リノベーションとひとくちに言っても、構造をあらわにして行われるフルリノベーションから、住戸の一部分を刷新する部分リノベーションまで、規模はさまざまです。当然、規模によりかかるコストも異なります。
今回は部屋数は変えずに、住み手のニーズに合わせて劇的な変化を遂げたマンションリノベーションにフォーカスしました。
▽ 目次 (クリックでスクロールします)
部屋数を変えない理由
こだわりとコストダウンを両立した家
DIYで進化を続ける、未完を楽しむ家
収納効率をアップさせた家
各部屋のバランスをキープしながら最大限ニーズを投影した家
部屋数を変えない理由
リノベーションにおいて、部屋数を変えない主な理由には、以下のようなことが挙げられます。
・部屋数そのものに不満がない
・配管や基礎の構造上、部屋数を変更することができない
・リノベーションコストを最小限に抑えたい など
特に、マンションリノベーションの場合は、構造上、部屋数の変更が難しいとされることも多いようです。集合住宅なので、購入物件であっても、隣室との境界壁や窓などは「共有部分」とされ、簡単に変更を加えることができないためです。
一方で、部屋数の変更をしないリノベーションの場合は、その分、施工の規模が小さくなりますから、コストを抑えられるというメリットも備えています。
ここからは、部屋数を変えないマンションリノベーションを実施した事例を4つご紹介していきます。それぞれの部屋数を変えなかった理由と、工夫をみていきましょう。
こだわりとコストダウンを両立した家
眺望のよい高台に建つ、広めの2LDK。
物件そのものにコストの比重をかけ、リノベーション費用は全体のバランスを見つつ決められています。
リノベーションコストを最小限に抑えるため、間取りの変更はほとんどせず、床や天井、壁といった部分の素材にとことんこだわっているのが特徴。部屋数はそのままでも、大きな面の素材にこだわることで、手持ちの古道具の味わい深い雰囲気が映える空間をつくりあげています。
間取り変更はされていませんが、リビングと隣り合う寝室の壁に大きな室内窓を設けたことで、開放的な雰囲気も実現。同じ間取りのなかに室内窓を加えるだけでも、空間の印象を大幅に変えることができます。
扉や建具の一部にも施主支給のアンティークパーツを採用。
リノベーションの醍醐味は、大幅なレイアウト変更だけでなく、こうしたディテールや質感に、住み手の好みをじっくりと投影できることにもあるんですね。
DIYで進化を続ける、未完を楽しむ家
「今はまとまった工事予算は組めない」本来ならネガティブなこの要素を、「遊びがいがある」に変えたマンションリノベーション事例。
こちらも間取り変更をしないことでコストを抑え、天井はコンクリートむき出しのまま、あえて工事途中のような未完成感のあるデザインに。そして、入居後にDIYで壁や床の塗装をしたり、フローリングを貼ったり、小物や棚などをつくっているそうです。
プロの手でつくり込まれた住まいではなく、住みながら自分たちの手で進化させていく、変化を止めない家です。
ちなみに、DIYで自らつくり込んでいきたいという住み手の希望に添って、和室だったスペースは、ご主人のアトリエスペースにつくり替えられています。
収納効率をアップさせた家
古くなった設備の刷新と、収納不足解消を目的にリノベーションした事例。
部屋数の増減はありませんが、収納をグレードアップさせるために、寝室の一部をウォークインクローゼットに変更しています。また、もともと愛用していた無印良品の家具や収納道具がより活かせるようにと、造作部分をMUJIサイズで徹底しているので、あるものすべての収まりがよいのも魅力です。
造作部分の中でも、収納とダイニングテーブルを兼ねるキッチンカウンターの役割は秀逸。
ダイニングテーブルを置く必要がなくなったため、大型ソファが設置できるようになったそう。収納効率を上げるリノベーションが、結果的にインテリア性をも高め、暮らし全体がより豊かに変化しています。
リビングの壁一面を埋めるのは、無印良品のスタッキングシェルフでつくられたテレビボード兼本棚。無印良品ならではのオプションパーツをフル活用して、細々とした日用品もすっきりと収納しています。
部屋数は変えていませんが、リノベーションで手持ちの道具がフィットする環境につくり変えたことで、ムダのない空間づくりができました。
各部屋のバランスをキープしながら最大限ニーズを投影した家
最後にご紹介する事例は、スケルトン工事により大幅に間取りは変更したものの、部屋数はリノベーション前のままキープされた住まい。
奥さまのご両親が暮らした、築44年のマンション。自分たちがこれから暮らしていくにあたり、間取りや仕様を刷新して、また長く大切に住み継いでいきたいという思いからスタートしたリノベーションです。
その要望は、各部屋のバランスは崩さず、開放的なLDKと十分な収納力、そして将来を見据え、キッズスペースとワークスペースを兼用できる空間を確保したいというものでした。
もともとベランダ側に1室あったものを移動させ、広々としたLDKに。キッチンも対面のオープンキッチンに変えました。また、寝室の位置はそのまま、サイズをコンパクトにし、ウォークインクローゼットの面積を拡張することで、収納力を高めています。
こうして、2LDKという部屋割りのバランスを変えることなく、あらたな家族のスタイルにあった住まいに生まれ変わりました。
ベランダ側から、住まいのちょうど中心近くに場所を移した1室は、キッズスペース兼ワークスペース。大きな室内窓からはLDKの様子をうかがうこともできます。
部屋数を変えなくても、リノベーションにより住環境は大きく向上させることができます。リノベーションに踏み切るには、それぞれに異なる動機があります。そして費用や条件などの事情もまたそれぞれ。
そうした事情のなかで、最大限に理想を適えることができるのが、アイデア次第で無限の可能性を示してくれるリノベーションの醍醐味なのかもしれません。