2017/03/08更新0like47011view

著者:水沼 均

濡れ縁(ぬれえん)とは?住まいの内と外を豊かにつなぐ魅力に迫る

この記事を書いた人

水沼 均さん

建築設計の学校で長年教師を務め、大勢の生徒さんと接してまいりました。年齢、経歴、そして住まいへの思いも大変多様で、他では得られない貴重な経験ができました。その経験を生かして、豊かな住まいづくりに役立つような記事をたくさん書いていきたいと思います。

日本の住まいではなじみ深くてどこか懐かしい濡れ縁。昔の家ではポピュラーでしたが、だんだん見かけなくなってきました。でも実は、濡れ縁は現代の住宅にもとてもマッチする存在なのです。一言で言うとその魅力は「つなげること」と言って良いかもしれません。

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▽ 目次 (クリックでスクロールします)

濡れ縁とはなに?縁側やウッドデッキとは違うの?

濡れ縁とは、家の外壁から張り出した外部の床のことです。室内とはテラス戸でつなげられることが大半で、裸足のまま室内から濡れ縁に出て外を楽しむことができます。

一方縁側というと、室内にあってテラス戸に面した廊下状の場所を指します。縁側と濡れ縁がテラス戸を介して並んでいる作りもとてもポピュラーです。

また濡れ縁とウッドデッキは、ほぼ同じ役割のものと考えて良いと思います。名前のとおり、濡れ縁といえば和風の伝統的なデザインを指すでしょうし、ウッドデッキならモダンで洋風なデザインを指すと言えます。

ただ木材の選び方や板の張り方、そして縁の下の作り方など、具体的な作り方は和風の濡れ縁と洋風のウッドデッキではだいぶ異なってくると言えるでしょう。

濡れ縁の魅力とは

下の写真は、美しい庭に面して濡れ縁を設けた例です。小さなお子さんとお父さんが庭で楽しそうに遊んでいます。濡れ縁があることで内と外とのつながりがいっそう緊密なものになって、庭がとても近く感じられますね。濡れ縁の魅力をもっともよく表した写真だと思います。
道家秀男「知多の家」

濡れ縁の魅力の原点は日本人の上下足分離

部屋と庭との間に濡れ縁があると、当然ながら部屋と庭とはその分離れます。しかし、濡れ縁があったほうが結びつきは強まる感じがしますよね。なぜなのでしょうか。

もし濡れ縁がなかったとしたら、部屋のテラス戸を開けるとすぐ真下に庭があることになります。庭までの段差はだいたい60センチくらいあります。庭に出ようとすると、テラス戸を開けていきなり、この60センチの段差を一気に「よいしょ」と降りることになります。また、もし頭上に軒や庇がなかったら、サンダルも雨露で濡れてしまっているかもしれません。これではなかなか「ちょっと庭に出よう」という気持ちにはなりづらいですよね。

その点濡れ縁が間に入っていますと、下足に履き替えなくても、テラス戸を開けてそのまま裸足で濡れ縁に出ることができます。また頭上が保護されていれば濡れ縁の床は濡れておらず、足も濡れなくて済みます。結果、庭はますます室内から身近な存在になってくれるのです。

濡れ縁の魅力の最大の原点は、もしかしたら日本人が現在でも上下足を使い分けていることにあるのかもしれませんね。

内〜半内〜半外〜外のすてきなグラデュエーション

下の写真は和室と庭との間に縁側と濡れ縁が設けてある例です。このように建具を開け放っていますと、庭に近づくにしたがって、まるでグラデュエーションのように外部の雰囲気が強くなっていきます。
網田一久「暖炉のある家」
和室部分は完全な内部、そして縁側はやや開放的な半内部、さらに濡れ縁は、外ですが床があって天井もある、内部のような半外部。こうしてゆっくりと庭に向かって世界が連なって行きます。昔からの日本建築でもっとも美しい場面の一つですよね。

では現代の密集地住宅でも、濡れ縁は活用できるのでしょうか。濡れ縁は、庭の広さやプライバシーが保ちづらいときにこそ、むしろより生き生きと内と外をつなげてくれる存在なのではないでしょうか。

庭は決して広い必要はありません。現に京都などにある数多くの有名な枯山水庭園は、広い敷地の隅に意図的に小さな場所を作り出して、そこを庭園にしています。極端に言えば、小さな庭の時にこそ、内と外のグラデュエーションはより生きてくるのだとも言えるでしょう。

濡れ縁を庭に張り出して設ける

濡れ縁はまっすぐ設けるばかりでなく、折れ曲がって設けると、また一段と庭との親近感が強まってくれます。下の写真は庭に向かって張り出すように濡れ縁を回した例です。濡れ縁スペースがすっかり庭と一体化して、さらに濡れ縁を巡り歩いて庭をさまざまな角度から眺められる楽しさも出ています。
道家秀男「知多の家」

濡れ縁で庭を囲む

また下の写真は上の例と逆に、庭を囲むようにして濡れ縁を回しています。こうすることで、庭は周囲の地面から切り取られ囲われた、中庭のような親しみやすい場所になっています。

思うに、観賞用の庭では濡れ縁を張り出して設け、活動用の庭では濡れ縁で囲んで設けるのが似合うような気がします。みなさんはいかが思われますか?
濡れ縁は、密集や騒音によって外と絶縁されがちな現代住宅に、外との復縁の手がかりを与えてくれる存在なのかもしれません。しかしその手がかりとは、室内と庭とを遠ざけることであったり、上下足分離であったり、庭の小ささであったり、意外にも「復縁」とは一見正反対の事柄ばかりなのです。

古来からの住まいのしつらえというものが、私たちの心理にいかに深く根付いているかを改めて発見したような、そんな気持ちになりますね!

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