2017/03/08更新0like12196view

著者:水沼 均

ウッドデッキって何がいいの?外でもあり内でもある、多彩な魅力を実例から解き明かす

この記事を書いた人

水沼 均さん

建築設計の学校で長年教師を務め、大勢の生徒さんと接してまいりました。年齢、経歴、そして住まいへの思いも大変多様で、他では得られない貴重な経験ができました。その経験を生かして、豊かな住まいづくりに役立つような記事をたくさん書いていきたいと思います。

屋外スペースの中で、ウッドデッキはいちばん人気のある存在なのではないでしょうか。私自身、ウッドデッキのある住まいを見るとうらやましく感じます。なぜこんなに人気があるのでしょう。なにか秘密があるに違いありません。ここでは実例をたくさん見ながら、ウッドデッキの魅力の秘密を解き明かしてみることにしましょう。

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▽ 目次 (クリックでスクロールします)

ウッドデッキとは?テラスや濡れ縁とは違うの?

ウッドデッキはテラスの一種と言えます。テラスとは庭の一部を地面よりも高くして舗装した部分のことですが、この床面を木で仕上げたものがウッドデッキです。

またウッドデッキと濡れ縁はほぼ同じものと言えますが、濡れ縁というと和風の造り方をしますので、板の張り方や床の支え方など細かい部分を見るとだいぶ異なります。

テラスというと、ニュアンス的にタイルや石張りなどのハードな素材で仕上げられ、下足で出る場所という感じがしますよね。一方ウッドデッキは屋内の床とほぼ同じ高さで、裸足で出られる場所という感じがあります。

下の写真はある住まいのウッドデッキです。お子さんがチョコッと座って遊んでいたり椅子が置いてあったりなど、とても生活に密着した楽しい場所として活用されています。
fukushi and fukushi「桂木の家」

庭に「こっち」「そっち」「あっち」を作ってくれるウッドデッキ

ウッドデッキから庭の様子を眺めてみましょう。下の写真の住まいではウッドデッキを屋内の床とほぼ同じ高さに揃えていて、地面の芝庭との間には30センチ以上の段差が生まれています。

結果、島のように高いところから庭を見下ろしているような楽しさが生まれています。これはウッドデッキの大きな魅力だと思います。身近に守られた「こっち」に裸足でいて、周囲の「あっち」を眺め下ろしているという感覚と言えます。限られた広さの庭の中に2つの場所が発生して、一気に広がり感が出てくれています。
中村光次「河口湖の舎Ⅱ」
また下の写真では、庭に塀がないため遠くの景色がよく見えます。景色が広大なだけに、身近な「こっち」がますます親密に感じられますよね。こんなときこそ裸足でいられるウッドデッキはぴったりです。

またウッドデッキに出ると、「こっち」のデッキと「あっち」の遠景との間に、さらに「そっち」の芝庭部分が存在することになります。つまりデッキがあるだけで、世界が近景、中景、遠景の3つに分かれる楽しさが生まれるのです。
アトリエサンカクスケール「火の国ビーチハウス」

囲われてすっかり外の部屋になったウッドデッキ

さて、ではウッドデッキが塀や外壁で囲われるとどのような雰囲気になるでしょうか。

下の写真は塀で囲われたウッドデッキですが、造り付けのベンチや天幕があって、すっかり外の部屋になっています。囲われることで景色はなくなりますが、代わりに部屋としての密度感が発生してくれています。
中島謙一郎「NDさんの住家」

覆われて、もはや部屋の一部になったウッドデッキ

それでは、さらにウッドデッキの頭上を覆ってみたらどうなるでしょうか。下の写真はウッドデッキを半透明のルーバー屋根で覆った例ですが、もはや屋内の部屋と完全に一体化していることがわかります。

このように、囲いと覆いを組み合わせることでウッドデッキは非常に強い内部性を持つことができます。そしてこの場合、段差なく裸足で出られることがとても重要なのがわかります。
では、囲いがなく覆いだけのウッドデッキはどうでしょうか。下の写真は広大な庭に面したウッドデッキです。屋内の延長としてウッドデッキがあり、頭上を軒が深く覆っているため、身近な「こっち」にいられる守られ感を強く感じることができます。

「デッキ」ならではの楽しいしつらえ

なぜ「ウッドテラス」よりも「ウッドデッキ」と呼んだ方がしっくりと来るのでしょうか。たぶん「デッキ」という言葉がイメージにぴったり合っているからではないでしょうか。デッキはもともと船の甲板を指す言葉ですが、ウッドデッキが地面から持ち上がっている感じが、いかにも船の甲板ぽいですよね。そのあたりに理由があるのかもしれません。

ところで下の写真は道路からのアプローチとして、家に人を導くウッドデッキです。このデッキ、まるで波止場の桟橋のように見えませんか?素材が木でできていて地面から高いだけで、こんなに想像力をかき立ててくれるウッドデッキ。活用の仕方は無限に広そうですね。
また下の写真は屋上庭園に設けられたウッドデッキです。バスタブまでついている夢のようなスペースですが、このデッキはまるで舞台のように見えます。歌舞伎の花道や能舞台の橋掛かりのようなアプローチが、舞台へと楽しく人を導きます。木だからこそ作れるイメージだと思います。
ROKUSA「素材感を楽しむインテリア」
下の写真は外壁から長く突き出たウッドデッキです。今度はまるでファッションショーの舞台のように見えますよね。いろいろな楽しい使い方ができそうな、ワクワクするウッドデッキです!

考えてみると、劇場の舞台は木でできたものが大半ですよね。オペラも歌舞伎も能も、みんな舞台は木です。私たちの原風景の中にある舞台や桟橋、そして甲板など、さまざまなメルヘンの要素を住まいにもたらしてくれる、ウッドデッキはそんな楽しい存在なのです。
長澤誠一郎「K4-House」

ウッドデッキの材質と既製品

ウッドデッキと言えば木でできたイメージがありますが、近年、天然木に加えて人工木でできたウッドデッキも普及し始めてきました。人工木は樹脂と木粉を混ぜて作った新たな材で、天然木よりも価格が安く耐久性が優れているという特徴があります。

もちろん天然の木材を用いた手作りのウッドデッキも健在です。年に一度くらい塗装をし直さなければならないなど、メンテナンスに若干の手間はかかりますが、好みの色の塗料を用いることができ、デザインにも自由度があるのが魅力です。塗装も業者さんに頼らずに、家族みんなで手がける年中イベントとして考えると、それもまた楽しいかもしれませんね。

またウッドデッキのパーツがセットになった既製品も多数市販されています。床板だけでなく、境界の幕板や束柱などのパーツもすべてセットになっています。既存の住まいにウッドデッキだけを手軽に増設したいときなどには、とてもお手ごろでしょう。
ウッドデッキは内と外をつないでくれる、楽しい存在であることがわかりました。そして活用の仕方によって、いろいろと多彩な表情を見せてくれる存在であることもわかりました。

ウッドデッキの魅力はズバリ、下足を履かずに裸足で出られる場所であることだと思います。外でありながらも、裸足で出られるだけでこんなに多彩な楽しみをもたらしてくれるのです。

現代の住まいはどんどん内部化、密室化していますが、私たちがウッドデッキに楽しさを感じられるのは、きっと「もっと屋外に親しみたい」という希求が強くあるからなのではないでしょうか。
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