2022/05/24更新3like5037view

著者:熊井博子

“決められない症候群”に陥ってない?「決める」ことに苦しまないための4箇条

この記事を書いた人

熊井博子さん

ビルダー・建築設計事務所に営業/広報として勤務した後、住宅専門誌の編集を経て、住宅関連の執筆と一般の方の家づくりサポート等に従事。インテリアコーディネーター、照明コンサルタント。

家づくりがスタートすると、どこにつくる?誰とつくる?といった大きなことから、高さは?長さは?といった細かなことまで決めることは山のよう。中には、“決められない症候群”とでもいうべき事態に陥り苦しむ人も。わかって臨めば回避できることでもありますので、しっかり心得て対策しましょう!

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

けっこう深刻。“決められない症候群”

「家づくりは、決断の連続」。
家づくりが始まると、大きなことから細かなことまで実にたくさんのことを「決断」することになります。もはや「家をつくることは、決めること」と言って過言でないほどですが、この決断がなかなかできずに立ち往生するケースも少なくありません。

決まらない・決められないと焦ったり、イライラするのが長引けば、次第にネガティブな感情に覆い尽くされ家づくりが辛くなる人も出てきます。それは「決めるのが苦手」という性格由来の場合もありますが、家づくりが嫌になるほど苦しむ場合は原因が他にあることがほとんどです。

何を意識しどう捉えて臨めばよいのかわかっていれば、そうした事態に陥るのを防ぐことができるはず。実際にあった事例を見ながら考えてみましょう。

事例1「土地が決まらない」

土地を探していたあるご夫婦。探し始めて1年以上、「このあたりの物件は見尽くして知らない情報はない」と言います。これまで散々見てきたせいか「いい土地がない」が口癖で、これはと思う物件について聞いても「広さが」「形が」とすぐにダメだしが返ってきます。一見すると土地を買いたい人というより評論家のようでどこか投げやり。一向に決まる気配はありません。

一方で、ご夫婦が「ダメ」と言った土地でも次々買い手はついていきます。確かにウィークポイントはありますが、買う人はそれもわかった上で「ここで暮らそう」と決断しています。
完璧な土地がないことなどご夫婦もわかっているのだとすれば、ご夫婦の言う「いい土地がない」は「決める気がない」の裏返しかもしれません。どこか投げやりなようすを見れば、何かと理由をつけて決断を先延ばしにしているようにも見えてきます。

実際、決まらないことに慣れすぎると、決めよう・決めたいという気持ちは薄らいでいきます。惰性で物件探しを続けても、「決めて前に進みたい!」という熱がなければいい土地に出会っても決まることはありません。土地探しが長引く人に多いモチベーション切れ。気持ちの疲れ。これは“決まらない”に直結し、やがて“辛い”を招きます。ここは無理せず一旦土地探しから離れた方が賢明です。

事例2「プランが決まらない1」

長い間、あれこれイメージしながら家づくりのタイミングを待っていたご家族。状況が整うと、すぐに家づくりがスタートしました。
ところが計画が始まってもちっとも進まず、ご家族の話は二転三転。「本当は」と言っては話をくつがえし、「ああしたら」「こうしたら」とプランをいじるばかりの打ち合わせが続きます。最後は迫る着工期日にあおられどうにか決着しましたが、話を積み上げたどり着いたというより時間切れゆえの強制落着。工事タイミングが違えば、違うプランだったかもしれないし、着工の予定がなければまだ決まっていなかったかもしれません。

これはつくり手側の提案力不足・リード力不足も否めませんが、ご家族に「今は計画段階にある」という意識が欠落していたのも事実。今までの延長のように見える“家の話”も、計画が始まれば夢見るためのものではなく現実につくるため・答えを出すためのものに変わります。当然取捨選択が求められるし、発言一つひとつの重みだって違ってきます。今いる段階を自覚して切り替えなければ、家族もつくり手も全員が疲弊(ひへい)し、家づくりが破綻することだってあるのです。

事例3「プランが決まらない2」

家づくりへの思いが強い若いご夫婦。ご主人が見つけた依頼先とプランニングを進めるものの、乗り気なご主人に対して奥さまは何度提案されても首を縦に振りません。ご主人は強引に話を進めようとしますが、奥さまは「わかってくれない」と泣き出す始末。家の話どころではありません。

このまま打ち合わせを重ねても決まるわけがないのはお気づきの通りです。ここではご主人が奥さまとしっかり向き合い話し合うことで解決しましたが、家づくりが原因で夫婦の関係に亀裂が入るというのはよくある話。場合によっては夫婦関係の破綻に至るケースだってあるのです。

「決める」が負担にならないための心得4箇条

ここまでちょっと痛々しい事例を見てきましたが、これらは何も特別な例ではなくて実によくある話。誰でも似た状況に陥りかねません。そこで、肝に命じておきたいことが4つ。

『短期集中!モチベーションは続かない』

家づくりには想像以上のエネルギーが必要です。人の集中力はそう長く続くものではないし、モチベーションをキープするにも限度があります。となると、短期集中・メリハリは必須です。動くと決めたら一気に動。集中する。気持ちがついていかなければ割り切って一旦離れる。土地探しでもプランニングでも仕様決めでも、ダラダラやって良い結果に結びつくことはまずありません。

『ステップを意識する』

家づくりは、ざっくりいえば、土地決め→プラン検討→見積り→プラン決定→詳細決め→施工と段階を踏んで進んでいきます。段階ごとに、やること・施主に求められることも変わりますから、今いる位置を把握することは重要です。

ステップを意識して一つひとつ階段を登るイメージで家づくりを捉えると、自分の居場所がはっきりして前に進む原動力になります。大事なのは、はじめにどんなステップでゴール(完成)にたどり着くのか全体像を把握すること。道筋が見えなければ、つくり手に説明を求めるべきです。暗中模索で進んでいくより着実にゴールに向かっているのが実感できるし、「決断して一歩進む」ことは達成感にも繋がります。

『小さな問題を放置しない』

一見、大したことがないようにみえる問題も、家づくりにおいては後々大きな問題に発展することが少なくありません。ちょっとでも引っかかることがあったらスルーしないで対処すること・家族と意見の相違があったら逃げずに向き合って折り合いをつけること。甘く見て放置すれば、あとでしっぺ返しがあるかもしれません。

『提案力のあるプロをパートナーに選ぶ』

家づくりのパートナーが提案力に優れていると、施主の「決める」負荷は大きく軽減されます。プロの深い考察のもと導き出された“答え”が示されれば施主はそこに乗っかればいいわけで、端から端まで自分で考え、決める必要はないのです。それには自分の思考や好みと合うプロであることが大前提。まずは自分の考えをはっきりさせ、思考や好みの重なるプロを探して“任せる・乗っかる”が叶う関係を築くことが大事です。
家をつくることは、決めること。
家づくりは、家だけでなくどこに住む・誰と住む・どう暮らす・何を大事にする、などその後の人生を決定づけるようなモノゴトの答えを出す側面も持っていますから、大事なことの答えを丁寧に導き出せるよう、心にゆとりを持って臨めるようにしたいですね。
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