家づくりの学び舎

2022/11/17更新0like1987view

著者:前川 ミチコ

「高気密・高断熱」のメリットは?それぞれの違いと快適な住まいを建てるための基礎知識

この記事を書いた人

前川 ミチコさん

住宅情報誌の広告制作・編集を経て、フリーエディター&ライターに。家づくりやリフォームなど住まい・暮らし系全般、結婚式準備から新生活までブライダル系全般のほか、妊娠・出産・育児中の暮らし、愛犬との暮らしや旅行などに役立つ情報を発信しています。

家を建てるとき、「夏は涼しく、冬は暖かい家にしたい」と考える人は多いでしょう。そのためには「高気密・高断熱」の家にする必要がありますが、具体的に何をどうすれば気密性・断熱性を高められるのかわからないという声も。ここでは、高気密・高断熱の基本を解説します。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

高気密・高断熱の家を建てるメリット

外から空気が入ってくること、中の空気が外へ出ていくことを防ぐ、高気密・高断熱の家。外気温に左右されにくく、室温を一定に保ちやすくなるのをはじめ、次のようなメリットがあります。

●夏は涼しく冬は暖かく
暑い外気が入りにくく、暖めた室内の空気が出ていきにくいので、夏も冬も快適に暮らせます。

●部屋ごとの温度差を少なく
家中の温度を一定に保ちやすく快適。急激な温度変化で心臓や血管に負担のかかるヒートショックも防げます。

●冷暖房コストを抑えて省エネに
冷暖房の効率を高め、冷暖房にかかる電気代などを抑えることができます。

●遮音性が高くなる
空気はもちろん、音も遮断されます。外からの騒音が聞こえにくくなり、室内の音も外に漏れにくくなります。


このように、快適・健康・省エネとメリットがたくさんある、高気密・高断熱の家。24時間換気システムの設置が義務付けられているため、密閉状態でも常にきれいな空気を取り込むこともできます。

ただし、気密性・断熱性を高めようとすると、建築コストにも影響するため、どのレベルの性能を求めるかが重要に。これ以降で詳しく解説していきます。

「高気密」「高断熱」それぞれの違いは?

「高気密・高断熱」はセットで考える必要があり、これらの用語もセットで使われることが多いですが、それぞれに違いがあります。

「高気密」の家:隙間をできるだけなくした家

家の壁、床、天井、窓枠などには隙間があり、そこから空気が出入りします。この隙間が多いと、外が寒いと室内も寒くなるといった、外気温に影響されやすい状態に。そこで、この隙間をできるだけなくして密閉状態に近づけることが「高気密」にするということです。

「高断熱」の家:外の寒さ・暑さを遮断する家

家の壁や窓などが外気によって冷やされたり、日射によって温められたりすると、その影響を受けて室温もアップダウンしてしまいます。そこで、壁・床・天井などに断熱材を入れ、断熱性の高いサッシを使うことで、外気の寒さ・暑さが家に伝わりにくくすることが「高断熱」にするということです。
どんなに家の隙間が少ない「高気密」の状態をつくっても、壁や窓からの熱や冷気が伝わりにくい「高断熱」の状態でなければ、効果は発揮できません。つまり、高気密・高断熱はセットで考えなければならないというわけです。

C値・Q値・UA値とは?

高気密・高断熱の性能を客観的に比較するとき、よく見るのが「C値」「Q値」「UA値」という数値。どれも数値が小さいほど高性能とされています。


●C値:気密性能を表す
C値 = 建物全体の隙間の面積 ÷ 延床面積
隙間が小さいほど気密性が高いということを示しており、C値は1.0以下なら高気密とされています。

●Q値:断熱性能を表す
Q値 = (建物各部から逃げる熱量 + 換気で失う熱量) ÷ 延床面積
逃げる熱量が小さいほど断熱性が高いということを示しており、Q値は1.6以下なら高断熱とされています。

●UA値:断熱性能を表す
UA値 = 建物各部から逃げる熱量 ÷ 建物の表面積
Q値と同様、断熱性能を示す数値ですが、こちらは建物の大きさなどに左右されません。ただし、換気で失う熱量が考慮されないという面があるので、どちらもチェックするとより安心です。


ただし、C値は公表していない建築会社が多いことと、公表されているのと同じ数値で建てられるとは限らないこともあることを知っておきましょう。

断熱工法は「外断熱」「内断熱」の主に2種類

断熱工法には、大きく分けて「外断熱」と「内断熱」の2種類があります。それぞれにメリットがあるので知っておきましょう。


●外断熱(外張り断熱工法)
家全体を外からすっぽりと断熱材で包むような形での断熱工法。断熱性は高く、気密性もアップしますが、内断熱と比べてコストがかかること、外壁が厚くなって家のデザインに制約が出ることなどに注意が必要です。

●内断熱(充填断熱工法)
家の中に断熱材を充填する断熱工法。部分的に断熱材を使用するので、外断熱に比べて建築コストを抑えることができます。外壁も厚くならず、狭小敷地などでも建てやすいのが特徴。ただし、気密性はやや低くなります。


建築会社ごとに得意とする断熱工法があり、それ以外には対応していないケースも多いので、建築会社を選ぶ前に検討しておきましょう。

断熱材にもさまざまな種類が

断熱材とひと口に言っても、素材によってさまざまな特徴があります。

●無機繊維系(グラスウール、ロックウール)
内断熱に使われ、燃えにくいのが特徴。特にグラスウールは比較的安価で、広く普及しています。

●木質繊維系(セルロースファイバー)
内断熱に使われ、結露を防ぎやすく、防音効果も高いのが特徴。ただし価格も高めです。

●天然素材系(羊毛、炭化コルク)
羊毛は内断熱に、炭化コルクは外断熱に使われます。天然素材のため調湿性に優れ、防虫効果も高いのが特徴。価格も高めです。

●発泡プラスチック系(ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォームなど)
外断熱に使われ、断熱性が高いのが特徴。価格も高めです。


素材も建築会社によって決まっているケースがほとんど。どんな種類の断熱材が使われ、どのようなメリットがあるのか確認しましょう。

家で最も熱の出入りが大きいのは「窓」

断熱材も重要ですが、実は、外気温の影響を最も受けやすいのは「窓」。冬に暖房した室内の熱が逃げていくのも、夏に外の暑い空気が入ってくるのも、そのほとんどは窓からです。高気密・高断熱の家を建てるなら、窓選びにもこだわりましょう。


●サッシの素材
アルミ製、樹脂製、木製の順に断熱性がアップします。アルミ製は比較的安価ですが、熱伝導率が高く、外気の影響を受けやすいのが特徴。樹脂製、木製、さらに室外がアルミ製・室内が木製といった複合サッシ、室内外の間に断熱材を入れたアルミサッシも採用されています。

●ガラスの構造
ガラスは使う枚数の違いによって分けられ、単板ガラス、複層ガラス、多層ガラスの順に断熱性がアップします。さらに2枚のガラスの間を真空状態にしたり、ガスを注入したりして断熱性を高めたものも登場しています。

高気密・高断熱の性能は建築会社を選ぶ段階で考えて

前述したように、断熱工法や使用する部材は建築会社ごとに決まっていることが多いもの。つまり、建築会社を選ぶ段階で、気密性・断熱性ともある程度のレベルは決まってしまいます。この点も考えながら建築会社を選びましょう。

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