昨今、リノベーションという言葉を耳にすることも増えましたが、いまいちよくわからないという方もまだ多いと思います。「リノベーション」「リノベーションとは」「リフォーム リノベーション 違い」などで検索すると、すでにウェブ上に解説記事はたくさん出てきますが、その多くはリノベーション会社によるものだったりします。そこでこの記事では、1社に偏らないフラットな立場から、私見や最近の状況も含めてなるべくわかりやすく解説します。
▽ 目次 (クリックでスクロールします)
リノベーションの意味、リフォームとの違いとは?
リフォームとリノベーションの境界線を探る
ここまでをまとめると
フルリノベーション・スケルトンリノベーションとは
リノベーションならではの住宅事例
リノベーションについてもっと知りたい方へ
リノベーションの意味、リフォームとの違いとは?
「リノベーション」という言葉は、ここ数年でだいぶ市民権を得てきたように思います。しかし、リフォームとはどう違うのか、どういうものをリノベーションと呼ぶのかについては、メディアや会社によって微妙に定義が異なるため、いまひとつわかりにくいのではないでしょうか。
まずはリノベーションという言葉の定義から。
リノベーションは英語で「Renovation」。直訳すると「革新」や「刷新」「修復」といった意味を持った言葉です。
初めに結論を言うと、リフォームとリノベーションの明確な区別はありません。これは、何か法律やルールで明確に線引きされているわけではないという意味です。
たとえば、リノベーション住宅に関わる企業・団体で構成されている、
一般社団法人リノベーション協議会は、
リノベーションとは
「中古住宅を現代のライフスタイルに合った住まいによみがえらせること」
と定義しています。
さらに引用します。
「リノベーションとは、中古住宅に対して、機能・価値の再生のための改修、その家での暮らし全体に対処した、包括的な改修を行うこと。例えば、水・電気・ガスなどのライフラインや構造躯体の性能を必要に応じて更新・改修したり、ライフスタイルに合わせて間取りや内外装を刷新することで、快適な暮らしを実現する現代的な住まいに再生していきます」(出典:
リノベーション協議会)
こうした文脈において、リフォームとリノベーションの違いとしてよく説明されるのが、
・リフォームは原状回復のための修理・修繕
・リノベーションは価値向上のための改修
といった表現です。
リフォームが「新築の時と同じような状態に戻す」というニュアンスを持つのに対し、リノベーションは「機能的な要素を加えたり、新築時以上の性能を向上させることで住宅に新たな付加価値を生み出す手法」と言われることがあります。
もう少し具体的に言うと、
・リフォームは、内装の張り替えや老朽化した部分の修繕などを対象とする
・リノベーションは給排水や電気・ガスの配管を変更したり、構造体以外を解体し、間取りを全面的に見直すことで、新たな価値のある住宅に生まれ変わらせる
という意味合いが強いと言えるでしょう。
これはこれで分かりやすいのですが、先ほど申し上げた通り、明確な基準があるわけではないので、価値向上のための全面改修をリフォームと呼ぶケースだってあります。
ちょっとややこしくなってきましたね……。
リフォームとリノベーションの境界線を探る
ではここで、ざっくりしたイメージをつかんでいただくために、下記の図をご覧ください。
わかりやすさのために、誤解を恐れずあえてざっくりとまとめてみました。
なので、細かいところはあまり突っ込まないでください。
この図表は、「費用面」と「改修の規模感」を示しています。下に行けば行くほど、改修の規模や費用が上がってきます。
●費用面
・リフォーム:数十万円から〜
リフォームは壁紙の貼り替えや水まわり(キッチン、洗面、風呂)設備の交換、外壁の塗り替えなど、小規模な改修も含むため、案件は数万円〜数十万円から存在します。
・リノベーション:数百万円から〜
一方、リノベーションは間取りの変更などある程度の規模感を伴うことが多いため、費用は数百万円〜と考えておくと良いと思います。
ちなみに、60平米マンションのフルリノベーションの場合、600万円台〜1000万円台くらいが費用の相場です。
※リノベーションの費用に関する詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。
リノベーション費用の目安・予算の相場、全部見せます
●改修の規模感
規模感についても、リフォームは小規模なものから存在します。
一方、リノベーションの場合、家をまるごと改修したり、部分的なリノベーションだとしても設備の交換だけではなく、空間をトータルに改修したりするのでそれなりの規模になってきます。
さらに、ここがリフォームとの違いなのですが、リノベーションは1軒の住宅にとどまらない領域をカバーしていることも特徴です。
たとえば、老朽化した団地やマンションを一棟まるごとリノベーションしたり、倉庫だった建物を再生したり、街並みも含めて生まれ変わらせたりするケースなどがそれに当たります。
いくつか実際の例を見てみましょう。
団地再生の事例として有名なのが、ホシノタニ団地です。
▼ホシノタニ団地
小田急電鉄とブルースタジオによる団地再生プロジェクト。もともとは小田急電鉄の社宅だった築50年超の団地が、リノベーションによって生まれ変わりました。
住戸だけでなく、広大な敷地を含めた全体をデザインすることで、新たな人の動きをつくることに成功しています。子育て支援施設や貸し農園、ドッグランなどもあります。
ホシノタニ団地 - 小田急×blue studio リノベーション賃貸共同住宅
もともと店舗や倉庫だったところ住宅に変えるといったように、別の用途の建物として再生させることを「コンバージョン」と呼びます。
これも、リノベーションの1つの形態と言えます。
▼農具倉庫をコンバージョンした家
建築家・
AIRHOUSE / 桐山啓一さんが手掛けたコンバージョン事例です。
農具倉庫だった建物を住宅へとリノベーションしています。大きな倉庫だった空間の良さを活かしつつ、素敵な住宅へと生まれ変わってますね。
農具倉庫をコンバージョンした家 - 戸建リノベーション事例
ここまでをまとめると
ここまでの内容と簡単に整理します。
・リフォームとリノベーションは重なっている部分も多く、厳密な区別は難しい
・ただし、原状回復のための小規模な修繕をリフォームとは呼ぶが、リノベーションとは呼ばない
・リノベーションは1戸の住宅だけでなく、複数の住宅や街づくりなど大規模なスケールの再生も含む
といった感じでしょうか。
なお、先述したリノベーション協議会では、優良なリノベーションの統一規格を定めており、基準を満たした住宅を「適合リノベーション住宅」と呼んでいます。
詳しくはこちらをご覧ください。
適合R住宅と安心R住宅 | 一般社団法人 リノベーション協議会
フルリノベーション・スケルトンリノベーションとは
築年数が経過した中古マンションや戸建て住宅を購入する場合、立地は気に入ったのに、間取りや設備がライフスタイルに合わないケースが多々あります。
そんな時は、住居内の壁や設備などを取り払って構造体だけになるまで解体し、そこから新たな間取りを作り出していく「フルリノベーション」という方法があります。
ちなみに、住宅の骨格だけを残して内装部分を解体するリノベーションは、「スケルトンリノベーション」とも呼ばれることもあります。
小規模なリフォームと区別するために、こうした表現が使われることがありますので、知っておくと良いでしょう。
リノベーションならではの住宅事例
ここで、リノベーションならではの事例を3つご紹介します。
▼room ∩ rooms(建築家:
比護結子)
築40年ほどのマンションの1住戸をリノベーションした事例です。
もともとは2つの和室がある2LDKの間取りでした。それを、壁を取ってスケルトンにし、がらんどうになった空間の3つの角に、寝室と和室、キッチンを配置しました。
そうすることで、真ん中の空間には、リビングと3つの空間とが重なる「部屋ではない」新たなスペースが生まれました。
▼ガーリーとわたし(リノベーション会社:
シンプルハウス)
82平米の5DKを、ひとり暮らしの2DKにリノベーション。
「寝室は南側にしたい」という希望から、リビング横の日の当たる場所に配置。こうした間取りの融通が利くのもリノベーションの良さです。
▼二世帯住居を単世帯にリノベーション(リノベーション会社:
LOHAS studio ロハススタジオ)
中古で購入した完全分離タイプの二世帯住居を、単世帯用にリノベーション。
リビングは天井を撤去することで、大きな吹き抜けに。鉄骨の梁や筋交いが、コレクションしているヴィンテージ家具ともマッチしています。
見えないところでは、高性能の断熱材を屋根に施工することで、快適な住み心地も実現しています。