2020/09/10更新1like6542view

著者:原 ふりあ

キッチンは道具か家具か?ダイニングとつなげるか?|キッチンのあり方を再考してみる

この記事を書いた人

原 ふりあさん

アトリエ系設計事務所に所属して住宅や大規模建築の設計を行うかたわら、自ら設計や執筆活動も行っています。一級建築士。

住宅の新築やリノベーションにおいて、キッチンは核とも言える重要な要素です。キッチンをどう配置し、どう仕上げたいか?今回は二つの切り口でキッチンのあり方を整理し、漠然としたイメージを具体的なプランに反映させやすくします。

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オープンなキッチンが主流。でもよく見てみると…

かつては、キッチンが完全に個室となっていて、ダイニングまでわざわざ料理を運んでいく──という間取りが存在しました。面積に余裕がある格調高い住宅の場合に多かったでしょう。

しかし最近では、たとえ面積に余裕があったとしても、完全個室のキッチンはほとんど目にしません。ダイニングと連続していると動線がスムーズですし、何よりも「料理する姿を隠したい・隠すべきもの」という意識が薄れているためだと思います。

では、オープンなキッチンにはどういった種類があるでしょうか。

最も一般的なのは形による分類です。「アイランド」「ペニンシュラ」「L型」「I型」のような分け方は、システムキッチンのカタログにも掲載されているわかりやすい分類ですが、あくまで形の話です。キッチンをどう考えるか、という思想にまでは辿り着けません。

今回は、少し違う切り口でキッチンを考えてみます。
「キッチンを道具として考えるか、家具として考えるか」
「ダイニングとつなげるか、切り離すか」
この二つの指標を組み合わせます。
百聞は一見に如かず。具体的に四つの事例で解説してみましょう。

1.道具感を大切にした、見せるキッチン|道具×つなげる

料理が好きな方は、キッチンの「道具感」にこだわることが多いでしょう。鍋やツール類の素材・色・ブランドなどを選ぶのは楽しいですよね。せっかくこだわったのだから、見せるキッチンにしたい……というイメージも生まれます。

そのような場合、キッチン自体も一つの道具として考えてみるのがよいでしょう。例えば、天板にステンレスを使う/コンロは五徳が丈夫で大きいものを選ぶ/レンジフードやオーブンの性能にこだわる/ツールが並べやすくてちょうどいい大きさのバーやラックを取り付ける──というように。

こだわって見せたいキッチンだから、ダイニングスペースはむしろキッチンに取り込むような感覚で、思い切ってつなげてしまうというのが一つの選択肢。写真はその一例です。

この組み合わせの場合、こだわりの道具が部屋の背景になるという空間的面白さがあります。一方で、キッチンがオープンかつ要素(凹凸)が多いので、住まい手には、料理と同じくらい掃除をまめにして清潔さを保てるタイプであることが求められます。
食器棚はあえて造作にせず、同じく見せることにこだわったアンティークの家具を置くことで、自分の好きなスタイルを表現しています。

2.料理に集中できる独立性とつながり感のバランス|道具×切り離す

料理しやすさを重視していても、そこまでキッチンを見せたいわけではない──という方も多いでしょう。その場合は、先ほどの事例と同じく「道具」としてキッチンをつくり込みながらも、ある程度は隠してしまうと使いやすくなります。
この事例のように、空間はリビング・ダイニングと一体にしながらも、手元に立ち上がりを設けてキッチンを区切りながら隠す──というのが最もシンプルで効果的な方法です。

完全に閉じてはいないので、料理をしながら会話ができますし、食器を運んだり下げたりという行き来のしやすさは損なわれません。また、ツール類の多くは収納にしまって隠すことにより、スッキリした印象を保つことができ、隅々までキレイにしなければ!と頑張らなくてもよいという利点があります。

3.ダイニングの延長線上にあるキッチン|家具×つなげる

続いて、道具ではなく「家具」としてキッチンを考えるパターンを見てみます。

キッチンを家具として考えるとはどういうことか?それは、料理する場所というキッチンの意味合いを前面に出すのではなく、リビング・ダイニングに馴染むようにキッチンらしさを少し薄めるということです。

上の写真の事例では、ダイニングテーブルと同じ天板にシンクと水栓が組み込まれています。ぱっと見の印象は、ダイニングテーブル>キッチンではないでしょうか。
その背面、壁際にはコンロや道具類が並んでいますが、キッチンらしさを表現するというよりはむしろ、素材感含めてさりげなく部屋に馴染ませている印象です。オープンなキッチンでありながらも、1の事例とは印象が違います。

このタイプのキッチンが適している人は、あまり本格的な料理をしない人や、パーティーで大人数がキッチンを囲むというシチュエーションを重視したい人、そして、料理/片付けの時間を食事の時間と明確に分けられる人です。料理や片付けの最中には食器・食材がたくさん並ぶと思いますが、食事との間に時間的な余裕があれば問題ないでしょう。

また、1の事例と同様に掃除がしっかりできる人に向いています。

4.ホテルライクな壁面家具として見せる|家具×切り離す

最後に、これはやや珍しい事例ですが、一つのスタイルとして面白いと思ったのでご紹介します。キッチンを完全に家具として考え、なおかつダイニングと切り離しているパターンです。

形態としてはよくあるI型の壁面キッチンですが、かなりこざっぱりとフラットにつくっています。一見するとただのカウンター家具にも見えますが、シンクやコンロ、レンジフード、食洗機が備え付けられています。そのまま洗濯機につながっている様子から最先端の滞在型ホテルらしさも感じられる、あまり生活感のないキッチンです。

今の時代は、購入したものを家で食べる「内食」やUber Eatsに代表されるデリバリーなど、生活スタイルに合わせた様々な食事のとり方があります。必ずしもしっかり料理する必要はないとも言えます。とはいえ、キッチンをなくすわけにもいきませんよね。

だとしたら、使い勝手よりもスタイリッシュさを重視してキッチンをつくるというのも、一つの答えでしょう。
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以上、道具か家具か?ダイニングとつなげるか切り離すか?という視点の組み合わせでキッチンを考えてみました。形態や素材の選択も大切ですが、それらを選ぶ根本的な理由を考察してみると、家に対する理解をより深めることができます。
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原 ふりあさん

アトリエ系設計事務所に所属して住宅や大規模建築の設計を行うかたわら、自ら設計や執筆活動も行っています。一級建築士。

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