2013/12/09更新0like2050view

著者:安河内 健司/西岡 久実

専門家による記事:端材の有効活用 〜端材の個性を活かしたプロダクトの制作〜 | 安河内 健司・西岡 久実(建築家)

Hashi-co【はしっこ】
from ナガヤネ
端材の有効活用 〜端材の個性を活かしたプロダクトの制作〜

大きさや表情がそれぞれ異なる個性ある生活雑貨たち

大きさや表情がそれぞれ異なる個性ある生活雑貨たち

私たちが携わる建築という行為は、森林伐採など環境保護の観点からすると、ある意味、負の行為とも言えるかもしれません。そんなことを念頭に、日頃より、建物の寿命を出来る限り延ばす設計、廃材の量を極力抑える設計を心がけています。しかしながら、設計時にメーカーより取り寄せる製品サンプルや施工時にどうしても発生してしまう余剰材など、多少の端材は必ず発生してしまいます。

そこで、「ナガヤネ」というタイトルの平屋の住宅の計画において、実際に発生したタイルや有孔ブロック、木材などの端材を活用し、最低限の加工を施すことで、プロダクトへとカタチを変える、端材の二次利用を目的とした試みを行いました。ここでは、床材の活用例について紹介します。
使用した端材は、最終的に採用した150ミリ幅のオーク材のフローリングと最後まで採用を迷った同材の200ミリ幅の2種類。
これらに最低限の加工を施すことで、トレーやカッティングボード、鍋敷きやコースターなどを制作しました。
実(さね)、節(ふし)、傷などを敢えて残すことで材の個性を活かす

実(さね)、節(ふし)、傷などを敢えて残すことで材の個性を活かす

加工やデザイン面においては、新たな端材を発生させないことを目的に、基本的に切断は行わず、孔あけや面取りなどの簡単な加工に限定することで、端材の元々の寸法や各端材の持つ個性(節や傷など)を尊重し、敢えてそれらを残すようにしています。
また、プロダクトへと生まれ変わった後でも、かつてフローリング材であったという材料としての記憶や履歴を留める意味で、フローリング材特有の実(さね:隣り合う板をしっかりと組む為に長手の両サイドに施してある凸凹の加工部分)は敢えて落とさないデザインとしています。

金属の取手は、知り合いの鈑金工場に制作を依頼し、工場で発生したステンレス板の端材を活用し、曲げ、孔あけ、面取り、研磨などの最低限の加工で仕上げてもらっています。バイブレーション仕上げ(模様として、敢えてランダムな傷を全体に施す仕上げ)とすることで、元々あった端材の汚れや傷も違和感なく馴染みます。革紐についても、自身が趣味で行うレザークラフトで発生した端材を有効活用しています。

仕上げの塗装については、荏油(えあぶら)というエゴマの種から採れる淡黄色の天然のオイルを少量塗布し、しっかりと浸透させ、最低限の撥水をしつつも、オリジナルの木の表情を損なわない程度に、出来るかぎり自然な状態に仕上げています。
1軒の住宅の計画で発生した端材がプロダクトとして生まれ変わった

1軒の住宅の計画で発生した端材がプロダクトとして生まれ変わった

完成した製品は、建て主や工事でお世話になった方々へ贈ったほか、自身でも愛用しています。少量ですが、一部一般の方々への販売も行いました。
触り心地の良さや、使用していくうちに現れる木材特有の表情の変化に愛着が増すなど、使用者からの評判も良く、材料の延命にも繋がり、非常に有意義な試みとなりました。今後も可能な範囲で継続して行きたいと思っています。(安河内/西岡)

対応業務 注文住宅、リノベーション (戸建、マンション)
所在地 福岡県福岡市中央区
主な対応エリア 福岡県 / 佐賀県 / 長崎県 / 東京都 / 神奈川県
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