家づくりの学び舎

2019/11/30更新1like4280view

著者:岩間光佐子

断熱材の基礎知識|施主として知っておきたい種類と特徴

この記事を書いた人

岩間光佐子さん

ハウスメーカーでのインテリア設計を経て、住宅情報誌編集部に。編集長として、リフォーム誌などの創刊に携わった後、フリーエディター&ライターとして独立。住宅設備機器を中心として、家づくり情報を発信中。二級建築士、インテリアコーディネーター

住まいの快適性を左右する断熱材には、いくつかの種類があります。断熱材選びには専門的な知識が必要ですし、家づくりを進める際には、施工方法などとともに、担当者の提案から検討することになるでしょう。ここでは、施主として知っておきたい断熱材の基礎知識をご紹介します。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

居心地のよい住まいは断熱が重要

居心地のよい住まいを実現するためには、間取りやインテリアなどだけでなく、住まいの性能、特に断熱性に配慮することは大切なポイントです。

住まいの断熱とは、外部の熱や冷気が、躯体(くたい)はもちろん窓や扉といった開口部などを伝わって出入りするのを抑えること。冬の冷たい空気の侵入はもちろん、夏の暑い空気の侵入を防ぐことで、家全体の温度差を減少させ、快適な室内環境を実現することが可能です。同時に、断熱性を高めることで、結露を防ぎ建物躯体の耐久性も向上しますし、冷暖房など無駄なエネルギー消費を減らすこともできるでしょう。

断熱材と断熱開口部材が断熱性を高めるポイント

新築やリフォームを進める中では、断熱性に関しては、施工会社や担当者からの提案内容を確認し、検討することになるでしょう。断熱材やその施工方法などは、専門的で難しい面もありますが、施主として基本的なことは理解し、提案された手法の特徴やメリット・デメリットなど、しっかりと説明を受けることが大切です。

断熱性能の高い住宅をつくるためには、壁や天井、床などに施工される「断熱材」、窓や扉といった開口部に用いる「断熱開口部材」などを用いて家全体を包むことが重要です。外壁だけでなく、天井(小屋裏がない場合は屋根)や床も断熱施工が必要ですし、窓や扉などの開口部にも断熱建材を用いることが断熱工事の基本となります。
断熱材の種類や施工方法など、あらかじめ説明を受けておきたい。 (写真はイメージ)

断熱材の種類や施工方法など、あらかじめ説明を受けておきたい。 (写真はイメージ)

断熱材は素材や商品などさまざまな種類が揃う

断熱材とは、熱が伝わりにくい空気を閉じ込めることで断熱効果を持たせたもの。壁や天井、床などに施工される断熱材は、繊維を用いて空気を動かないようにしたり、空気を小さな粒状にするなどの工夫を施した建材です。これらの断熱材には、いくつかの種類、分類方法があります。

素材で分けると、大きく「繊維系」と「発泡プラスチック系」があり、それぞれにいくつかの種類がみられます。その他、天然素材を取り入れたものとして、ウール(羊毛)や炭化コルクなども提案されています。また、建材としての形状で分類すると、「フェルト状」「ボード状」「ばら状」「現場発泡」などがあります。

主な断熱材の種類と特徴

■繊維系断熱材
細い繊維と繊維の間に閉じ込めた空気の層が断熱性能を発揮するもの。耐火性や遮音性にも優れているのが特徴で、広く用いられている断熱材です。無機質繊維系と木質繊維系に分かれ、その中にもいくつかの種類があります。
繊維系断熱材の例

繊維系断熱材の例

<無機質繊維系> 
・グラスウール 
ガラスを高温で溶かした細いガラス繊維を加工したもの。床・壁・天井などに用いることができる軽くて施工しやすい断熱材です。吸音性や耐久性、防虫・防カビ性にも優れ、素材そのものが不燃材料であり、比較的安価。最も普及している住宅用の断熱材といえるでしょう。厚さがあり、密度が高いほど断熱性能は高まります。

・ロックウール
耐熱性に優れた鉱物を溶かし繊維状にした断熱材として広く用いられています。防火・耐熱性、撥水性、耐久性、防音・吸音性に優れ、床・壁・天井などに使用されます。比較的安価。充填(じゅうてん)、外張り、吹込みなどの工法に適した製品も揃っています。

<木質繊維系>
・セルローズファイバー
天然木質繊維(新聞古紙など)を用いた断熱材。湿気を吸収、放出する機能をもつ木質繊維です。耐火、撥水防カビ性能を持ち吸音性にも優れます。綿状にしたファイバーを吹き込んだり、吹き付けるなどして施工します。

・インシュレーションボード
木材の繊維質をボード状に加工したタイプ。リサイクル木材や未利用木材などが用いられています。調湿、透湿、吸音性などを持ち、軽量で加工しやすいのが特徴です。下地材などに使用されることもあります。
■発泡プラスチック系断熱材  
軽量で、吸水性が小さく、断熱性に優れているのが発泡プラスチック系断熱材。一般的に繊維系と比べるとコストは高めになるでしょう。
発泡プラスチック系断熱材の例

発泡プラスチック系断熱材の例

・ビーズ法ポリスチレンフォーム
ポリスチレン樹脂に発泡剤などを加えてビーズ状にしたものを発泡させた断熱材。ひとつひとつの粒の中に気泡を持つため、水や湿気に強く、軽量。加工性や施工性に優れているのも特徴です。

・押出法ポリスチレンフォーム
ポリスチレン樹脂などに、難燃剤や発泡剤を混ぜ、押し出しながら成形した薄い板状の断熱材。水に強く、耐吸湿性も優れ、外張り断熱にも適しています。

・硬質ウレタンフォーム
細かい独立気泡構造の断熱材。住宅用断熱材として広く用いられています。微細な独立気泡構造のため、断熱性も優れており、ボード状だけでなく現場で直接吹き付けるタイプも。外張り断熱で用いられる建材です。

・フェノールフォーム
フェノール樹脂に発泡剤などを加えてボード状にしたもの。耐候性が高いので長期間にわたっての断熱性能が期待でき、耐熱性や防火性に優れている断熱材。加工しやすいのも特徴です。

断熱材の施工方法の種類

断熱材の施工方法には、いくつかの方法があり、また併用するケースもみられます。

■充填(じゅうてん)断熱工法
建物の柱と柱の間、壁の内側に、ボード・パネル状、シート状の断熱材を入れたり、断熱材を機械で吹きこむ工法。木造戸建て住宅では、最も広く用いられています。比較的施工価格が安価なこと、用いることができる素材の種類が多いこと、外壁仕上げ材に影響しないことなどがメリットでしょう。主にグラスウール、ロックウールなど繊維系断熱材を用いますが、発泡プラスチック系を使用することもあります。

吹き込みの場合は、ばら状の断熱材を天井裏や壁の空間、床下などに専用の機械(吹込み装置)を用いて断熱層を形成させます。メリットは、新築でも増改築でも、障害物の多い部位にも隙間なく充填できること、専門の施工業者によって均一な断熱層が形成できることなど。グラスウール、セルローズファイバーなどを用います。

■外張り断熱工法  
建物の構造躯体(柱や間柱など)の外側にボード状の断熱材をはりめぐらせる工法。家全体を断熱材で覆うため、熱ロスを防ぐことができるので、断熱・気密性能も高くなります。比較的施工コストが高く、壁に厚みが増すことで狭小敷地では難しい場合も。ボード状の発泡プラスチック系を主に用いますが、ボード状の繊維系を使用する場合もあります。
新築工事では、比較的早い段階で断熱材が施工される。現場で確認しておきたい。(写真はイメージ)

新築工事では、比較的早い段階で断熱材が施工される。現場で確認しておきたい。(写真はイメージ)

断熱材には多くの種類があり、施工方法もさまざまです。検討する際に注意しておきたいのは、断熱材そのものの素材単体だけでは、性能の良し悪しを決めることは難しい、ということ。断熱材の決められた施工方法に則って、適正な工事を行えば、基本的には断熱効果を得ることができます。

素材によって、施工のしやすさやしにくさはありますし、断熱する部位によっては優劣がある場合も。また、使う断熱材によっては、防湿気密層、通気層などが必要なこともあります。大切なのは、床・壁・天井などに隙間なく、正しい施工方法で工事を行うこと。施工技術が確かなことも重要です。

また、地域の気候風土や建物の立地条件によって、適する断熱材や施工方法は異なりますし、建物の構造や工法によって違ってくるということも理解しておきたいポイントです。ただ、実際には、同じ条件だとしても、住宅メーカーや工務店によっても提案する断熱方法が異なることもありますし、得意不得意もあるかもしれません。施主としては、提案された断熱材の特徴や選択理由、工事内容などを確認し、費用も含め、しっかりとした説明を求めること。現場や工場見学会などを利用して、使用される素材、施工方法などを確認してもいいでしょう。
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岩間光佐子さん

ハウスメーカーでのインテリア設計を経て、住宅情報誌編集部に。編集長として、リフォーム誌などの創刊に携わった後、フリーエディター&ライターとして独立。住宅設備機器を中心として、家づくり情報を発信中。二級建築士、インテリアコーディネーター

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