に関する環境基準では、私たちが健康に過ごせるは、周囲の音が昼間50~60dB以下、夜間40~50dB以下と言われています。
防音で快適な住まいを目指す場合は、部屋の中の音が40~60dB以下となることを目指して計画するといいでしょう。
防音の配慮は、人が動いた際に床が振動し、下の階に伝わる「床の衝撃音」についても必要に応じて検討しす。
床の衝撃音には2種類あり、「軽量床衝撃音」…LLと「重量床衝撃音」…LHに分けられます。
「軽量床衝撃音」は、次のような音のことを言います。
・軽いものを落とした音
・椅子をひきずる音
・スリッパで歩く音
コツン、トントンなどの軽い音ですね。
「重量床衝撃音」は、次のような音のことを言います。
・子どもが飛び跳ねる音
・重いものを落とした時の音
・重い家具をひきずる音
ドスン、ダンダンなどの重く響く音ですね。
床衝撃音に対する遮音等級「L値」は、部屋の用途や衝撃音の種類によって分類され、一番遮音性の優れた「特級」から「1級(支障がない標準的な仕様)」、「2級(許容、ほぼ満足できる仕様)」、「3級(苦情が出る確率が高い、最低値)」に分けられ、集合住宅はほぼ特級~1級の仕様で作られます。
床衝撃音に配慮した住宅用の床材は、「LL-40」「LL-45」が主流で、軽量衝撃音が「聞こえない~かすかに音が聞こえる」重量衝撃音が「かすかに聞こえる~聞こえる」程度の仕様となりますので、床衝撃音に配慮した家づくりをする際には、このレベルを目指して計画するといいでしょう。
住宅で防音する方法
家づくりで防音対策をする方法について確認しましょう。
・プランニングによって騒音を遠ざける
家の配置や間取りの計画によって、外から入ってくる音を遠ざける方法です。
音の発生源となる道路や隣地などから、寝室や長く過ごす部屋を離れた位置になるように意識して計画します。
また、音が発生する方向に設置する窓や扉はなるべく小さくしましょう。
採光などの関係でどうしても開口部が小さくできない場合は、遮音性能の高いサッシなどを採用するといいでしょう。
・プランニングによって家の中の防音に配慮
家の中で発生する音に関する防音を行う場合も、間取りの工夫が有効です。
例えば、以下ことが挙げられます。
・個室と個室の間に収納を設けて、距離をつくる→各部屋で発生する音の聞こえを軽減する
・寝室など、静かに過ごす部屋の横や真上に水回りや子供部屋を作らない→足音や水の流れる音などが伝わるのを防ぐ
・玄関や階段の位置を寝室から遠ざける→ほかの家族が就寝している時間帯に出入りがある場合の音の伝わりを軽減する
家族の生活スタイルや、年齢に応じて発生する音についても考えて計画できるといいですね。
・内装の吸音性を高める
内装材に吸音性の高い材料を使って、音の反射を防ぐ方法です。
音の反射を防ぐだけで、話し声の聞き取りやすさが向上し、赤ちゃんの泣き声の聞こえ方が緩和されるなど、比較的手軽に快適な空間を実現することができます。
例えば、吸音性の高い天井材を採用し、床にカーペットやコルクマット、窓にドレープカーテンを設置するなどの方法があります。
・窓の防音対策を行う
家の中の音を外に出さない、家に音を入れない防音対策を行う場合、窓の防音対策は重要です。
窓は、外壁部に比べて厚みがなくなるため、次のことを意識して行いましょう。
・大きさをできるだけ小さくする
・隣の家の窓から遠い位置に計画する
・二重サッシなど、高気密な窓を採用する
・扉の防音対策を行う
家の中で、部屋同士の防音をしたい場合、防音に配慮した室内扉を採用すると、ドアが隔てる面の部屋からの音漏れを軽減することができます。
・排水管を防音
家の中を通る排水の音は、意外と響くものです。
室内に使われる排水管に、防音材が施された部材を使うことで、水が流れる音を軽減することができます。
防音措置が施された排水管は、多くの建設会社で標準仕様にされていますが、依頼する会社が決まった際には一度確認しておくと安心ですよ。
・すき間を埋める
音は、すき間から漏れるものです。
換気扇、給気口、エアコンの穴などはどうしても「穴」や「すき間」になりやすい部分。
防音に配慮する場合、換気扇や給気口はもちろん、外部に設置されるフードについても防音に配慮した商品を検討してください。
知っておくと理解が深まる防音用語
最後に、家づくりの際に知っておくと防音について理解が深まり、製品選びなどに役立つ防音用語についてお伝えします。
・Hz(ヘルツ)
音の周波数の単位で、住まいの防音に関しては、音の高低を表す単位として用いられます。
音をあらわす波動や振動が、1秒間に何回繰り返されるかを表していて、1秒に1回波動がある場合は1Hzとなります。
一般的に、周波数の低い音ほど聞こえ方も低くなり、防音しにくいとされています。
・Dr値(ディーアールち)、D値(ディーち)
遮音性能を表す指標で、壁や建具の防音性能を表すのに用いられます。
防音性のあるドア製品が「Dr-40」「D-40」のように表されている場合、そのドアは「平均40dB」の音を遮る性能があるということを表します。
この場合、部屋の中で60dBの音が発生した際、60dB-40dB=20dBでドアから外に出る音は20dBということになりますね。
数値の大きいものほど、音を遮る性能は高くなります。
遮ることができる音は、音の高低(Hz)によって異なりますので、「平均」という表され方をします。
・T値(ティーち)
サッシやドアの遮音性能を表す指標で、外で発生する500Hz以上の音に対して、遮音性能がどの程度かを表します。
等級なし~T4まであり、数値が上がるほど遮音性能に優れます。
住宅の防音の必要性、知っておきたい防音の基本的な知識、家づくりでできる防音方法についてお伝えしました。
最近の住宅は高気密化が進んでいるため、木造住宅でも一定の防音が期待できますが、防音や音の聞こえ方に配慮した家づくりをすることで、生活は快適なものになるでしょう。
特に、生活スタイルの違う家族や、小さい子どもが一緒に暮らす家庭では積極的に住まいの防音対策について検討した家づくりをしてみてください。