2024/10/21更新0like762view

著者:SUVACO編集部

専門家フィーチャー

「最後まで住まいの建築だけを手掛ける、住宅作家でありたい」(建築家:青木律典さん)

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家づくりのプロに聞きたい「10のこと」シリーズ。

今回は、東京都町田市にオフィスを構えるデザインライフ設計室の代表・青木さんに「10のこと」をお伺いしました。住宅設計にこだわり、一つひとつの家づくりの一部始終に自らが携わりたいと願う青木さんの想いとは?
家づくりへの想いと芯の強さを改めて感じることのできる青木さんの「10のこと」をお楽しみください。
(2024年10月時点での情報です)

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

Q1. 日常でふと感じる職業病(こだわりや癖)は?

Q2. 家づくりに関する知識で負けないこと、得意分野は?

Q3. 休日の過ごし方もしくは、仕事で活かせる趣味は?

Q4. 好きな設備機器や建材とその理由は?

Q5. 好きなアーティストは?

Q6. 長年の愛用品 or 仕事のお供・必需品は?

Q7. オススメの家づくり関連の書籍やウェブメディア・イベントは?

Q8. お気に入りの住宅事例は?

Q9. 素敵な出会い・忘れられないお客さまとの思い出は?

Q10. 最後に、「うちの家づくりのココがすごい!」と思うところは?

青木さんは、美しい陰影と和のエッセンスが漂うシンプルな設計が魅力の建築家。
柔かい物腰で、お客さまとの対話を楽しみながら、それとない会話の中にある潜在的なニーズを設計のアイデアとして顕在化してくれます。

Q1. 日常でふと感じる職業病(こだわりや癖)は?

主には建築ジャンルになりますが、本が好きで手にとって見たいので、新宿の紀伊國屋書店など、本屋によく行きます。棚や平台に並んでいる本が乱れている時は勝手に修正したり整えたりするので、これはクセだなぁと思います(笑)。

本への愛情や本屋さんへの感謝の気持ちで気づいたら行動しているんですが、建築をつくっていく上でも縦と横がそろっているか、整っているかどうかが気になったりするので、それに通ずるものがあるのかなと感じています。

Q2. 家づくりに関する知識で負けないこと、得意分野は?

2024年で独立して15年目になるのですが、独立当初からリノベーションと新築を並行してやってきました。

数もそれぞれに大差なく手掛けることができているので、毎回新しい発見やアイデアなども生まれてくるのですが、どちらのこともよく分かってきたかなと思います。
新築のことがリノベに、リノベのことが新築に活きることがあり、両方やってきてよかったと思うシーンがあります。

独立前は新築しか携わったことがなかったのですが、独立後の最初の案件がリノベーションでした。リノベーションはトータルの期間が短く、スピード感も大事になってくるので、経験値を詰める感じがしましたね。独立当初からいくつもリノベーションを手掛けることができたので、リノベーションの実績をつくれたことは良かったなと思います。

Q3. 休日の過ごし方もしくは、仕事で活かせる趣味は?

休みの日は、美術館や博物館、あとは作家さんの個展や、タイミングがあればオープンハウスに行ったりして過ごしています。

人がつくっているものとか作品を見て、すぐに直接的に建築に関わるかどうかは別として、そこで感じるものはたくさんあるので、それがいい意味でいずれなにかの形となって出てくると良いなと。

特定のジャンルではなく、割となんでも見たい派で、最近は東京国立博物館に「内藤礼」さんというアーティストの展覧会を見に行きました。写真家や彫刻家の方の展覧会にも行ったりするので本当にオールジャンルな感じです。創作されてるものは何でも好きで、ちょっと興味があったら行ってみようっていう感覚です。

あとは鉄道好きの息子と鉄道を使って行こうという名目で美術館なども仲良く一緒に見に行ったりしています(笑)。

Q4. 好きな設備機器や建材とその理由は?

一つにはなかなか選べないのですが、「ルイス・ポールセン」というメーカーの照明器具がとても好きで、クライアントにもおすすめしています。

そのなかでも、ペンダントライトの「トルボー」が好きです。
機能性も十二分で、形も美しく、光り方もとても綺麗なので、私が設計する空間に違和感なく馴染んでくれます。これがあることでよりその場を引き立ててくれるような雰囲気も感じられますね。

私が好きでおすすめしたものをクライアントに受け入れていただけるのは、とてもうれしいです。自分がプロダクトしたものではありませんが、双方が一緒の感覚になれた気がして。うれしい気持ちと共に、思い出にもなってくれる、そんな照明器具だなと思っています。

Q5. 好きなアーティストは?

アートディレクターの「葛西薫」さんはとにかく好きです。
ちょっと古い本ですが、葛西さんの仕事をまとめた図録をコレクションとして持っています。

サントリーのロゴや、烏龍茶や日産シーマのCMのアートディレクションなどもされていて、追いつけない遥か彼方にいらっしゃる方ですが、センスがこの上なく良いなとおこがましくも思っています。

本の装丁も手掛けられているんですが、どれもすごく美しいんです。本が好きな私は、必ず奥付(本の後ろにある、書籍のタイトルや著者名、発行日、出版社名をはじめ、書籍の基本情報が掲載されている部分)を見るのですが、知らないで手にとった本のデザインが良いなと思って見てみると、葛西さんの名前があることが多いので、葛西さんの筋が通っている作風に惹かれるところがあるなぁと思っています。

印象に残っているものを何かのタイミングで後から知ることもあって「あれも葛西さん、これも葛西さん」となってびっくりしつつも感動した記憶もあるので、一流の方はやはりすごいなぁと刺激を受けます。

Q6. 長年の愛用品 or 仕事のお供・必需品は?

ポスタルコの筆箱「ツールボックス」です。
日本のブランドですが、デザイナーはマイク・エーブルソンさんというアメリカ生まれの方で奥さんと一緒に活動されています。
私が最初に手にしたのは名刺入れでしたが、そういった文房具から始まり、今は洋服やインテリアの設計とかもされています。

この「ツールボックス」はぱっと見は財布のように見えますが、開くとふたつに分かれて自立します。仕事柄、打ち合わせや業務で絵を描いたり、図を描いたりするので筆記用具がとても多いので、どこに何が入っているか探しやすく奥にあるものも取り出しやすいので、重宝しています。現場監督さんに財布かと思ったと言われることもあるんですけど(笑)。

世の中にはたくさんの筆箱がありますが、日本のものづくりメーカーと共同して「プレスコットン」という生地製法を編み出したり、撥水加工を施してくれていたり、開き方や使い方も自身でモックアップをつくって、長い時間をかけて使ってみて、状態を確かめながら製品化していくそうです。ひとつのものをつくりあげるのに、ものすごい時間かけている。そんなお話を聞いて素晴らしいことだなとすごく共感し、愛用しています。

Q7. オススメの家づくり関連の書籍やウェブメディア・イベントは?

家づくりの本も世の中にはものすごいが数あるので、好きな本はたくさんありますが、一冊選ぶとすると、「整う住まい。 -いつも心地よく、いつまでも美しく-」という本です。

自分が好きな建築家が手掛けた家と、実際に住んでいる方たちの暮らしが見られるので、それがすごくいいなと思っています。私の設計事例も入れていただいていますが、たまたま現在進行系で設計をさせていただいてるクライアントが、参考図書としてこの本をご覧になっていたそうです。
「うちの事例も載っています」
なんて会話から、話が盛り上がったエピソードなんかもありまして。

直近で出た本ではないですが、ありがとうございますという感謝の気持ちもあって、挙げさせていただきます。

整う住まい。-いつも心地よく、いつまでも美しく- エクスナレッジ(青木さん私物)

Q8. お気に入りの住宅事例は?

一人ひとりのクライアントにストーリーがあるので、一番新しいものが、一番お気に入りっていうことになるといいなといつも思いながら設計しています。
現在の一番新しい事例を紹介させていただきます。

実は一番新しい設計が実家の建て替えで、これがなかなか大変でした。
幼少期に私も住んでいた築47年になる大手ハウスメーカーが建てたもので、始めはリフォームをしようと話をしていました。

お風呂の入れ替えなどリフォームはしていましたが、床がベコベコで抜けそうなところがあったり、もう限界となってきて全体的にリフォームをしようかという話になりました。
そうは言っても、本当に古くて、この先家族が引き継ぐにしても、ちょっとこの建物を活かすのは難しいんじゃないか。という話にもなり、建て替えをする方向になりました。

クライアントは両親なので性格はよく知っています。
建築に一切興味のない人たちなんですよ。
建築の知識が少ないことは、普段対応しているクライアントの方々も同じですが、ほとんどの場合は建築に興味があって、建築家と一緒に家を建てたいと思って来られるので、まずその前提が全然違っていました。建築に興味やモチベーションが上がっていない状態の人と家づくりをすることがこんなに大変なんだと本当に実感しましたね。

もちろん、これは親子という関係性もありますが、なかなか思うように進まないこともあって、途中で二回くらいもう辞めるからほかの方に頼んだら?って私も言ってしまったりして…。そこから何とか乗り越えて、とってもいい家ができたので、あんなに揉めたのはなんだったんだろうなという感じでした(笑)。

実際に両親たちも住み始めたら、すごく喜んでくれて「本当にこの家ができてよかった。」と帰るたびに言ってくれるので、途中で諦めないで良かったと思っています。
とはいえ、親子なので遠慮がまったくなく、罵倒されるようなこともたくさんあったので…私としては今までで一番難しいクライアントでしたね(笑)。でもそんなことがありながらもまた一つ経験値を得ることができたので、どんなクライアントが来ても乗り越えられるのではないかという気持ちにもなりました。

この業界では、初めは実家や親類の家などで実績をつくる方々も多いと思いますが、私はそういったところを通らずに来たので、今までに関わらせていただいたクライアントの方々とのご縁はすごく恵まれていたんだなと感じることができる貴重な経験になりました。

Q9. 素敵な出会い・忘れられないお客さまとの思い出は?

先ほどの話も忘れられないクライアントですが、こっちはポジティブなエピソードにしますね(笑)。

現在は長野県に住んでいる、器(うつわ)作家の方なんですが、今までに三度の依頼を受けているという稀なケースのお話です。

思い返すと小田急線の沿線にある団地のリノベーションをさせていただいた当時から、いずれは長野に移住したいと思っていると仰っていました。

ご主人はもう少し環境のいいところで創作活動をしたいと思われていましたが、奥さんはその団地の別棟にご実家もあり、慣れ親しんだ地なので、あんまり遠くに行きたくないという思いもありました。

一度目はその団地をリノベーションさせていただいて、数年住まわれたのち、ある時に移住する決断をされて、候補の土地が2つあるので見に行ってくれないかと相談をいただきました。そのうちの一つが八ヶ岳に向かって傾斜している土地で、長野は水がとても綺麗で、近隣に研究施設や工場などもあってインフラが整備されていました。傾斜地ですが、建てやすいのではないかという話になり、その土地を購入されて、新築を建てるお手伝いをさせていただきました。

さらに今この土地の一角に3軒目として、「はなれ」の小屋を建てています。
計三度に渡る設計のご依頼をいただいたことは、本当に稀なことだなと思っていますので、すごく感謝しています。

考えようによっては、二度目は別の方に依頼することもできると思うのですが、また声をかけてくださり、このように今でもお付き合いがつながっているっていうのは非常にありがたくて、感謝してもしきれない気持ちでいっぱいで本当に忘れられないクライアントです。

Q10. 最後に、「うちの家づくりのココがすごい!」と思うところは?

私の場合は、住宅作家として最後までやりたいと思っているので、ホームページでは、住宅設計に特化した設計事務所であることを発信しています。

また、ご相談を受けられる件数は年間で6件ぐらいと考えています。
場合によってはお待ちいただくこともありますが、できる範囲の件数をしかも住宅だけをずっと手掛けていきたいと思っています。

建築家の設計監理業務って直接の打ち合わせや現場に関わる時間ですとか、手間ですとか、そういうものは割と多いんですね。忙しい設計事務所では、ボスが関われるのは本当にわずかで、務めているスタッフの方が窓口含めて関わることも多いです。もちろんそれでもいいものはできると思いますが、私自身は直接、始めから終わりまで全てきっちり見ていきたいと思ってます。

そのため、対応できる件数は限られてしまいますが、手を抜かずにずっとやり続けるっていうところがうちの強み、特徴かなというふうに思います。
過去にも3社ほどの建築家で悩まれていたクライアントが「青木さんは全部自分で見てくれることが、安心感を持てるのでお願いしようと思います。」と言ってくださいました。
その時、この想いを貫くことは間違っていなかったのだなと感じました。

取材時の様子。デザインライフ設計室の事務所にて

対応業務 注文住宅、リノベーション (戸建、マンション)
所在地 東京都町田市
主な対応エリア 埼玉県 / 千葉県 / 東京都 / 神奈川県
目安の金額

30坪 新築一戸建て3,900〜5,400万円

60平米 フルリノベ1,620〜2,220万円

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