2017/03/31更新1like7370view

著者:YUICHI ISHINO

「D(団地)‐1グランプリ」があったらチャンピオン!? ロンドンで見つけた驚きの集合住宅

この記事を書いた人

YUICHI ISHINOさん

ロンドンに暮らす編集者/Webプロデューサー。各媒体を通して現地の旬の情報を発信しています。

街を歩いているとときどき「オッ」と驚くモノや人に出くわすことがある。今回紹介する建物もそのひとつ。いわゆるロンドンの住宅地といえば赤茶色のレンガ模様の建物を思い浮かべることが多いが、そんな先入観を見事うちやぶってくれたのが「アレクサンドラ・ロード・エステート」と呼ばれる市内の公営住宅だ。

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▽ 目次 (クリックでスクロールします)

ロンドンの有名な建築といえば

ロンドンには魅力的な建築がたくさんあります。現代建築のシャードやガーキン、昔の建築ではバッキンガム宮殿やセントポール寺院などなど。発電所をリノベーションして作られた美術館、テート・モダンも有名ですね。しかし、そんな有名建築以外にも、けっこう印象的な建物がロンドンには点在しています。ふらふらと散歩していると、ひょんなことから意外なものに出会うことも…
遠くに見える尖ったガラス張りの建物がシャード、その隣がセントポール寺院

遠くに見える尖ったガラス張りの建物がシャード、その隣がセントポール寺院

アレクサンドラ・ロード・エステートとは

といったわけで、今回は第一回ロンドン建築ツアーと題し、「アレクサンドラ・ロード・エステート」という集合住宅を取り上げたいと思います(はたして第二回があるかはわかりませんw)。
あのビートルズで有名なアビーロードの近くにある「アレクサンドラ・ロード・エステート」

あのビートルズで有名なアビーロードの近くにある「アレクサンドラ・ロード・エステート」

いきなり「それどこ?」「聞いたことないよ!」という方も多いと思いますが、個人的に隠れた名建築なのではないかと勝手に思っています。

ぼくはビートルズで有名なアビーロードに立ち寄った後、散歩の途中にこの建物を見つけて感動しました。

「え、こんな建物がロンドンの住宅地にあったの?」。

というのも、ロンドンの住宅地といえばどこもレンガ模様の古い建物が並ぶイメージがあったからです。そんな先入観を見事に打ち砕いたのがこの場所。言葉では説明しきれないので、もう先に写真を見せてしまいます(笑)。

これです。

ジャン!
この壮大なる景色を見よ!

この壮大なる景色を見よ!

この建物が延々、数百メートルにわたって続きます。

さらに、ジャン!
ここは工場でも、商業施設でもありません。500以上の世帯が住む低層(4階建て)の集合住宅です。

あらためて上の写真をご覧ください。緩やかなカーブを描く一本の通路。その両側を挟むような形で、向かい合わせに建ち並びます。むき出しのコンクリートが規則正しくずらり連なる姿は遠めに見て圧巻ではありますが、なんというか実際にこの場に立つと包み込まれるような一体感もある。これには通路の絶妙なカーブが柔らかい印象づくりに寄与しているのではと思います。そして、ところどころ見えるテラスの緑。ガーデニングが好きなイギリス人ではありますが、そこここに垣間見えるこの小さな緑が打ちっぱなしのコンクリートのアクセントになって心地いい生活感を醸し出しています(ちょっとSFっぽい雰囲気はありますが)。

この上手な緑の活用法、日本の都会の住宅同様に狭い空間を見事に生かしているという意味では、学ぶことも少なくありません。

ガーデニングを近くでみるとこんな感じ。
上手に緑が植えてあります

上手に緑が植えてあります

はい、ネコちゃんも元気に遊んでいます。日本の集団住宅でもよく見かける光景かもしれません。
ネコにとっても遊び場が多そう

ネコにとっても遊び場が多そう

指定建造物としてもリスト入り

この住宅群ができあがったのは1978年。当初はほかの公団住宅と比べて高コストだったことや完成に時間がかかったことなどから、批判も少なからずあったようですが、今では高い評価を得ています。なんでも戦後に建てられた建物で初めて指定建造物のリストに入ったのだとか(listed building)。ちなみに建築家はニーヴ・ブラウンというイギリス人で、これ以外にもロンドン市内の公団住宅やオランダのアパートメントを設計している人物。けっこうなお年ですが、ファインアートの世界でも活躍しているようです。
建物の裏手

建物の裏手

全体的に近未来っぽい意匠…

全体的に近未来っぽい意匠…

デザインが生むコミュニケーション

さて、この場所を訪れたとき、とても感心したことがありました。

それは、それは建築デザインが作り上げるコミュニケーションの妙です。偶然かもしれないですが、ちょうど家を出ようとしていた人が、表に出て日光浴をしていた向かいの人とあいさつをして通路で会話を始めたんですね。これは、真ん中の道を挟んで玄関同士が向かい合う設計になっていたからこそ生まれた光景だと思います。見ていて非常にほほえましい瞬間でした。

さらに、この通路が「一本しかない」ことも近隣との交流に一役買っているのでは、と想像します。毎日同じ道を通っていれば顔見知りになり、いつの間にか挨拶をしあう間柄にもなるでしょう。日本でも都会では以前に比べご近所付き合いが減ってきているかと思いますが、ぼく自身、ロンドンでもそれは同じだと感じています。それだけに、この集合住宅で機能しているデザインの役割に思わずうなった次第です。
敷地内には公園も

敷地内には公園も

「アレクサンドラ・ロード・エステート」の夜の顔

最後に、夜になると「アレクサンドラ・ロード・エステート」はえもいわれぬ雰囲気に。街灯の淡い光が打ちっぱなしのコンクリートに映えて、建物全体をさらに幻想的な景色に変えます。一見の価値あり!まさに隠れた名建築と言えるのではないでしょうか。
うっとりキレイ

うっとりキレイ

まるで絵画のよう

まるで絵画のよう

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