家づくりの学び舎

2023/02/23更新0like1442view

著者:tennto1010

数字で納得!住まいの性能(断熱編 vol.1)ー日本の住まいは寒かったー

理想の住まいを考えたとき、豊かな生活空間をイメージできる広さや設備などの要素に、まず目が向きがちです。しかし、そこを満たすだけで、現代の住宅に求められている性能が十分と言えるでしょうか。この記事では、日本の住宅における断熱性能の実態について、具体的な数値を読み解きながら考えます。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

自宅の冬季の室温を知ることから始めてみる

「うちは古いから、冬寒くて大変なの」「寒くて朝布団から出るのが辛いよね」など、冬の挨拶のようにこんなフレーズを口にしていませんか?日頃から寒さを感じている我が家の室温を測ってみると、起床時の室温はおおむね12〜13℃程度と、東京の初冬の外気温と同じくらいまで冷えていました。この室温レベルはどのように評価したらよいのでしょう。

住まいの断熱性能基準 海外比較では大きく遅れる

まずは、諸外国と比較して日本の住まいそのものの断熱レベルを見てみましょう。日本では、平成25年の省エネ基準の改正から、UA値(※1)という指標が使われています。UA値は「室温」という住み手に感覚的に分かりやすい指標を用いて、外皮性能(※2)の目指す水準を示した数値です。

※1 UA値とは?
断熱性能を表す値 UA値 = 建物各部から逃げる熱量 ÷ 建物の表面積
参考記事)「高気密・高断熱」のメリットは?それぞれの違いと快適な住まいを建てるための基礎知識

※2 外皮性能とは?
住宅の外と内を分け隔てる場所、外との境目(屋根・壁・基礎部分や窓など)からの熱の出入り防ぐこと
参考資料)住宅における外皮性能 - 経済産業省

出典:今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方(第三次答申) 及び建築基準制度のあり方(第四次答申)について(令和4年2月))国土交通省

上のグラフからは、現行基準はもちろんZEH(※3)基準で比較しても、日本は諸外国に対して甘いことが分かります。例えば、東京と同気候帯で比較されているアメリカのカリフォルニア州で比較すると、日本の北海道レベルの断熱水準よりさらに高い水準が求められています。

※3 ZEHとは?
家のエネルギー消費と、太陽光発電などで作り出すエネルギーの差し引きが0になることを目指す住まいのこと
参考記事)知りたい!ZEH住宅のメリット・デメリット

日本人の90%が心疾患等リスク危険レベルに値する寝室で寝ている

主要国では、国民の健康な生活レベル保護のために最低室温が定められています。日本ではこうした規定がないために、室温基準という概念自体をはじめて知る人も多いかもしれません。住まいづくりにおいて「室温」という指標に対する意識が低いことと、下図の世界比較で表される日本の住まいの寒さとは無縁ではないでしょう。

SUVACO調べ

SUVACO調べ

参照資料)
①スマートウェルネス住宅等推進調査委員会(2022.2.18)
「住宅の断熱化と居住者の健康への 影響に関する全国調査 第6回報告会」の資料
②WHO住宅と健康に関する新しいガイドライン(2018.11.27)
③英国保健省年次報告書 (2015.10)

既存住宅の断熱性能 現行基準を満たすのはたったの13%

現行の断熱基準を満たしてすらまだまだ寒い日本の住宅ですが、下の表からは、現行基準にも満たない住宅の割合が非常に多く、日本人の8割をこえる人が、寒い家に住んでいるという事実が突きつけられています。

断熱性の違いで、朝のLDの室温に5℃以上の差

ここまで日本の住まいの断熱レベルが低いことを示してきました。ここからは、住み手にとって一番気になる室温や光熱費など、住み心地と断熱性能とが具体的にどのように関わるのかを見てみましょう。

下の図は、断熱性能の違いによる室温変化を表したものです。

参照資料)住宅外皮の役割と方向 ―設計ガイドブックの発刊と住宅外皮性能に関する「HEAT20見える化」案(2014年度報告会)より

参照資料)住宅外皮の役割と方向 ―設計ガイドブックの発刊と住宅外皮性能に関する「HEAT20見える化」案(2014年度報告会)より

参考資料)一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会(2018年度版)
「新水準等の提案:戸建・共同住宅の水準、開口部の最適設計」

断熱を変えるとエアコン選びが変わる!電気代が下がる!

断熱性能を上げた暖かい住まいでは、エアコン選びや光熱費にどのように影響するのか、具体的な数値の変化を調べてみましょう。

実は、現在普及しているエアコンは、無断熱住宅を基準に畳数目安が決められています*。断熱仕様が考慮されていないため、現状の住宅基準で考えると、多くがオーバースペックであることが考えられます。

*畳数表示見直しの検討がはじまっています。

単純に某メーカーカタログ適用の数値であてはめると、H11年基準やG1レベルの住宅18畳の部屋であれば、カタログ表示定格能力6.7kW(6700W)の18畳用ではなく、2.5kW(2500W)の6畳用で、カバーできることになります。暖房の使用状況は一律に判定できませんが、イニシャルコスト、ランニングコストともに下げられることは間違いありません。
生活スタイルの変化で家で過ごす時間が増えた今、住まいの住み心地の本質が問われています。「寒くても我慢!」が、普通になっていた日本の住まいにこれからも住み続けるのか?数字で示された現状をイメージしながら住まいづくりに貪欲に関わっていきたいですね。次回は住まいの断熱と健康との関係を考えます。
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