2020/05/11更新2like4985view

著者:佐藤ゆうか

住まいの空調、何が正解?種類と選び方のヒント

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この記事を書いた人

2級建築士。
工業高校卒業後、中小規模の建設会社に勤務。
木造住宅を中心に新築やリフォームの設計に携る。
現在は3児の育児を中心に在宅ワークに励み、いつか現役復帰を夢見ながら建設業界にしがみつく日々。

住まいの空気を整える空調は、健康で快適な生活を送るために必要不可欠。
家に合った空調を選ぶだけで住み心地がよくなりますし、光熱費も削減できるなどメリットもたくさん。

だけど「住宅の空調」って具体的に何を指すのか、ご存知ですか?
本記事では、どんな設備が「空調」と呼ばれているのか、空調の種類、選び方などについて説明したいと思います。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

住宅の「空調」とは?

全館空調

全館空調のメリット

全館空調のデメリット

全館空調が向いている住まいとは?

ルームエアコン

ルームエアコンのメリット

ルームエアコンのデメリット

ルームエアコンが向いている住まいとは?

床暖房

床暖房のメリット

床暖房のデメリット

床暖房が向いている住まいとは?

温水暖房システム

温水暖房システムのメリット

温水暖房システムのデメリット

温水暖房システムが向いている住まいとは?

蓄熱暖房

蓄熱暖房のメリット

蓄熱暖房のデメリット

蓄熱暖房が向いている住まいとは?

24時間換気システム

住宅の「空調」とは?

空調とは、「空気調和設備」を略した言葉のこと。

空間の「温度」「湿度」など、室内環境を快適に調整するための設備のことで、冷暖房機(エアコン)、加湿器、除湿器、空気清浄機、全館空用システムなどを指す言葉です。
建物の構造や種類、使い方によって、適する空調は異なります。

現在、日本の住宅で使われている主な空調としては、

・全館空調
・エアコン
・床暖房
・蓄熱暖房
・温水暖房
・24時間換気システム

上記が挙げられます。
それぞれの特徴やメリット・デメリットについては、以下で詳しく説明します。

全館空調

全館空調とは、住まい全体の空調を一括で行うシステムのことです。

全館空調のメリット

・空調機が1台で済む
全館空調の場合、各部屋に空調機を設置する必要がありません。
室外機もルームエアコンに比べると少なく済むので、家の外構もすっきり。
美観を損なわないのも大きなメリットです。

・部屋ごとの温度差が少ない
廊下、洗面室、トイレなど、従来空調機が取り付けられることの少ない空間にも空調が行き届くため、建物全体の温度が一定になります。
温度が一定になると、部屋ごとの温度差により発生する「ヒ―トショック」(寒暖差によって血圧が急上昇し、心筋梗塞や脳梗塞を起こす現象)のリスクも減少。高齢の方も安全に暮らせます。

・広い空間で快適な空調を実現できる
全館空調なら、ルームエアコンでは温度にムラが出てしまう広い空間でも、均一な空調を実現できます。
吹き抜けのような上下に広がりのある空間に適しています。

・室内の空気清浄効果がある
全館空調システムの多くは、室内に空気を取り込む際に花粉や排気ガスなどの汚れをカットするフィルターを採用しています。近年は空気清浄機能や消臭機能を持つ製品なども登場しています。

全館空調のデメリット

・初期費用が高額
全館空調システムを導入する際は、比較的高額な初期費用が必要です。
目安は100~250万円ほど。
ルームエアコンで空調を行う場合、1台10万円程度の製品を5部屋に取り付けたとしても工事費含め55万円ほど。
比較的良いグレードのエアコンをつけたとしても、初期費用にはかなりの差が発生します。

・部分的な温度の変更が難しい
建物全体で空調を管理するため、一部屋だけ温度を変更することは難しいです。
ただし、最近は部屋ごとに温度を変えられる機種も登場しているようです。

・故障すると建物全体の空調が効かなくなる
全館空調システムはひとつの機械で建物全体の空調を調整しているため、ひとたび機械が故障すると、建物全体の空調が効かなってしまいます。このような事態を避けるため、2台の機械で万が一に備えるタイプも登場しています。

・光熱費がかかる
部屋ごとに空調するルームエアコンに比べ、建物全体を常に空調する全館空調はどうしても電気代がかかってしまいます。太陽光発電システムなどと組み合わせて使うとことで、光熱費のデメリットはカバーできるようです。

・メンテナンスの手間がかかる
部品の交換などのメンテナンスに専門業者を呼ぶ必要があるので、ルームエアコンに比べてメンテナンスの手間と費用がかかります。

・乾燥しやすい
全館空調の住まいは空気が乾燥しやすく、加湿器の併用が必須となるケースが多いようです。

・室内機の音が響く
室内に空調機を設置する必要があるため、室内機の駆動音が気になることがあります。
夜間の音が特に気になる方も多いため、寝室と機械室はできるだけ離れた位置に置くことをおすすめします。

全館空調が向いている住まいとは?

全館空調は、以下のような家庭、建物に適しています。

・気密性が高い
・断熱性が高い
・高齢の家族がいる
・予算に余裕がある
・室内、外構をすっきりさせたい
・家にいる時間が長い
・エネルギーロスを減らしたい
・オール電化
・太陽光発電システムがある

全館空調の室内温度は季節を忘れるほど一定で、その快適さは他の空調と比べ物にならないほどです。
導入には多少コストがかかりますが、メリット・デメリットを理解したうえで、選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。

ルームエアコン

ルームエアコンは、1台で冷房・暖房・除湿・送風の機能があります。
一般的には、部屋の壁もしくは天井に、各部屋の広さに応じたものが取り付けられます。

ルームエアコンのメリット

・初期費用が安い
グレードにもよりますが安いものであれば1台5万円程から購入できるため、最もコストを抑えて導入ができる空調機です。
故障して買い替える必要がでた場合でも、家計への負担が少なく済みます。

・操作が簡単
運転モードや温度の変更、タイマー設定など、リモコン操作で簡単に行えます。

・メンテナンスが楽
基本的なメンテナンスは定期的なフィルター掃除と、専門業者による年1回程度の掃除のみ。お掃除機能つきの機種なら、メンテナンスフリーで快適な空調を実現できます。

・好みの機種を選べる
たくさんの商品から、予算、求める機能などに応じて好みの機種を選べます。

・買い替えやすい
ホームセンターや家電量販店、通信販売などで購入・取り付け依頼までできるので、他の空調機に比べて気軽に買い替えが可能です。
故障した場合も、室内機と室外機の交換だけで済む場合がほとんどです。

・ランニングコストが低い
特に新しい機種の場合、設定温度になると自動で省エネルギー運転に切り替わるため、電気代を安く抑えることができます。

ルームエアコンのデメリット

・存在感がある
壁や天井に取り付けられるため、室内での存在感がインテリアの邪魔になることも。
室外にダクトを通す場合、室内機の設置部分から屋外にある室外機まで、外壁にダクトを這わせる必要があるので、室外の見栄えにも影響します。

・部屋ごとの温度差が出る
ルームエアコンで空調が効くのは、エアコンが運転している部屋のみ。
そのため、廊下やルームエアコンが運転していない部屋との温度差が発生してしまいます。
室内外の温度差を無くそうと複数の部屋でエアコンをつけると電気代もかさみます。

・ほこりっぽくなる
部屋の上部に設置されることの多いルームエアコンから風が吹き出すことで、室内のほこりが舞い上がり、アレルギー性鼻炎などを悪化させる恐れがあります。

ルームエアコンが向いている住まいとは?

ルームエアコンは、以下のような家庭、建物に適しています。

・初期費用を抑えたい
・欲しい機種がある
・工期に余裕がない
・自宅にいる時間が短い
・必要な時だけ空調を整えたい
・個室で過ごす家族がいる

ルームエアコン最大のメリットは初期費用を抑えて導入できること。
また、必要な時、必要な場所で使用できるため、留守にしがちな方にもおすすめです。

床暖房

床暖房には温水式と電気式があります。
温水式は熱源機で作られた温水を床に設置されたパネルに循環することで部屋を暖めるもの。電気式は、電気の力で床に設置されたヒーターを温める形式のものです。

床暖房のメリット

・健康に良い
足元が温まるため、他の暖房機種よりも頭がぼーっとする感覚が少なくのぼせにくい床暖房。
冷えやすい足元を温めることで免疫力が上がるなど、健康にも良い影響を与えると言われています。

・室内の空気が汚れない
温水式の場合、屋外に設置された熱源機で温水を作るため、室内の空気が汚れる、嫌な臭いが発生する、ほこりが舞うなどのデメリットがありません。

・室内温度にムラができにくい
部屋全体が均一に暖められるので、室内の温度にムラができにくいです。

・火傷の心配が少ない
室内に熱源機がなく、床が極端に熱くなったりすることもないため、小さなお子さんやペットがいても、火傷の心配が少なく安心です。

床暖房のデメリット

・初期費用がかかる
床パネルの費用のほか、温水式の場合は熱源機も必要になるため、15畳程度の部屋に設置する場合で約50万円程が必要です。

・補助暖房が必要
床暖房だけでは部屋全体が暖まるまで時間がかかりますし、人によっては温度に不足を感じる場合も。そのため、部屋を早く暖めるためのヒーターやエアコンなど、補助暖房は必要不可欠です。

・低温火傷の恐れがある
電気式、温水式ともに、一定の温度以上にならないよう制御されていますが、床暖房が作動している床面に長時間横になっていると低温火傷をおこす恐れがあります。
小さなお子さんやお年寄りなどがいる家庭の場合は、特に注意が必要です。

床暖房が向いている住まいとは?

床暖房は、以下のような家庭、建物に適しています。

・断熱性能が高い建物
・ひと部屋で長い時間を過ごすことが多い
・床暖房の心地よさが好き
・小さな子供やペットがいる
・アレルギーやぜんそくの家族がいる
・予算に余裕がある(複数の部屋に設置する場合)
・都市ガスを使う
・床暖房プランがあるプロパンガスを使う

床暖房は、足元からじんわり温められる心地よさが人気の魅力的な設備です。
すべての部屋に設置すると費用がかかりますが、長い時間過ごす部屋が決まっているようなら、比較的予算を抑えて導入することも可能です。

温水暖房システム

温水暖房システムとは、熱源機でつくられた温水を、床暖房、パネルヒーター、浴室暖房機、温水式ルームヒーターなどにポンプを使って循環・放熱させることで暖房を行うものです。温水式床暖房も、この温水暖房に当てはまります。

温水暖房システムのメリット

・部屋が均一に暖められる
放熱器を設置した部屋はじんわりと優しく暖められます。比較的室内の温度のムラが少ないので、複数の部屋に設置することで部屋同士の温度差も少なくできます。

・火傷の心配が少ない
熱源機が極端に熱くなることがありませんので、小さなお子さんやペットへの火傷の心配がありません。

・エネルギー効率が良い
熱源機で作られたお湯は、熱源機だけでなく食洗器や浴室などでも活用できます。
エネルギー効率がとても良いシステムです。

・室内の空気が汚れない
循環させたお湯の熱を放熱して空調するタイプの床暖房やヒーターは、空気が乾燥しにくく、一酸化炭素が発生する恐れもありません。

温水暖房システムのデメリット

・初期費用がかかる
家全体に温水暖房システムの暖房機を取り付ける場合、およそ100~200万円程の初期費用が必要です。

・暖まるまでに時間がかかる
温水暖房システムは部屋が暖まるまでに、比較的時間がかかります。タイマーなどを活用するといいでしょう。

・プロパンガスの場合、光熱費が高額になる
プロパンガスは都市ガスより高めの価格設定ですので、ガスを多く使う温水式暖房では光熱費が高額になりがちです。地域やガス会社によって価格が異なりますので、導入前に該当地域のガス代を必ず確認しておきましょう。

温水暖房システムが向いている住まいとは?

温水暖房は、以下のような家庭、建物に適しています。

・断熱性能が高い建物
・家族がそれぞれ個室で過ごすことがある
・小さな子供やペットがいる
・アレルギーやぜんそくの家族がいる
・予算に余裕がある
・都市ガスを使う
・暖房プランがあるプロパンガスを使う
・寒冷地

まだ知名度の低い温水暖房システムですが、環境と住む人の身体に優しく、省エネルギーで家中暖められるため、どこにいても暖かく過ごしやすいというメリットは大きいのではないでしょうか。

蓄熱暖房

電気代が安い深夜に蓄熱用のレンガを温めておき、日中に暖めたレンガの放熱で暖房を行うのが蓄熱暖房です。

蓄熱暖房のメリット

・部屋同士の温度差が少ない
家全体がじんわりと温められるため、場所ごとの温度差が少なくなります。
また、エアコンのようにスイッチを切ると寒くなることもありません。
全館空調と同じく、ヒートショックのリスクが減る空調機器です。

・室内の空気が汚れない
蓄えた熱を放熱して空調するタイプの暖房のため、空気が乾燥しにくく、一酸化炭素が発生する恐れもありません。

・火傷の心配が少ない
熱源機が極端に熱くなることがないので、小さなお子さんやペットへの火傷の心配がありません。

・メンテナンスが楽
単純な構造のため故障が少なく、特別なメンテナンスも必要ありません。

・光熱費が安くなる場合がある
暖房に灯油を使っていた家庭の場合、蓄熱暖房にすることで光熱費が下がるケースも多いようです。

蓄熱暖房のデメリット

・存在感がある
蓄熱暖房機はとても重く、簡単に移動させることができません。
そのためオフシーズンでも置いておくことになり、それなりの存在感があります。

・細かい温度調整は難しい
運転中は放熱が続くため常に室内が温め続けられる状態になりますが、細かな温度設定はできません。室内温度が上昇しすぎて、温度調整をしたい場合は、外気を取り込む必要があります。

・蓄熱量に限りがある
蓄熱できる量には限りがありますので、蓄熱された分をすべて使ってしまうと翌日までエアコンなど別の暖房機に頼る必要があります。

・暖めるまで時間がかかる
蓄熱暖房機は部屋を急激に暖めることが得意ではありません。
すぐに部屋を暖めたいときは、ヒーターやストーブなど別の空調機器が必要です。

蓄熱暖房が向いている住まいとは?

蓄熱暖房は、以下のような家庭、建物に適しています。

・断熱性能が高い建物
・家族がそれぞれ個室で過ごすことがある
・小さな子供やペットがいる
・アレルギーやぜんそくの家族がいる
・オール電化
・太陽光発電システムがある
・寒冷地

蓄熱暖房は、太陽光発電システムと併用するととても環境に優しい空調機器です。
アレルギーやぜんそくが心配な家族がいるご家庭でも、安心して使えます。

24時間換気システム

24時間換気システムとは、換気と給気を計画的に設置し室内の空気を常に循環させることで、2時間に1回、家全体の空気を入れ替えるシステムです。

「2時間に1回、家全体の空気が入れ替わる」とは、建築基準法で定められている換気量で、健康な生活には必要不可欠なものです。

24時間換気システムが必要な理由としては、

・シックハウス症候群対策
・室内の二酸化炭素濃度の軽減
・結露対策
・エアコンや暖房などのエネルギーロスの削減

上記が挙げられます。

24時間換気システムは室内の空気をきれいにし、環境を安定させることを目的としています。
住宅の場合は、給気と排気両方にファンを使って強制的に給気・排気を行う「第1種換気」と、給気は自然に行い排気のみファンで強制的に行う「第3種換気」のいずれかが用いられます。

暖房方式や建物の構造、建設会社によって推奨する換気方法が異なりますが、住宅の場合、低コストで効果がある第3種換気を用いることが圧倒的に多いようです。
空調は目に見えないものですが、快適な暮らしには必要不可欠。
住まいのタイプや家族の状況、使い方などで適した空調機器を選んで、暮らしやすい家を作りたいですね。

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この記事を書いた人

2級建築士。
工業高校卒業後、中小規模の建設会社に勤務。
木造住宅を中心に新築やリフォームの設計に携る。
現在は3児の育児を中心に在宅ワークに励み、いつか現役復帰を夢見ながら建設業界にしがみつく日々。

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