専門家による記事：料理が楽しくなるキッチンをつくる | 井上久実（建築家）

堺・槙塚台の家

私が設計する住宅の殆どには製作キッチンがあります。

絶対、製作でなくてはダメと強く押し切るつもりはありませんが、お施主さんと住まいの話しをしていると、いつのまにか、キッチンは製作ですよねと話がまとまってくるのです。家のイメージがお施主さんの頭の中に出来て来た時に、ぴかぴかの既製品のシステムキッチンはどうもイメージしづらいのでしょう。また、製作キッチンは夢のような存在で、家ができるのと同時に夢のキッチンも手に入れたい！キッチンも家と一緒にこだわりたい！という願望もあるかと思います。

私自身、料理が大好きなせいもあり、キッチンの設計には力が入ります。

台所に立つ奥様それぞれの考えを尊重しながら、色々提案し、自分も学んでいます。最近では、キッチンの中でも奥様は収納にこだわり、御主人がデザインにこだわるという役割分担が多いようです。
キッチンの設計に大事なのは

1.キッチン空間が楽しいこと
2.お手入れ，片付けがしやすいこと
3.料理の作業性が良いこと

などです。キッチン空間はもっとも大切で、キッチンから見える風景やリビングとのつながり、家族との関わりなど、キッチンに立つ事で楽しめる空間の工夫が必要です。

堺の家

また、キッチンはオブジェではありません。毎日使い込んでこそキッチンが生きてきます。新しいキッチンでは天ぷらは揚げないという方もいらっしゃいますが、これでは何の為にキッチンを作ったのかわかりません。壁が油で汚れても拭き取れば元通りです。壁は拭き取りやすい素材にしておけばいいのです。レンジフードも適正な位置や高さ、機能があれば吸ってくれます。

アイランドキッチンでは床に油や水が飛ぶことを想定して素材を選択します。

扉には把手を付けた方がいいでしょう。手の汚れがついてしまいます。

食器洗い乾燥機は大きめの外国製がおすすめです。ガスコンロの五徳や水切りかごも入り、洗う手間が省けます。料理を楽しむ為にはお手入れや片付けがしやすいキッチンをつくるのが一番大事です。これが大変だと料理をするのも苦痛です。

我が家のキッチンはダイニングテーブルとシンクが一体型なので、片付けが早く済みます。素材はステンレスで、傷がついても気になりません。キッチンは大きな窓に対面しており、中庭の竹や青空が見え、開放感があります。