家づくりの学び舎

2023/09/22更新1like3233view

著者:SUVACO編集部

事前に知っておくべきマンションリノベの注意点(床・天井・水回りetc.)

集合住宅であるマンションには専有部と共有部があり、全てを思いのままにアレンジすることはできません。
ここでは、マンションの床や天井の工法、水回りから共用部などに至るまでの知っておくべき「マンションリノベの注意点」を解説していきます。

今、住んでいるマンションやこれからマンションを購入してリノベーションをする際に、これを知っておくとできること・できないことが見えて、より具体的な要望を検討できるようになります。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

▼記事監修

竹村

竹村

SUVACOアドバイザー

SUVACO専任アドバイザーとして、戸建て・マンション問わず幅広いお客様の専門家紹介を担当しています。お客様と専門家をつなげるサポートの中で、お客様のニーズ、専門家の最新情報をアップデートし、「役立つ情報」をお届けしています。

1. 床の工法を理解しておこう

マンションではほとんどの場合、1階などの例外を除いて、管理組合で防音規定が定められています。その規定に沿った床の工法として「二重床工法」もしくは「直床工法」で納めます。

二重床工法とは

「二重床工法」とは、コンクリートスラブ(躯体)に防振ゴムのついた高さ調整のできるアジャスターを立て、その上にパーティクルボードや合板などの下地材を敷き、フローリングなどを貼って床を仕上げる工法です。

基本的に防振ゴムで防音規定をクリアすることができるため、仕上げには無垢材を含めて素材の選択肢が広くなります。
二重床の納まりイメージ。防振ゴムで防音規定をクリアするので、仕上げの床材は好きなものを選べる

二重床の納まりイメージ。防振ゴムで防音規定をクリアするので、仕上げの床材は好きなものを選べる

竹村

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二重床の場合、床のコンクリートスラブと下地材の間に防振アジャスターを用いて隙間をつくることで、給水管や給湯管などを通すことができます。そのため、排水の経路を考慮しながら、場合によっては水回り機器の移設が可能になります。

直床工法とは

「直床工法」とは、コンクリートスラブに直接防音性のある床材を施工する方法になります。
二重床に比べ、コンクリートスラブから仕上げのフローリングまでに隙間がないため、その分の天井が高くなるメリットがあります。
しかし、床材がフローリングの場合は裏面に衝撃を和らげる緩衝材がついているものを選ぶ必要があり、物によってはフカフカするような踏み心地となりやすいです。事前に提案された商品がどういった体感になるのかを確認することが賢明です。
直床の納まりイメージ。防音フローリングなど、裏にクッションがついたフワフワする素材が多いため、事前確認がおすすめ

直床の納まりイメージ。防音フローリングなど、裏にクッションがついたフワフワする素材が多いため、事前確認がおすすめ

竹村

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既存が直床工法でも、二重床工法を取り入れ床下に配管を通すことで、水回り移設が可能にできる場合があります。さらに防音性能が確保できれば、床材の選択肢の幅が広がります。
しかし、床を上げすぎると玄関との段差が大きくなったり、リビングからバルコニーに出る掃き出しサッシが低い位置になったりと、仕上がりのイメージが大きく変わることも。事前に確認してしっかりと検討しましょう!

2. 天井の工法も理解しておこう

床に「二重床」と「直床」があるように、天井の作り方にも「二重天井納め」と「直天井納め」があります。

二重天井納めとは

「二重天井納め」とは、天井のコンクリートスラブから吊り下げ天井などを用いて、天井と躯体の間に隙間を取る工法です。

その隙間から、電気の配線や換気設備のダクトを通すことができます。照明器具などを設置したい位置へレイアウトがしやすく、配線やダクトが剥き出しにならずにすっきりと納められるのがメリットです。下地材で使う石膏ボードを二重貼りにすることで階上からの遮音性を高めることもできます。

一方で、天井のコンクリートスラブより下がったところに天井ができるため、天井高を希望する場合には不向きです。
二重天井の断面イメージ。作った天井の内部に配線やダクト配管などが通っていることが分かる

二重天井の断面イメージ。作った天井の内部に配線やダクト配管などが通っていることが分かる

直天井納めとは

「直天井納め」とは、天井のコンクリートスラブに直接壁紙を貼ったり、塗装して納める方法になります。最大限の天井高を実現できる点がメリットです。天井スラブを「現(あらわ)し」にして、無骨なテイストを体現することもできます。

しかし、電気の配線や換気設備のダクトなどが剥き出しになるため、デザインやテイストの好みが分かれることと、置きたい位置への照明の移設ができない可能性があります。また、センスよく配線をまとめて経路を考える必要があったり、管材に配線を通すなどの工夫が必要となる点が懸念としてあげられます。

3. 水回り工事の注意点

水回り(キッチンや浴室、洗面台、トイレなど)の向きや位置を変える場合、給排水管の経路や勾配を取れるかを見る必要があります。

排水の勾配によって水回りの位置を変更ができる範囲が異なる

マンションのリノベーションで水回りの位置を変更する場合、床下や壁内に給水管や給湯管を通す隙間があれば動かすことは可能です。しかし、排水管に関しては注意が必要です。

キッチンや洗面台、浴室などの生活雑排水は1mに対して5mm、トイレなど汚水の場合は1mに対して1cmの勾配を取らなければならない決まりがあります。

勾配が適正に取れない場合や逆勾配の場合、水の流れが悪くなり、詰まりの原因となる可能性があります。水回りの移設を考える場合には、無理のない排水計画が可能かどうかを依頼する会社としっかり確認しましょう。

築年数の古い建物は配管の漏水に注意

築35年以上の物件の場合、配管(給水・給湯管、排水管など)には鋼管(こうかん)や銅管を取り入れているケースが多いです。そのため、リノベーションまでの間に交換されていなければ劣化している可能性が高いです。暮らし始めてからの水漏れなどのトラブルを回避するため、リノベーションの際に合わせて交換することをおすすめします。
竹村

竹村

SUVACOアドバイザー

現在はリノベーションで配管を交換する場合、給水管と給湯管は漏水リスクが限りなく少ない「架橋ポリエチレン管」を使用することが多いです。

曲がる配管なので取り回しがしやすく耐食性や耐塩素性にも優れているため、配管の周りへの被覆も備わった万能な配管材です。
給水管は青、給湯管はピンクやオレンジで着色されていて見分けもつきやすくなっています。
ヘッダー配管のイメージ。配管のつなぎ箇所を集約することでメンテナンス性にも優れている

ヘッダー配管のイメージ。配管のつなぎ箇所を集約することでメンテナンス性にも優れている

追い焚き機能の設置の可否

築年数の古い物件や、団地タイプのマンションなど、既存の浴室がタイル貼りで既製サイズのユニットバスが入れられない物件などは追い焚き(浴槽のお湯を温め直す機能)の配管が通せない物件があるため注意が必要です。

4. 電気の容量

既存の契約アンペア数で足りない場合、アンペア数を上げるよう電力会社に依頼できます。しかし、マンション1室に対して上げられる最大アンペア数が決まっているので注意が必要です。

物件によっては分電盤(電気ブレーカー)に記載されている場合もありますが、わからない時は管理組合に確認しましょう。

5. エアコンの設置

エアコンを交換する場合、新しいエアコンが幅や奥行き、高さなど取り付ける壁に対して余裕があるのか確認をする必要があります。一方、エアコンがない部屋に新しく設置をする場合は、

・ドレン配管用の穴があいているか
・室外機の設置スペースは十分か
・エアコン専用のコンセントは設置できるか

などの確認が必要です。

6. 梁について

マンションの構造にも種類があり、「ラーメン構造」のような壁と天井を支える鉄筋コンクリート造の梁は抜くことができません。

(参考)
マンションの構造の種類と特徴、メリット・デメリット(ラーメン構造・壁式構造)

換気扇のダクトが梁と干渉することも

キッチンやお風呂、トイレなど換気扇のある場所を変える場合、排気は外部のガラリ(排気口)までの経路を確保する必要があります。マンションによって部屋の中央やダクトの経路上に構造体となる梁が通っている場合があります。

構造体の梁は壊すことはできないため、ダクト用に改めて梁を造作する必要があります。梁せい(梁の高さ)がある場合はさらにその下にダクト配管を通すため、天井高がかなり低くなる可能性があるため注意が必要です。

7. 共用部について

マンションの管理規約によっては、専有部と呼ばれる個々に所有権がある室内においても共有部として扱われる部分があります。

サッシ

築古のマンションの場合は、カバー工法という方法で交換の許可が出るところもありますが、原則サッシは共有部分の扱いとなります。ほとんどの場合、窓枠やサッシ本体の交換はできません。
竹村

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これまで見てきたマンションには、窓ガラスの交換を許可している物件や、大規模修繕のタイミングでガラスをペアガラスに交換したり、近隣の騒音問題でインナーサッシを入れたマンションもありました。

マンションリノベーションでは、管理組合へ工事申請を行うことになります。必ず事前に確認をとるようにしましょう!

玄関ドア

玄関ドアもサッシと同様に共有部分と判断されます。
簡単に交換や塗装ができない場合もありますので注意が必要です。

バルコニー

バルコニーも共有部分と判定されることが多いです。
バルコニーは定期的に防水処理や大規模修繕で防水工事が行われる可能性があります。
むやみに床などにタイルを貼ったり、ウッドデッキの敷設時にビスを使用することはできません。

置くタイプのデッキタイルを用いるなど工夫し、取り外しができるようにしておきましょう。
竹村

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バルコニーの手すりに鳥よけネットなど付ける場合も、管理組合に問題ないかどうかは確認が必要です!

マンションによっては提携業者がいる場合もありますので、事前に相談しましょう。

集合住宅用インターホン設備

玄関前のインターホンやエントランスにオートロックが設置されているマンションの場合、集合住宅用の設備が室内についている可能性があります。
管理組合や消防などにもつながっている場合もあるため、無断で移設をすることができません。むやみに切断すると出動要請がかかったりしてしまうことも…。

事前に管理会社へ移設や交換が可能か、交換したい場合には出入りのメンテナンス業者を確認した上で、リノベーション工事とは別に対応してもらうようにしましょう。
竹村

竹村

これまでにお客様からのご相談や経験から、マンションのリノベーションの注意点をいろいろ挙げてみました。
お住まいのマンションやこれから購入されるマンションがすべてが該当するわけではありません。

リノベーションを依頼する会社はもちろん、ご自身でも管理組合などに確認して納得できるプランを取り入れられるよう参考にしてください。

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