中心部を外れ住宅街のある周辺を歩いていると、レンガ造りの家屋が軒を連ねるのが見えるロンドン。映画や雑誌などでもおなじみの街並みだ。曇天でも美しく感じられるそんな風景だが、実はある時までそのほとんどが木造だった。あることがきっかけでレンガ造りに生まれ変わったという。その真相とは。
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350年前に激変したロンドンの街並み
ロンドン大火とは
反省を生かしたロンドンの都市計画
時代によりデザイン・スタイルが変化していったロンドンの住宅
350年前に激変したロンドンの街並み
ヨーロッパの街並みというと思い浮かぶのが、石畳の道にレンガ造りの家々といったところだろうか。僕が住んでいるロンドンも、金融街のある中心部から離れると赤いレンガの住居が立ち並ぶ。高台からこれを望むと、ふだん見慣れた風景もそれはそれは美しく映るのだから不思議なものだ。しかしながら、最近になってこうしたイメージ通りの景色が昔からのものではないと知って驚いた。どういうことか。話はおよそ350年前にさかのぼるーー。
ロンドン大火とは
1666年と聞いてピンとくる人は生粋のロンドナーだ。実は、この年の9月2日にロンドンで歴史に残る大火事が起きた。テムズ河北岸、観光名所としても名高いセントポール寺院とロンドン塔の間にある小道プディング・レーンのパン屋が火元だった。火は4日間に渡って燃え続け、鎮火した頃にはロンドン・シティのほとんどが灰と化していたそうだからその被害は想像してあまりある。死傷者はそれほどなかったと言われているが、この大火事にどれほどの人々の日常が悲劇に見舞われただろうか。
反省を生かしたロンドンの都市計画
それにしてもいくら中世のこととはいえ、どうしてそれほどの長いあいだ火の勢いが止まらなかったのか。多くの人が疑問に思うところだが、理由は簡単だ。当時の建物のほとんどが、なんと木造だったというのだ(当時のセントポール寺院でさえも!)。おまけに住居は所狭しとびっしり建てられていたようだから無理はない。お分かりの通り、これに反省をして、ロンドンではレンガ造りの家が一般的になったようだ。否、法律によってレンガ造りもしくは石造りに限定されたという方が正しいかもしれない。狭かった道幅も、この時の「再建法」(Rebuilding of London Act 1667)によって改善された。ちなみにこの法律による新しい都市計画に尽力したのがクリストファー・レンという(イギリスでは)有名な建築家で、焼失したセントポール寺院も彼によって再建された。
最初にこの話を聞いたときはかなり昔のこととはいえとても心が痛んだ。一方、以前のロンドンの家屋が木造だったと聞いて、なんとなく親近感が湧いたのも事実だ。もし大火事がなかったら今のロンドンはどんなだろうか。少し日本の家屋と似ているところがあったかもしれない。想像が想像を呼んで、今、自分が住むフラットに畳が敷かれているイメージまで頭の中を去来した。そんなことはありえないのだけれど。
時代によりデザイン・スタイルが変化していったロンドンの住宅
閑話休題。大火後のロンドン(あるいはイギリス全土)の家屋には時代ごとにおなじみのスタイルが存在する。1700年代前半から1800年代初頭にかけてはジョージアン様式。1800年代前半ごろから1900年ごろまでがヴィクトリアン様式。それからその後の短い期間にはエドワーディアン様式と続く。(詳細は以下の記事に詳しいので興味のある方はぜひご一読を!)
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各スタイルにはそれぞれに特徴があってとても興味深いのだが、先日そんな話をロンドン歴40年のご婦人としていたら面白いことを教えてくれた。ロンドンのレンガ造りの家は上述の3つの様式にざっくりと分けられるが、僕みたいにロンドン初心者でも外から様式が簡単に見分けられる方法があるという。
ジョージアン様式は「階が上がるにつれて窓が小さくなっている」のが特徴、ヴィクトリアン様式は「張出し窓で、玄関や窓のステンドグラス」が特徴だという。エドワーディアン様式は「少し狭く、屋根もやや急」と付け加えていたが、これについてはややお茶を濁していた(笑)
いずれにせよロンドンの街を散歩する楽しみが増えて、今、ちょっとうれしい。
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