2022/12/21更新0like7366view

著者:SUVACO編集部

【いい家・オブ・ザ・イヤー2022】今年最も支持された住宅事例TOP15を発表!

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この1年間で、SUVACOに新規公開された住宅事例は約1,000件。そのなかでも、特にユーザーからの反応が大きかった人気実例TOP15をランキング形式でご紹介します。今年の1位はどんな事例でしょうか?

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家づくり・リノベーションはどこに頼むのがいい?SUVACOがご要望に合ったプロを提案します。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

SUVACO「いい家・オブ・ザ・イヤーとは?」

【1位】光帯の家【TV建もの探訪 放映作品】|新築 [鹿内健]

【2位】overstory 既存住宅のポテンシャルを引き出す縁の下のリノベーション[エキップ]

【3位】オグハウス[インクアーキテクツ]

【4位】「シンプルモダン×素材感」マンションリノベーション。[CLOCK]

【5位】久が原のコートハウス [小嶋良一|こぢこぢ一級建築士事務所]

【6位】凹凸の多い間取り/庭付きマンションのポテンシャルを引き出すフルリノベーション [植村康平]

【7位】清澄白河の家~中と外の関係を生むリノベーション~ [333architects]

【8位】GLA/森の素形 [一級建築士事務所 GLA]

【9位】Spectrum 光をあやとる|清瀬の家 [白崎泰弘・治代]

【10位】丹生川の古民家 [烏野良子]

【11位】ペッタンコハウス2 / 広い庭と薪ストーブのある暮らし [株式会社田邉雄之建築設計事務所]

【12位】和色〜和モダンマンションリノベーション [モナトリエ株式会社]

【13位】HAUS_M|新築 [R.E.A.D.& Architects]

【14位】平和の家|新築 [WORKS・WISE 大桑博彦]

【15位】朝霞の家 / ずれとつらなり|新築 [アソトシヒロデザインオフィス/阿蘓俊博]

「いい家・オブ・ザ・イヤー2022」を振り返って

SUVACO「いい家・オブ・ザ・イヤーとは?」

SUVACOにはこの1年間に、1,000件近くの住宅事例が新たに登録されました。そのなかでも特にユーザーの支持が高かった事例TOP15を、ランキング形式でご紹介しています。
まずは、1位〜10位までの作品から順位順に発表します。上位10位までは事例を手がけた専門家のコメントも載せていますので、併せてお楽しみください。

【1位】光帯の家【TV建もの探訪 放映作品】|新築 [鹿内健]

以前は低層住宅や工場、今は大きな倉庫・高層集合住宅・オフィスが立ち並ぶバス通りに挟まれた三角地、中2階がダイニングキッチンとなっている2階建ての住まい。道路沿いの2面が閉じたデザインの外観からは想像できない、光を取り込んだ美しい室内空間です。

お昼どきには壁をつたい、テーブル面に差し込む光。また、冬場と夏場によっても色々な光の表情を美しく演出する左官仕上げの壁。ダイニングからリビングへ降りる時には視界いっぱいに庭の緑が広がるなど、毎日の何気ない時間のなかで「人生を楽しむ家」のための仕掛けのひとつである陰影が、光や景色をみずみずしく引き立たせています。

専門家はかたちになる前に思い描いた暮らしと、施主のその後の生活の中で実感するこの住まいの魅力が、同じ時と同じ場所で重なっているように見えます。

Sデザインファーム株式会社 鹿内 健さん

建築家

敷地は三角形、通行量の多い道路に囲われており、むやみに開くと周囲の建物からも覗かれる条件でした。しかし、これよりも難しいと感じていたのは『終の住処』を作りたいという要望でした。先日のTV放映後にご覧になった方がSNSで以下を呟いていました。『この家はある種の到達点で見栄とか執着とか無い感じが良かった』と。

流行りのデザイン、最新の性能など家づくりの際には色々な情報を見ることになりますがそれに捉われすぎることなく、「最期の晩餐に何を食べるか?」という問いに近いと思いながら我々もクライアントさんも家づくりを進めました。
最終的にはクライアントさんにとって本当に大切なものを楽しむ家になったと思います。

【2位】overstory 既存住宅のポテンシャルを引き出す縁の下のリノベーション[エキップ]

眺望の良い丘の一番高い場所に建つ、木造2階の戸建てリノベーション。施主は、敷地内のモミジや木蓮、柿の木など自然が豊かな環境と、既存の家の持つ雰囲気が気に入って購入したという。

築43年ということもあり、まずは断熱性能と耐震性能の向上、段差と仕切りが多く使いにくいつくりを、段差解消をしつつ開放感がでるように間取りを整理しました。

フォーカルポイントである玄関は、デザインはそのままに木製ドアやペアガラスといった断熱仕様に変更。リビング外にあった小さなバルコニーを、柿の木と木蓮を取り込むような配置で、リビングからそのまま続く広いウッドデッキに大変身。1階部分のデッキは、敷地の関係上、隣地の2階以上の高さになることで日当たりもプライバシーも最高!

断熱性能はHEAT20のG1相当、耐震改修は評点1以上を確保しつつ、瓦屋根を金属瓦にふき直すというこだわりも。住まいの資産価値を維持・向上させつつ健康的で快適な空間。大人はもちろん、二人の男の子がこれから家の中でのびのびと過ごせることは間違いありません。

株式会社エキップ 柳本英嗣さん

設計

もともとが凝ったつくりの木造住宅で、施主もその雰囲気を気に入って購入されていたこともあり、良いところを残しつつ意匠、性能ともにアップデートするという設計方針でした。
立地が高台の最上部でとても眺望の良い場所ながら内部からはその良さがあまり感じられなかったこと、1フロア内での不必要な段差が多い事などが主要な意匠的な改善点としてありました。
もとの図面が残っておらず、段差を減らすために梁の掛け方など想像しながら矩計図を普段より多く書いて検討しました。
かなり築年数が経っている物件だったために傾きなども多く、都度調整しながらの施工で現場は大変でしたが、もとの良さと新しさがバランスよく融合して仕上がったように思えます。

【3位】オグハウス[インクアーキテクツ]

近くに両親や親戚も住んでいる、祖父母から引き継がれた土地。近隣との付き合いも古く、プライバシーを守り適度な距離感を保つ方法や、どのような住まいにするのかを探りながら計画。施主家族に向けて「未条件(顕在化していない要望や条件)を引き出すプログラム」が行われたそう。

LDKを1階に設けたパターン、2階や3階に設けたパターン、1階と2階に分けるパターン、そのほか、吹抜けの有る無しや両親や親戚との関わりなど「例えば○○の場合」という場面に応じたプランが作られました。それぞれのプランで家族全員が1日、1週間、1年の生活シーンをイメージしながら粘り強く話し合ったそう。

理想や希望、問題点などを整理するためのフィールドワークやケーススタディでもあるワークショップを経て、どのようなプランになったのか?笑顔あり涙あり(かは分かりません)の手に汗にぎるストーリーは、じっくりと事例をご覧いただきたい!

既存建物の柱で使われていた、柿(こけら)板を活用した外壁や、柿板づくりと柿葺き(こけらぶき)は施主家族がセルフビルド。「思い出のある古材を再利用した外壁の柿葺きです。ガルバリウムとのコントラストが美しく、面白い!」と大満足。

合同会社インクアーキテクツ 金谷聡史 さん

建築家

ご相談をいただいた当初は1階に玄関ガレージ、2階にできるだけ広いLDK、3階に個室…といったよくある都市型の間取りを希望されていましたが、結果は全く異なる計画となりました。

インクアーキテクツでは”自分らしく暮らす”住まいの在り方を建主さんと一緒にケーススタディワークを重ねて可能性を探ります。方向性が変わったきっかけは、実家でもある隣家との間に中庭を設けたケーススタディプランでした。狭小敷地にガレージとさらに中庭まで設ける考えは当初は面積がもったいないという考えでしたが、自分らしく暮らす住まいには外の自然環境との関係をいかに豊かにするかが重要だという考えに至り、微調整を繰り返し中庭を確保しました。

【4位】「シンプルモダン×素材感」マンションリノベーション。[CLOCK]

一般的によく見る既存の間取りを活かしながらコストを抑え、造作家具やハッとするような素材によって、オリジナリティあふれる住まいとなったマンションリノベーション。

L型キッチンと作業台付きテーブルのある個性的な配置は、コンパクトながらも充実した収納と、そろえた折戸に隠された冷蔵庫など、作業黄金比とも感じる効率動線をもとに、キッチンからダイニング、また逆にダイニングからキッチンへの家族の関係性もまるっとデザインしたよう。

高さをなくすことで圧迫感を軽減した4.2mの収納家具をリビングにしつらえて、座ることはもちろん子供の遊び台としても大活躍。天井にむき出しのコンクリートや配管、TVのあるモルタル壁など、ザラつきや素材感をそのままに「きれいすぎない。」仕上がりとなっています。

専門家名からイメージする、時を感じさせないタイムレスなデザインに、カラースキームの基本となったモノトーンは、単に無彩色ではなく奥深い複雑な色合いや色の温度が見え隠れしていると教えてくれる印象的なもの。

CLOCK株式会社 前田 響さん

代表・設計デザイナー

間取り的にはリノベーションのザ・定番といっていいほどよくあるタイプなので、各箇所にオリジナルの造作家具などを設けて、定番とは全然違うオリジナリティを出しました。
特にキッチンスペースはすべて造作することでPSやダクトとの絡みをうまく納めています。

6畳ほどのスペースにキッチン・作業台・食器棚・冷蔵庫置場、パソコンデスク、ダイニングテーブルを、無理なく収める配置や寸法の設計は難しく苦労しましたが、とても使いやすいとお施主様にも喜んでいただけました。

【5位】久が原のコートハウス [小嶋良一|こぢこぢ一級建築士事務所]

23年前に義父が建てた二世帯住宅を、5人家族が2人となった今、古希を目前にこれからの人生をより豊かなものにしようと一念発起し、親と子のための住まい建て替え。

中庭を真ん中に、そのまわりをLDK~水回り前の廊下~寝室に沿ってコの字に囲うように設計。中庭と室内の段差をなくしているので、ほぼ広いワンルームのようなしつらえです。その日の天気や気分によって、コの字に移動してみたり、リビングダイニングから真っ直ぐ寝室に行ってみたり、季節によって太陽の角度や植栽の変化も感じることができます。

中庭に面した窓には断熱性の高い木製サッシを使用することで開放感を保ち、床下空間には暖かい空気を循環させる暖房レガレットを採用。

その時々に合わせた楽しみ方が備わり、住めば住むほどにあたたかい気持ちや思い出が、その土地に優しく宿っていく住まいです。ご近所さんとの茶会や食事会を楽しんでいるとのことですが、施主のしなやかさを体現したような住まいから、あふれる活力や勇気が伝心しているはず。

こぢこぢ一級建築士事務所 小嶋良一さん

代表・建築家

70歳のUさんにとって、建て替え前の広すぎる庭は大きなストレスでした。しかし、これから歳を重ね、家で過ごす時間が長くなることを考えると、「四季を感じる庭」は、健やかな暮らしに必要なものだと考えました。手入れが負担にならない小さな庭は、Uさんにとって何よりの楽しみになっているそうです。
入居して2度目の春を迎える頃、久しぶりにお伺いする機会がありました。その際、斜向かいの家から出てきた80代の女性に声を掛けられました。
「あなたがこの家を考えたの?すごくいい家ね。Uさんよりも私の方が気に入っちゃって、しょっちゅう遊びに来てるのよ」

古き良き住宅地に建つ「久が原のコートハウス」
ご近所さん達が集う憩いの場となっていることをとてもうれしく思います。

【6位】凹凸の多い間取り/庭付きマンションのポテンシャルを引き出すフルリノベーション [植村康平]

物件探しから、リノベーションの向き不向きやその建物が持つ可能性など、専門家と一緒に複数の候補を見たうえで、暮らしのイメージに合ったマンションを購入した施主。傾斜地にあるため、上層階なのに庭のある羨ましいロケーションを、十分に引き立たせる広々とした印象の住まいが叶いました。

細かく部屋が区切られて、明るい部屋と暗い部屋が二分されていた既存の間取りを、ライフススタイルに合わせて、和室をなくしてオープンキッチンを採用した広いLDKに。寝室と洋室も同様に庭を意識した工夫により、光と風が通る気持ちの良い空間になりました。大型マンションの宿命でもある大きな梁や柱型も、そのまわりに施した魅力的なデザインの造作家具や建具で使い勝手も向上しています。

凹凸が多く難しいのでは?と思いがちな住まいをあえて選び、経験値と提案力で、ひらりと快適で魅力的な住まいへと変えてゆく。専門家と物件探しの段階から十分なコミュニケーションが取れていたことももあり、スムーズなリノベーションだったそう。

植村康平建築設計事務所 植村康平さん

建築家

マンション自体が傾斜地に建っており「上層階なのに庭付き」という魅力的なロケーションの物件でした。
リノベーション前は細かく部屋が区切られていたため、二分されていた明るい部屋と暗い部屋を、今回のリノベーションでは構造の特徴を活かし、ライフスタイルに合った大空間のLDKを作り出しました。大空間にした事で日当たりや風通しなども改善され、住環境も大きく向上させる事ができました。

また、大型マンションであるため大きな柱型が室内に現れていましたが、その柱型の周りに造作家具を配置する事で圧迫感を軽減する同時に生活の質を向上させました。

【7位】清澄白河の家~中と外の関係を生むリノベーション~ [333architects]

築38年のマンションは、川が流れて高い建物もな環境の良い立地にもかかわらず、内部の天井高は220cmほど、バルコニーに面するサッシも高さが低いため、せっかくの開放感を感じられずにいた住まいを、躍動感あふれる形にリノベーション。

室内の空間の中で、水まわりやパントリー部分は天井を低く抑えた“ケース”に収めるようなイメージでまとめ、リビングやダイニングなどの居室はコンクリートあらわしにした最大限の天井高で構成。まるで、室内と外のような感覚が住戸内で演出されています。日々の生活の中で空間を渡りあるく時、体感的に居室空間を開放的に感じることができて、「狭さを感じさせない」仕掛けとなりました。

ハンガーラックや玄関脇のソファなど隙間空間の工夫、高低のメリハリだけでなく、既存のコンクリートあらわしと新しい素材での仕上げの対比が、お互いを引き立たせる相乗効果となっています。

株式会社トリプルスリーアーキテクツ(333architects) 宇津木喬行さん

代表・建築家

もともと天井の低い住戸だったため、躯体があらわしになった空間をMAXとして、壁や天井をつくったり素材を分けたりすることでどのようにしたらさらに広がりを感じることができるか、ということが大きなテーマでした。
壁をつくるとどうしても物理的には狭くなるのですが、縮尺の大きな模型やCGを使って何度も検証し、これまでの体験と感覚に頼りながら寸法を設定していったのをよく覚えています。
もちろん機能的なことも考えつつ、お客様と一緒にこのように感覚に訴えかけるような空間をつくることができたのはとても貴重な経験でした。

完成後、お客様にとてもご好評をいただけて本当に良かったです。

【8位】GLA/森の素形 [一級建築士事務所 GLA]

山や岳、表情豊かな森など借景に恵まれた環境。専門家が何度も森の中を歩くうちに、生命力に満ちた木々のある森の延長のような空間となった自邸。グレーに退色した様子は、キャンバスの白とも違う、雑木群の力強さを引き立たせたりまた逆に、住まい自身が浮き上がってくるような佇まい。

迫力のある吹き抜けにそろえた縦ラインの外観が、外と内という境界線をなくしそのまま室内でも演出されています。出窓のように壁がはみ出たり、予想外の場所から浮遊するように吹き抜けが出現したり、夏は緑、秋は黄、冬は白と四季折々の色を映し出す仕掛けの2階廊下の銀盤天井があったり...複雑な森の中のような構成となっているそう。

天板の薄さを強調した大きなキッチンテーブルは、まるで外の中で食事をしているかのように森に面した配置に。冬にはこの窓の外に鹿が出現することもあるとか!

窓の配置や照明計画にもこだわった夜の雰囲気はたいへん美しく、キッチンダイニングスペースの一部として、そこに色づくイサムノグチの作品のように、自然と真摯に向き合った住まい。

一級建築士事務所 GLA 高野現太さん

代表・建築家

北海道の風土に似つかわしい建築の姿を模索しました。夏の緑景にも,冬の雪景の厳しい環境の中でも耐え抜く姿を想像しました。 住宅は山裾にあり、生命力に満ちた木々と呼応しながら佇んでいます。
この「森の素形」は木々を純粋な幾何に換言反復しながら建築のレイヤーとして取り込み、森と同化しつつも自立した強い輪郭を持つ構成としました。幹のように聳え立つ家具や、四季を映す銀盤の壁や天井枝葉のように浮遊する大きな板など、森の要素を建築化させながら内外が混淆する、多様な「場」が展開しております。
収納の樹木を縫うように生活し、森の中に居場所を見つけるような、自然の森と幾何の森がオーバーラップする住宅となりました。

【9位】Spectrum 光をあやとる|清瀬の家 [白崎泰弘・治代]

両親を見守ることのできる距離で“終の棲家”を建てたいと願う施主は、長年あたためてきた「プリズム」を取り入れたプランで理想の住まいを叶えました。

原寸大の模型をつくってまで勾配のついたルーバーにプリズムを仕込んで虹を映し出そうと考えたのは施主。家の中に虹をつくるという未知の世界を実現するために、覚悟をもって現場に臨んだ専門家。虹の最高の表情を映しだすために、水平のこて跡だけ残し、縦のこて跡を一切見せないという神業のような珪藻土の壁をつくった職人。三位一体の「熱量」からこの住まいが叶いました。

「10年以上温めていた様々なアイディアを、時折渋い顔をしながらも、辛抱強く図面にまとめ見事に実現してくれました。」とは、施主の談。

せわしない日常の中で、トップライトとプリズムルーバーからの光と影、そして正午の1時間あまり発生する虹の重なりは、ナゼ?ナニ?に出会った子供のころのワクワクした気持ちを思い出しそう。

シーズ・アーキスタディオ 白崎泰弘さん・白崎治代さん

建築家

基本設計は大手ゼネコン設計部の建主本人、思い切りの良いデザインになっていて、私たちはそれをどうやって木造で実現させるかという高難度の案件でした。建築家である建主は、満額回答にならないところも前向きに受け止めてくれたのですが、最後まで悩むことになったのは月見台に上がるタラップです。
スチールとコンクリートに馴れている建主のデザインは、木造では実現が難しく打ち合わせを幾度も重ねました。段板を短冊状の杉板で吊るという構法で設計をまとめましたが、工事に入ってから、段板と吊材の留め方で監督さんの意見を取り入れ、その結果、見た目はアクロバット、実際に使うと短冊に囲まれた安心感のあるタラップとなりました。

【10位】丹生川の古民家 [烏野良子]

家具工房を営む家族のための二世帯が住む、丘の上の住宅兼家具のショールーム。

持続可能な生活を体現したいという施主の強い意志から、古い建物を木や土、紙、断熱材の羊毛といった地球に還る材料と、ガラスやサッシなど工業製品で構成すること、日々工房から出る木片を熱源に利用することをプランに取り入れました。

眺望を生かすために北にも大きい窓を配置し、内側には断熱性のあるスクリーンを採用。窓まわりの気密性や内部障子の追加など寒さ対策も万全です。主のような薪ストーブが鎮座するLDKを挟んで、親世帯の座敷と子世帯のスペース、古民家の個性的な木構造を尊重しながら、補強・再生することで、展示物の家具と一体となる建物に。

古民家独特の、目で見えるものだけではない、まとう圧倒的な存在感やゆとりは、西欧建築にみられる重厚感のある「積み上げ式」とは違う、放ったりつながったりが可能な日本建築の軽やかな「組み立て式」だからこそ。

烏野建築設計室(UNO ARCHITECTS)烏野良子さん

建築家

丘上の見晴らしの良い敷地でその景色を北窓で切り取るよう計画しました。明治期から建つ建物の歪みは所々にあり、唯一無二の古民家の木構造を尊重しつつ、その補強や補正内容がデザインになることを目指しました。曲がったり、丸かったりと粗野な木軸を相手におさめていく既製品では対応できない手間を家具職人である施主も含め、施工者が根気強く取り組んで下さいました。結果として、経年変化を美しい魅力に変えられたように思います。

良い景色と美味しい食べ物、暖を囲み皆で語らう。そんな生活がこの家では形を変えながら、いつの時代も行われてきたのだと思います。

▼11位〜15位

さらに、11位〜15位までの住宅事例をご紹介します。

【11位】ペッタンコハウス2 / 広い庭と薪ストーブのある暮らし [株式会社田邉雄之建築設計事務所]

植栽家・ランドスケープデザイナーである施主が自らの庭をつくれること、この八ヶ岳の山々がそびえる雄大な景色に惹かれて移住。施主と建築家、2人の専門家の共作により住まいが完成しました。

「ペッタンコハウス」地元のカラマツ材で使用する木材全てをまかない、規格の長さから設計したため、一般的な流通無垢材1本でつくることができる『木取りを知るフォルム(つまりペッタンコ)』と呼ぶようになったことが由来なのだそう。材の無駄がないだけでなくコスト削減につながるといった、何とも時代にふさわしい仕組みです。

軒下での作業や食事ができるように外観の軒は深く、室内には大きなドーマーからの光が、階段まわりのスチールルーバーを通して1階に降りそそぎます。断熱性能を活かした薪ストーブの暖かさと建物内からの雄大な景色を日々感じられるそう。

この素晴らしいペッタンコハウスの建築的な特徴を守るための「厳かなる5原則」。事例よりぜひご確認ください。これからも、シリーズ3・4...と作品が生まれることを願います!

【12位】和色〜和モダンマンションリノベーション [モナトリエ株式会社]

「友人を招いてのホームパーティや趣味の洋裁を広々とした空間で楽しみたい。」と、デザイン性と収納力を重視したスケルトンリノベーション。

間取りは大きく変更せず、収納や来客、作業スペースなど目的を明確に反映。細かいデッドスペースや使っていない箇所をなくした高級感と安心感のある「和」を取り入れながら、既存家具に合うようなモダンな雰囲気となっています。

リビングの組子障子は施主の家紋にもある「竜胆」をモチーフとし、枠が全く見えないよう工夫した納め方で上部には強化ガラスを配置。それに負けない表情をもつ1枚物のミャンマーチークの無垢材を、贅沢に床や壁面に採用しました。

高級感がありながらもくつろげる空間となって、訪れる方に「高級旅館に来たみたい!」と言われるそう。「どこに」「どのようなものを」「どれだけ必要か」ということを何度も打ち合わせた完璧な収納計画で、整理整頓や掃除が格段に楽になったとは、本当にうらやましい。

【13位】HAUS_M|新築 [R.E.A.D.& Architects]

美術館や博物館なども多く手がげてきた専門家が、大切にしていることのひとつである「環境」の「丁寧に読み解き」を感じる職住一体の空間。

両隣に家が立ち並ぶ住宅地。桜の巨木が印象的な公園と、立派なクスノキが植えられた日本風の庭という緑の環境を住空間に設計。2つの吹抜け空間からは桜の巨木を見られるよう、家族全員が座れる造作ソファを配置したり、ダイニングまわりのどこからでも庭を見ることができるようにプラン。

プライバシーを確保しつつ、光・風・眺望を住空間に取り込む方法として、住宅の4つの出隅を切り取って45度方向に開けた窓を採用。そうすることで、全ての部屋から隣家の気配を気にすることなく眺望が開けて実際以上の広がりを感じられるようになるのだとか。

一見、モルタルの床に白の壁で無機質な印象を受けそうですが、大きな窓からの風にゆれる桜やグレーチング越しに映り込む光や影、家族の様子など、季節が何度めぐっても色鮮やかに眩しく記憶のどこかに残るような、そんな心に残る住まい。

【14位】平和の家|新築 [WORKS・WISE 大桑博彦]

敷地は市郊外の田畑が広がる場所で、まわりがゆったりとした雰囲気のある広い敷地。シャープなラインのファサードが印象的なスマートな佇まいの住まいです。

適度なプライバシーを保つために、ルーバーや白い壁面のような囲いで目線を遮り、LDKとつながるオープンな外スペースを確保しました。

ウィスキー好きな夫が家飲みを楽しむことができるように、中庭とつながるリビングのタイル貼りの壁と窓部分に、その時間を貪欲に楽しむための本気度を感じるバーカウンターを。中庭テラスやデッキスペース、キッチンからも楽しめるバスコートをもうけて連続性のある続き間のようにプランに。

シンボリックな雰囲気が目を惹きますが、室内から、玄関ドアやタイルに、ぼんやりと明かりが灯りはじめる夕方にかけての時間帯が特に美しい。

【15位】朝霞の家 / ずれとつらなり|新築 [アソトシヒロデザインオフィス/阿蘓俊博]

街なみに対してずれた平行四辺形の平面をそのまま立ち上げた家。これまで長く集合住宅生活をしてきたこともあり「静かに安心してくつろげる」「庭があって開放的に暮らしたい」との思いを専門家に託した施主。

住宅密集地でありながらも、リビングダイニングは大開口と吹き抜けで構成。庭に屋根と同じ高さの外壁をもうけて、その外壁には室内にならうように同じアーチ形状の開口をデザイン。内と外にアーチが連なることで庭が室内のように、リビングダイニングが庭のように感じられる効果が。

天井にも外と合わせるようにトップライトを採用。アプローチから続くモルタル仕上げの玄関から、室内廊下を通じて真っ直ぐの先に見える庭の景色にときめきます。室内と外との狭間は、まるで光と風が行き交うヨーロッパ建築の回廊のよう。

「いい家・オブ・ザ・イヤー2022」を振り返って

今年のランキングで印象的だったのは「光」。1日の中で繰り広げられる自然光の移ろいが、住まいという場所を隔ててさまざまな形に変化していく様子が見られました。
また、外とのつながりや半野外の空間を取り入れた住宅事例も引き続き人気となっています。
住まいを小さな空間として捉えるのではなく、季節や光、風という自然の移ろいに住まいが足並みをそろえるような感覚。これが住まいの豊かさには大切なことだと感じます。

SUVACOには、こうした素晴らしい住宅事例がたくさんそろっています。
コンセプトやデザイン、エリア、面積など、さまざまな「こだわり条件」からも検索できますので、ぜひ自分らしい家づくりの参考にご覧ください。

SUVACOは、自分らしい家づくり・リノベーションをしたいユーザーとそれを叶えるプロ(専門家)とが出会うプラットフォームです。

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