2023/07/19更新1like1032view

著者:tennto1010

中古物件のインスペクションとは?中古物件を購入時の不安・疑問を解消しよう

リフォームやリノベーションを視野に入れて中古物件を探す際、物件購入の判断を左右する鍵となるのが建物自体のコンディションの把握です。そこで頼りになる手段がインスペクション(建物の現況調査)ですが、仕組みや検査内容、検査後の評価など、買い手の立場からは分かりにくい面が多く、はじめの一歩を妨げる要因にもなりかねません。

そこでこの記事では、基礎的なインスペクションの流れや、ケース別の具体的な活用方法について、SUVACOアドバイザーである会田のワンポイントと合わせて解説していきます。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

▼監修人

会田(あいた)

会田(あいた)

代表・SUVACOアドバイザー

リフォーム・リノベーションの現場で10年以上の実務経験後、リノベーション向き中古物件探しの不動産エージェントとしても活動。2021年に代表取締役へ就任。「住まいに価値を 暮らしに心の豊かさを」ビジョンに、住宅業界を顧客視点でより良くするためにお客さまへのサポート対応も行っています。

Q. 建物の「インスペクション」とは何ですか?

インスペクションとは、「検査」「調査」「視察」などの意味をもち、建物の施工や劣化の現況調査全般を指す言葉です。
・新築完了時や入居後のメンテナンス
・中古物件の売買時
・リフォーム・リノベーション実施時 
など、戸建て・マンション問わず建物のコンディションの把握が必要なタイミングで行われます。

今回はこのうち、中古物件の売買時とリフォーム・リノベーション実施時のインスペクションについて扱います。

Q. 中古物件購入時のインスペクションにはどのようなものがありますか?

はじめに候補にあがる最もベーシックな建物調査が「既存住宅状況調査」です。これは、宅建業者によるあっせん説明が義務づけられている調査で、中古物件市場の健全な環境整備を目指す国の政策の一環として、改正宅地建物取引業法(※1)で定められています。

調査は、国土交通省の定める「既存住宅状況調査技術者講習」を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が「既存住宅状況調査方法基準」に基づいて行います。

※1 改正宅地建物取引業法(2018年4月施行)で定められた、既存住宅状況調査に関する主なポイントは次のとおり
宅建業者の説明義務により、インスペクションの存在が周知され、一定基準のスクリーニングを受ける仕組みが整えられたことで、品質や劣化度合いに不安がある中古住宅であっても、建物の質を見極めたうえでの購入判断ができることは、買主にとって大きな安心材料です。

一方、売手にとっても、物件引渡し後の建物の瑕疵をめぐるトラブル防止に役立つなど、双方にとってのメリットがあり、物件売買時のセーフティネットになっています。
会田(あいた)

会田(あいた)

「住んでいて問題ないから大丈夫」などと、売主の主観で建物の劣化状況が判断されることも多かった中古物件の売買の現場で、客観的な指標ができたことは、大きな進展と捉えてよいと思います。

Q. 物件購入前の調査は可能ですか?

可能です。売り手側でインスペクションを行なっていない物件の購入を検討する場合には、買い手側で実施を依頼することが望ましいです。ただ、調査の実施そのものが義務づけられているわけではないので、買い手が調査を希望した場合でも、売り手の承諾がないと調査を実施することができないなど障壁もあります。

また、マンションなどの共同住宅での調査を実施する場合は、共用部分も調査の対象となるため、あらかじめ管理組合の了承を得る必要があります。

会田(あいた)

会田(あいた)

仲介業者が調査に消極的というケースも残念ながらまだ多くあります。長い間の慣習からか、調査の必要性を理解してもらえないなど、完全な制度の浸透にはしばらく時間がかかるかもしれません。とはいえ、必要な調査ですので、意向を伝えることは大切ですし、消費者の意識が高まることが、業界の体質改革にもつながるのではないでしょうか。

Q. 具体的にはどのような調査を行うのですか?

既存住宅状況調査では、基礎や外壁など「建物の構造耐力上主要な部分」と、屋根や外壁など「雨水の浸入を防止する部分」に生じているひび割れや欠損、雨漏りなどの著しい劣化事象の有無を調査します。

基本的には、非破壊と目視による検査で、所要時間は3時間程度、費用は5万円〜程度(オプションや面積に応じて)となります。

調査報告書の書式から、調査項目や報告内容のおおよその全体像が見えてきます。規定の項目に劣化の有無がチェックされ、劣化箇所にはコメントが加わります。
SUVACO作成

SUVACO作成

調査は、建物の現状の劣化把握を目的としているため、瑕疵(不具合)の有無を判定するものではない、言いかえると、建物に合否の判定をつけるものではありません。また、時間経過による劣化がないことを保証するものでもありません。

Q. 目視調査だけでは、購入後に瑕疵が見つかりそうで不安です。

調査の結果、劣化状況がみられない(問題がある場合には必要な補修を行う)、耐震基準を満たしているなど所定の要件をクリアできれば、既存住宅売買瑕疵保険(※2)への加入が可能になります(※3)。これは、既存住宅状況調査の基準を、既存住宅売買瑕疵保険の現場検査の基準と同等のものとして定めているためです。

※2
既存住宅売買瑕疵保険とは、既存住宅を売買する際に加入することができる保険で、建物の引き渡し後に、保険対象部分(住宅の構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分)について瑕疵が発見された際、修補費用等が一定期間保証される仕組みです。

※3
保険の加入には、住宅瑕疵担保責任保険法人の登録を受けた検査事業者が建物状況調査を実施していることが条件になるため、建物状況調査を実施する際に、調査実施者として住宅瑕疵担保責任保険法人の登録を受けた検査事業者の検査人を指名することで、二重に検査をおこなう必要がなくなります。

Q. 既存住宅状況調査と住宅診断など他のサービスとの違いがよく分かりません。

既存住宅状況調査は最も基本的な検査つまり、最低限クリアすべきラインを示していますが、これ以上は不要である、と追加の調査が制限されているわけではありません。

そこで、インスペクション専門の民間会社などが、既存住宅状況調査の項目を包括したうえで、床下などの詳細調査や調査後の修繕アドバイスを提供するなど、オプション的に調査の範囲を広げたインスペクションサービスを行なっています。

これらは、既存住宅状況調査とは区別し、住宅診断やホームインスペクションと呼ばれることが多いです。

Q.耐震診断や性能向上診断もインスペクションですか?

インスペクションは、以下のようなイメージで段階が進んでいきます。劣化の現状把握を目的とする既存住宅状況調査(それを含むホームインスペクション)を一次的なインスペクションとすると、修繕を前提に不具合箇所を特定する耐震診断などが二次的なインスペクション。さらに省エネやバリアフリー化などを見据えた性能向上インスペクションへと、より広く詳細に調査内容が深まっていきます。

Q.購入希望の物件に、どこまでのインスペクションが必要なのか分かりません。

建物に応じたインスペクションの判断基準となるのが建築時期ですが、2000年を一つの目安に考えると整理がしやすいです。

住宅の品質保証条件の一つとして、新築時に完了検査を受け「検査済証」が交付されていることが挙げられます。この完了検査は、1999年以降より民間検査機関の活用による検査実施の厳格化が進み、以後、自治体での取り締まり強化、金融機関では検査済証取得を住宅ローン利用の条件とするなどの政策を経て、検査率が向上しています。

さらに、2000年4月施行のいわゆる『品確法』では、住宅の性能を客観的に評価する共通ルールがつくられます。このように、質の良い住宅ストックの形成に向けた政策が以後本格化します。

こうしたことから、完了検査を受けた2000年以降の住宅であれば、一定の品質が担保されているものをみなし、既存住宅状況調査などの一次インスペクションのみで概ね問題ないでしょう。

会田(あいた)

会田(あいた)

新築時にきちんと建てられていても、メンテナンス次第で経年劣化の状況には違いがあります。したがって、2000年以降の建物でも、やはり一次インスペクションは必要でしょう。躯体の劣化状況や、必要に応じて設備周りのチェックなどを行うことで、将来的なメンテナンスの目処もつき、“安心”を買うことができますね。
一方、2000年以前では住宅の品質評価に一定の基準がなく、完了時の検査が行われていない(検査済証がない)住宅も多く見受けられるため、品質の判断には慎重な調査が必要です。
会田(あいた)

会田(あいた)

躯体の劣化とともに、下地の傷みや傾き、不陸など、大規模な修繕が必要になることも予想されます。一次インスペクションで躯体の劣化状況を把握したうえで、物件購入後により踏みこんだ調査を行い、不具合箇所の原因特定へと段階を進めることをおすすめします。

そして、一次インスペクションで見つかった劣化にどのように対処し、安全性や住み心地の要望をどこまで叶えていけるのか、2〜3社から見積もりをとって修繕計画や提案を比較し、総合的に判断することが理想です。

Q.リノベーション前提なので、物件購入後に詳細な調査をまとめて行ったほうが効率的では?

会田(あいた)

会田(あいた)

一次を飛び越えてリノベーション前提のインスペクションを依頼することはあまりおすすめできません。リノベーションを念頭においた調査だけでは、どうしても要望を叶えられるか否かという観点での調査に意識が偏りがちだからです。

一方、購入前の一次的インスペクションで躯体全体の劣化状況を把握し、購入後リノベ時に二次以降のインスペクションへと段階をふむことで、「必ず行うべき補修等工事」と「要望を叶えるための工事」とのバランスを考えた計画がたち、満足度の高いリノベーションが実現しやすいのです。
中古物件+リノベーションを選ぶ人が増えるなか、中古物件購入時のインスペクションは、ますます必要性が認識されることでしょう。自身の状況に応じた最適なインスペクションを行うことで、理想のリフォームやリノベーションを叶えたいですね。

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