昨今のライフスタイルの変化の一つとして、仕事現場ではリアルな出勤と自宅リモート、子供の教育現場では対面授業とオンラインなど、状況に応じた使い分けで、十分な満足と効率的な最善策を「いいとこ取り」で選択できる快適さに気づきはじめた私たち。住まいづくりにもそんなハイブリッドな選択肢があるのでは?
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既存物件の実感×自由設計の創造性
持たざる賃貸×資産になる購入
働く場×暮らす場
こだわりの独自性×戦略的な汎用性
確かなプライバシー×寄り添う安心
既存物件の実感×自由設計の創造性
もはや説明は必要ないかもしれませんが、リノベーションは住まいづくりにおける鉄板のいいとこ取りと言えるでしょう。
家族にとっての最適な空間をゼロからつくりあげていくのは大変な作業ですが、一方、いま暮らしている家の欠点を見つけることは比較的簡単ですよね?それは、日々住み心地を体感しているから。
これと同じように、中古物件購入+リノベーションなら、既存の家の立地や間取りがどのように住み心地と結びついているか、シミュレーションし体感したうえで住まいの検討を始められる利点があります。気づいたマイナス要素をゼロに改善させ、さらに、自分仕様のリノベーションを加えてプラスに高められる、それが中古+リノベがハイブリッドな家づくりと考えられている所以(ゆえん)です。
持たざる賃貸×資産になる購入
「譲渡型賃貸住宅」という形態をご存知でしょうか。セミオーダーで建てた戸建賃貸住宅に一定期間入居すると、その後入居者に土地建物が譲渡される仕組みです。賃貸か購入かの損得勘定が先行し、本質的な住まいの選択を狭めてしまっている住宅市場に新風を吹き込む新形態ではないでしょうか。
賃貸料が月々の支払いとされるためローンを組む必要がなく、これまでローンが組みにくかった個人事業主などをはじめ、幅広い層に住宅購入の選択肢を広げたという意味でも、個人的に注目している仕組みです。
参考:
家賃が実る家(株式会社Minoru)
働く場×暮らす場
今後さらに自宅で行うワークスタイルが定着してくると、住の領域に職の領域が“間借り”するような間にあわせの考えでは追いつけなくなりそうです。
「ワークライフバランス※1」から「ワークライフインテグレーション(統合)※2」へと働き方の理想モデルがシフトしてきたように、住まいにも、働くことと住むことの統合が求められています。
※1 仕事 VS プライベートという関係が前提にあるなかで、仕事ばかりでなくプライベートの充実もめざす考え方
※2 仕事とプライベートを対立するものと捉えず、どちらも人生の一部として統合させる考え方
こちらの事例では、曖昧な境界空間の存在が、働く⇄住むという営みのスイッチを自然に切り替え、職住の領分の取り合いではなく両者を溶け込ませた理想的なインテグレーション(統合)が成立しています。
こちらは、着付け教室をもつマンションのリノベーション事例。インテリアや小物のセレクションなど、細部にまで住む人のセンスとこだわりのライフスタイルを溶け込ませながら、見事な職と住との融合が完成しています。
こだわりの独自性×戦略的な汎用性
自分だけの城づくりを極めることと、売却を見据えた万人受けする家づくりという、相反する要素をどのように昇華させるのかという課題に挑んだ事例です。
物件探しや間取り検討、建材選択など、家づくりにまつわるあらゆる構成要素を細分化して丁寧に「独自性重視」か「汎用性優先」かに振り分けることで、こだわりの自由設計と戦略的売却との両立が叶うことを実証しています。
理想の住まいを手に入れるという夢の実現を、建築費用の返済に家賃収入を充てることで叶える賃貸併用型住宅。前述の事例と同様に、多くのクリアすべき課題や確かな設計力が必要になりますが、先行きが見えにくい昨今の状況にあって、住宅の所有とストック型ビジネスの両立を図る戦略は、暮らし方の選択肢の一つとして注目が集まりそうです。
確かなプライバシー×寄り添う安心
シェアハウスやソーシャルアパートメント、テラスハウスに長屋……。集まって暮らす住まいの形態は、ますます多様化しています。それぞれの形態によって人との距離の度合いに違いはあれど、プライバシーの確保と寄り添って暮らす安心感を持ち合わせたハイブリッドな住まいは、コロナ禍で孤独の怖さに直面した際に、特にメリットを感じやすかったのではないでしょうか。
共用スペースの感染対策は大きな課題ですが、一方で、個々の建物の管理体制の実態が浮き彫りになり、改善が進む契機ととらえることもできるのではないでしょうか。
住まいの選択は一つに絞れるほど単純なものじゃないはず、と真剣に考える人ほど迷いが深くなっていくものかもしれません。だったら、いいとこ取りのハイブリッドな思考で家づくりをもっと自由に考えてみませんか?