マイホームのイメージを固め、理想の住まい像を明確にしていくために必要なのが、これから購入・リノベーションしようとする住宅は、「一体誰のためのものなのか」という視点です。
独身時代なら、自分自身にとって住みやすい立地や間取り・プランを追求すればいいでしょう。しかし結婚し、子供が生まれたら、住まいの中心は「配偶者や子供たち」へと変わっていくものです。
この記事では、ライフステージごとの特徴から、その時期ならではの留意点を考えていきます。
▽ 目次 (クリックでスクロールします)
1. シングル時代
2. 新婚・ディンクス時代
3. 出産~子供の入学前時代
4. 子供が小学校~高等学校時代
5. 子供が大学・専門学校の時代
6. 子供独立後の時代
1. シングル時代
20代~30代のシングル時代、マイホームの主役はあなた自身です。住宅ローンの低金利化により、家賃感覚のローン返済でマイホームを購入する人が増えています。
「シングル時代」のメリット・デメリット
【この時代のメリット】
①自分自身のこだわりで立地や住まいの種類、間取りや内装などを選ぶことができる
②年齢が若いことが多い分、住宅ローンの返済期間を長期に組むことができ、定年までに完済することも可能
【この時代のデメリット】
①年収が低く、貯蓄額が少ないケースが多く、そのため大型の住宅ローンを組むことが難しい
②結婚や転勤などで、将来のライフスタイルや家族構成が大きく変わる可能性がある
「シングル時代」に気を付けるべきポイント
特に注意したいのが、ライフスタイルや家族構成の変化(つまりマイホームの主役の変化)です。これらの変化に合わせて、現在の住宅を売却し、新しい住宅に住み替えることが理想ですが、立地やタイミングによっては買い換えが難しいケースも少なくありません。そのため、以下の2点に注意して、最初の住まいを選択する必要があります。
ポイント①:夫婦2人が当面暮らせるだけの広さを確保した物件であること
結婚後は共働きで得た収入を住宅ローン返済や貯蓄に回すことで、次の住まいにステップアップすることが可能になります。
ポイント②:もしもの場合、「誰かに貸せる」物件であること
特に、購入後にリノベーションを行うケースでは、間取りや内装・設備をあまり個性的にし過ぎると、借り手が限定されて、なかなか賃貸できないといったことにもなりかねません。
2. 新婚・ディンクス時代
結婚をきっかけにマイホームを購入するということは、夫婦2人がマイホームの主役になるということです。
*ディンクス(DINKS):
Double Income No Kidsの略で、子供を持たない共働きカップルを指します。
新婚・ディンクス時代のメリット・デメリット
【この時代のメリット】
①結婚当初から住宅ローン返済分を組み込んだ家計運営ができる
②年齢も比較的若いことが多いため、住宅ローンを長期に組んでも、定年前に完済することが可能。
③共働きで購入する場合は、お互いの年収を合わせる(年収合算)ことで融資可能枠が広がり、より多くの物件の中からマイホームを選択することができたり、住宅ローン返済とは別に、余裕のある家計の中から貯蓄を行うことができる
……などの恩恵を受けることができるでしょう。
【この時代のデメリット】
①将来の子供の数や教育費のかかり具合が予想しにくく、長期的なライフプランを見据えての資金計画が立てにくい
②共働きで購入しても、妻が出産や子育てのために退職して、世帯年収が変化してしまう可能性がある
……など不確定な要素が挙げられます。
新婚・ディンクス時代に気を付けるべきポイント
子供がいない時代は、とかく通勤の利便性や夫婦2人のライフスタイルを重視した住宅を選びがちです。しかし、将来家族(子供)が増えそうな人は、
ポイント①:子育てのしやすい環境か
ポイント②:家族の成長に十分対応できる広さや部屋数になっているか
も考慮して、住まいを選ぶことが重要です。
3. 出産~子供の入学前時代
この時代、住まい探しや家づくりの中心になるのが子供です。
「出産~子供の入学前時代」のメリット・デメリット
【この時代のメリット】
① 子供の数や、将来的にパートナーが仕事を続けるかどうかなどがある程度ハッキリしてくるため、マイホーム選びがしやすい
② 育児費や教育費のかかり具合を予想すれば、頭金づくりから資金(返済)計画までをかなり明確に立てることができる
③ 年齢も比較的若いことが多いため、繰り上げ返済などをしながら計画的に返済していけば、定年までに住宅ローンを完済することも可能
【この時代のデメリット】
① 子供の育児費や教育費が発生し、その後も増え続けていく
例えば共働きの場合、パートナーである妻が出産で退職すると、収入の減少、育児費の発生、ローン返済のトリプルパンチで、家計が圧迫される可能性があります。
「出産~子供の入学前時代」に気を付けるべきポイント
「子供が小学校に入学したらパートで働くから」と、妻の収入をあてにした資金(返済)計画を立てるのは、とても危険です。
仮に育児休暇を取るのなら、その間の収入減に対して「返済額が調整できる住宅ローンをあらかじめ選択しておく」などの対策が必要です。
「シングル時代」や「新婚・ディンクス時代」でも触れましたが、住宅ローンを組む場合は「定年までにローンを完済する」ことを目指すのが鉄則です。
現在のように退職金や公的年金があまり当てにならない時代にあっては、「退職金で住宅ローンを一括で返済すればいい」などと考えるのは、大変危険だといえるでしょう。
4. 子供が小学校~高等学校時代
子供の数や、それぞれの個性がハッキリしてくる時期です。
「子供が小学校~高等学校時代」のメリット・デメリット
【この時代のメリット】
・学区などの地域や住まいの間取りや部屋数など、より具体的なマイホーム選びを行うことができます。
【この時代のデメリット】
・小学校~中学校~高等学校~大学と、子供の進学に伴い教育費がピークを迎えます。
「子供が小学校~高等学校時代」に気を付けるべきポイント
無理な資金計画を立てると、家計の赤字化やローンの滞納に陥る危険性があります。
また、住宅ローンを組む時の年齢が上がるため、ローン完済の時期が遅れることになります。
しかし教育費がかさむこの時期は、貯蓄やローンの繰り上げ返済もままなりません。
この時代は特に、ある程度のゆとりを持った資金計画を立てるようにしましょう。
5. 子供が大学・専門学校の時代
残念ながら、教育費がピークを迎える大学生・短期大学生・専門学校生の時代に、マイホームを購入することはあまりすすめられません。子供が独立するまでの数年間、じっと待って、頭金づくりにはげむのが良いでしょう。
6. 子供独立後の時代
また、夫婦2人の生活が中心となる時期です。
子供独立後の時代のメリット・デメリット
【この時代のメリット】
①これまでかかった教育費を住宅ローンの返済や老後の資金づくりにシフトすることができる
②夫婦2人のシニアライフを楽しむことを目的としたマイホーム選びなら、購入予算を抑えることも可能
【この時代のデメリット】
・この時期、購入者のほとんどが40代後半~50代後半を迎えているはず。そのため、返済期間を長期に設定した住宅ローンを組むことは難しいのが現実
「子供独立後の時代」に気を付けるべきポイント
定年後も働き続けるつもりなら、年収がかなりダウンしてしまうことを想定した資金(返済)計画を立てる必要があります。
仮に子供と同居する予定があるのなら、「親子リレー返済」を選択するという方法も有効かもしれません。
今後のライフステージで起こり得ることを事前に予測し、計画を立てることが大切です。
今、購入・リノベーションしようとする住宅は、「一体誰のためのものなのか」を考え、無理なく素敵な住まいづくりを計画してください。