家づくりの学び舎

2019/02/05更新1like4187view

著者:佐藤ゆうか

住宅の耐震等級と耐震性を決めるポイント

この記事を書いた人

佐藤ゆうかさん

2級建築士。
工業高校卒業後、中小規模の建設会社に勤務。
木造住宅を中心に新築やリフォームの設計に携る。
現在は3児の育児を中心に在宅ワークに励み、いつか現役復帰を夢見ながら建設業界にしがみつく日々。

これから家づくりをしようと思っている人にとって、住宅の耐震性は特に検討しておきたいですし、耐震性を証明する耐震等級についても正しく理解しておきたいところです。今回は、住宅の耐震等級とは何かと、耐震性を決めるポイントについてお伝えします。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

住宅の耐震等級とは?

新保倫章「西小山の家」
日本では、住宅の耐震性をよりわかりやすく表示し、証明するために耐震性に等級が設定されています。

その等級のことを耐震等級と言い、等級1・等級2・等級3の全3段階で設定されています。
それぞれの違いについては、以下のようになっています。

■等級1
・建築基準法で設定されている強さ。震度6強~7の地震で倒壊せず、震度5で損傷しない
・建物の強さは壁量計算で設計する
・震災でも建物の崩壊などで命は失われない
・震災がきっかけで建物の資産価値が失われる可能性がある

■等級2
・建築基準法で設定されている強さの1.25倍
・壁量計算+壁のバランスと地震係数で設計する
・耐震等級1と比較して間取りに制限がある
・震災後も生活できる

■等級3
・建築基準法で設定されている強さの1.5倍
・壁量計算+壁のバランスと地震係数で設計する
・耐震等級1と比較して間取りに制限がある
・震災後も安心して生活できる

近年、ハウスメーカーの手がける住宅では、ローコスト住宅でも耐震等級3が標準仕様として設定されていることから、耐震等級は3まで無いとまずいんじゃないの?と思われる方も多いですが、耐震等級は1でも問題があるわけではありません。耐震等級1が標準仕様のハウスメーカーや工務店もあります。

ただし、震災後でも安心してその住まいに住み続け、住まいの資産価値を保つためには、耐震等級2や3を検討することがおすすめです。

覚えておいていただきたいのは、自然災害に絶対の安心は無いということ。震災があった後は、耐震等級に関係なく一度住まいの点検を行い、問題なく住み続けられるのか、どこか補修が必要か、次に大きな揺れが来た時に耐えられるのかを必ず確認してください。

住まいの耐震性を決める7つのポイント

住宅の構造として一般的なのは木造住宅ですね。その木造住宅の耐震性を決める要素は、以下の7つの部分です。

①地盤
②地盤改良工事、杭工事
③基礎の構造
④壁のバランス
⑤金物の種類
⑥建物の重さ
⑦施工管理

この7つのポイントに気を使うことで、木造住宅の耐震性は耐震等級に関わらず向上します。注文住宅を建てる方は、計画時や工事中に特に注目してみてください。

①地盤
家を建てる場所の地盤によって、同じ地震でも、揺れや被害の大きさは異なってきます。
土地選びの際には、自治体のホームページからチェックできるハザードマップを使って、大規模な震災の際に予想される震度、液状化の恐れ、海抜をチェックしましょう。

土地の利便性はもちろんですが、地盤の強さについても気を使いながら土地探しができるといいですね。


②地盤改良工事、杭工事
木造住宅を建設する際に、地質調査を行うことは常識となりました。
地質調査を行い、地盤の強さが不足している場合には地盤改良か杭工事を行うことになります。

地質調査で一般的な方法がSS試験と呼ばれる、スウェーデン式サウンディング試験。価格の相場も5万円程度なので、住宅の地質調査で広く行われています。

その調査結果に基づいて、地盤改良工事や杭工事が行われることになるのですが、調査結果は専門家の解説があってこそ理解できるものなので、調査後は報告書を見ながら納得のいくまで説明をしてもらい、地盤改良工事をお願いしましょう。


③基礎の構造
木造住宅の基礎で主流なのがベタ基礎と言って、1階の床に沿って、全面に鉄筋コンクリート造で形成する基礎の方法です。湿気や虫害を予防し、土台や構造体の腐食を防ぐ効果があります。

目ぼしい建設会社が決まったら、基礎の構造はベタ基礎か?ということを確認してください。


④壁のバランス
近年の木造住宅は、壁の力とバランスによって耐震性を保っています。
壁量計算と言って、地震エネルギーに対抗して働く壁を、適度にバランスよく配置することで耐震性をチェックするのが一般的ですが、構造計算が必要ない規模の木造住宅でも、構造計算を行った上で設計する住宅会社もあります。

どのような方法で耐震性のチェックを行っているのかを、確認しておくと安心ですね。


⑤金物の種類
木造住宅の木材と木材の接合は、仕口と言って、先端の加工の組み合わせだけではなく、多くの金物によって行われています。金物の種類は様々で、大きな負担が掛かるところとあまり負担が掛からないところなど、場所によって使い分けられます。

正しい場所に正しい金物が使われているか、ということは木造住宅の耐震性を保つためにとても重要な要素ですので、整合性を確認するチェック体制は事前に確認しておきましょう。


⑥建物の軽量化
一般的に、建築物は軽い方が地震の際に受けるエネルギーが小さくなり、損傷が少なくなります。そのため、なるべく屋根や外装材は軽いものを選び、重い窓の量や位置を調整して耐震性に優れた木造住宅を計画しましょう。


⑦現場管理
建物の耐震性は、耐震性に優れた設計を行うことが大切です。そして、その設計通りに工事が行われることはもっと大切です。

情報にあふれた世の中になりましたが、『金物の種類』の項目のように、正しい金物が正しく配置されているか?ということなどは、どうしても専門的な知識がないと判断がつきませんよね。

現場が図面通りの品質を保ち、間違った工事が行われないように管理するのが施工管理という仕事ですので、信頼して施工管理を任せられる施工会社を選びましょう。
住宅の耐震等級と耐震性を向上させるポイントについてお伝えしました。

いつ、どんな地震が起きても不思議ではないのが日本の現状です。万が一の時に、住まいによって家族の命が脅かされないように、新築やリフォームの際には住まいの耐震についても検討してみてください。
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佐藤ゆうかさん

2級建築士。
工業高校卒業後、中小規模の建設会社に勤務。
木造住宅を中心に新築やリフォームの設計に携る。
現在は3児の育児を中心に在宅ワークに励み、いつか現役復帰を夢見ながら建設業界にしがみつく日々。

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