一日の中に四季があるともいわれるイギリス。だからこそ、庭が作り出す表情も一年を通して豊かなのかもしれません。そういったわけで老いも若きも庭いじりには目がないのですが、今回はロンドンで見つけた人気の園芸店を紹介します。住宅街の中にひっそりとある、いうなれば「隠れ植物園」ともいえる場所です。
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イギリスでは、一日の中に四季がある
イギリスで一句
植物園のような園芸店
やっぱり紅茶が飲みたい
イギリスでは、一日の中に四季がある
6月下旬には気温が30度近くになる日もあり、今年の夏は暑いかな、と勝手に想像した自分が悪かった。この原稿を書いている7月下旬の今、ロンドンの気温は16度。昼の12時である。とにかく寒い。出がけに長袖一枚だったが、引き返してジャケットを引っ張り出したくらい。昨日なんてダウンジャケットを着ている人を3人も見た。Tシャツだけの人も何人も見たけど。まあ、これがロンドンだ。8月を目前に控えようが寒い時は寒いし、寒くたって平気な人は平気。「一日の中に四季がある」とはこの街を指してよく使われる言葉だけれど、決して大げさな表現ではないと思う。
とはいえ、ポジティブに考えれば「いつでも四季を感じられる」なんてこれほど素敵なこともない。でも雨ばっかり降っているんでしょ、という御仁にも先に一言申し上げておきたい。実は、ロンドンの降水量は東京の半分にも満たないのです!実際住んでいてもまたかと思うことはあるが、ほとんどがシャワーと呼ばれるにわか雨。小雨だから、慣れれば傘もいらない。これは本当の話。
で、なにもイギリス人は「天気」ばかりに四季を感じているわけではない、というのが僕の見立てだ。それでは四季はどこにあるか――。家の中にあるのである。
イギリスで一句
家の中にあるといっても、リビングルームにあるという話ではない。最近、ご近所の家の庭で過ごすことが増えたのだが、ここの庭を見ているとイギリスの四季は「自宅の庭にある」と心から感じる。春先から様々な花が咲き始め、1~2週間ごとに違った色彩が目に飛び込んでくる。これがもう風流で風流で。それだけに止まらない。どこからともなく小鳥が飛んできてしばらくエサをついばんでから立ち去る風景も心を和ませる。ある日なんて、毛虫が緑を食んでいる様子を10分ぐらいじっと眺めている自分に気づいて思わず苦笑いしたものだ。イギリスなのに、小林一茶よろしく一句読みたくなる瞬間だった。
植物園のような園芸店
すっかり庭で過ごすことに幸せを感じるようになった最近、休日にぶらぶらロンドンを散歩していると、閑静な住宅街に素敵な園芸店を見つけた。「クリフトン・ナーシリーズ(Clifton Nurseries)」という、知る人ぞ知るガーデニング専門の店だ。
看板の出ている大通りから細い小道を奥に進むと、まるでここは植物園かと見まがうほど様々な花がところせましと並んでいる。うん、これは写真を撮りたくなる。
創業は1851年までさかのぼるという。やはり、この国のガーデニングの歴史は深い。一時期はロスチャイルド家の一人、ジェイコブ・ロスチャイルド氏によって所有されていたが、現在はGavin Jones Ltdという造園業を営む英国企業の傘下に入っている。見ての通り雰囲気がよく、僕の感じたところでいうと高級志向。庶民的とは決して言えないが、いわゆるこれが「イギリス的」な造園なのだろうと感動する風景だ。
ちなみに盆栽もあった。単なるガーデニングショップではない。
やっぱり紅茶が飲みたい
さて、ガーデニングでもやっぱり大切にしたいのがティータイムだ。この「クリフトン・ナーシリーズ」に併設されているカフェスペースは特筆すべき場所だと思う。温室風の空間にジャズが流れる。僕はこの時、キャロットケーキをいただいたが格別おいしかった。
家であろうが外であろうがこうして緑を愛でながら過ごす午後は至福のときだ。英国で感じる「一日の四季」は特別なものだし、そのための場所はやっぱり「庭」が一番だろうと思う。