住宅ローンの審査は、住宅購入の際にローンの返済が可能かどうか、万が一返済できなくなった場合にどのような返済手段があるか、契約者の年収、購入する住宅や土地などの情報をもとに確認を行います。審査基準は金融機関によっても異なり、消費者にとっては不透明なことも多いと思いますので、どういう仕組みなのか解説します。
▽ 目次 (クリックでスクロールします)
住宅ローン審査の一般的な流れ
審査基準は金融機関によって違う
審査の厳しさは保証会社と金融機関の関係によって決まる
審査が通りやすい金融機関、そうでない金融機関がある
申し込み前に知っておきたい注意点
住宅ローン審査の一般的な流れ
住宅ローンの審査の流れは、一般的に
(1)事前申し込み
(2)仮審査
(3)本申し込み
(4)本審査
(5)契約
(6)融資実行
のようになります。
事前申し込みの時点では、購入する物件の価格や工事費用が決まったときに金融機関が審査を行い、それを通過したら本申し込み後に信用保証会社による本審査が行われます。
事前審査にかかる期間は、一般的には3~4営業日程度。最近は、インターネットで申し込みと仮審査ができる銀行も増えています。しかし、事前審査を無事に通過したといっても、本審査で落ちてしまうケースもあるため、注意が必要です。
申込時に必要な書類は、源泉徴収票または、確定申告書の写し、住民票などの本人に関する書類と売買契約書、重要事項説明書、工事請負契約書、平面図・間取図のコピーなどの物件に関する書類です。
審査基準は金融機関によって違う
よく「A銀行の審査は落ちてしまったが、B銀行の審査は通った」というような話を聞きます。これは、保証会社の種類がいろいろとあり、金融機関によってどの保証会社を利用するかが異なるために起こります。
審査内容には、
・年収
・借入金の上限
・借入期間
・借り入れ時の年齢
をはじめとする個人情報があります。
申込時の年齢、完済時の年齢が銀行の規定の範囲内であるか、どんな雇用形態なのか、所得に対して妥当な借入金かなどを確認します。
売買契約書に記載されている物件の担保の審査、個人の信用調査なども併せて行います。信用調査ではクレジットカードの延滞履歴なども含まれますので、過去に支払いを滞納したことがある場合などは本審査において不利になることもあるようです。
審査の厳しさは保証会社と金融機関の関係によって決まる
本審査を行う保証会社と一言でいっても、様々な保証会社があります。中小企業の保証会社もあれば、大手銀行グループの保証会社もありますし、クレジットカード会社の保証会社もあります。
保証会社は、金融機関との関係性に応じて審査の厳しさを変えます。
(1)そもそも保証会社を利用しない場合
金融機関が自社で貸し倒れリスクを負うので審査は厳しくなります。
(2)金融機関のグループ会社の保証会社を利用する場合
同じグループで貸し倒れリスクを負うために、審査はやや厳しくなります。
(3)共同設立の保証会社を利用する場合
外部と自社に貸し倒れリスクが分散するために審査はやや通りやすくなります。
(4)外部の保証会社を利用する場合
外部の会社が貸し倒れリスクを負い、自社のリスクは軽減するため、審査は通りやすくなります。
つまり、金融機関との関係性が強ければ強いほど、保証会社による審査は厳しくなるのです。
審査が通りやすい金融機関、そうでない金融機関がある
金融の種類と審査難易度には、一定のルールがあります。
一般的に、
信用金庫<信用組合<地方銀行・メガバンク<ネット銀行
の順に審査が厳しくなっています。
信用金庫は外部の保証会社、信用組合は自社審査と外部の保証会社、地方銀行とメガバンクはグループ会社の保証会社、ネット銀行は自社審査となっているからです。第二地銀はグループ会社の保証会社や共同設立の保証会社など、金融機関によって利用する保証会社は様々です。そのため、審査難易度もバラバラです。
審査に落ちたら諦めずに別の銀行に行くか、頭金を増やすことで対処しましょう。
申し込み前に知っておきたい注意点
■リノベーション物件は希望額が融資されないことがある
金融機関は、融資をする際に担保評価を行いますが、築年数の経過している物件に対して厳しい見方をします。そのため、リノベーション物件は融資において不利な物件ということになり、希望通りの額を融資されないことがあります。
銀行は、万が一の場合には担保を売却してお金を回収するわけですから、担保となる物件にそれだけの価値がなければお金を貸すことはできません。リノベーションをして住もうと考える物件は、築年数が経っていて、建物の評価がないことも珍しくありません。リフォーム済みであっても、その分の付加価値はないものと判断されます。
たとえ、500万円などの大金をかけてリフォームをしても、500万円分融資してもらえないのです。また、35年のフルローンを考えていても、「(65年~60年)-築年数」くらいで返済期間を考える金融機関が多いようなので、返済期間は短縮させられてしまいます。
近年はリノベーション向けの商品を扱う金融機関も出てきましたので、そのような商品を利用するのも1つの手です。
■カードの一括払い以外は、借り入れとみなされる
カードで買い物をするときに、クレジットカードの分割払いを何度も利用していると住宅ローンの審査が通らない場合があります。キャッシングは金銭の借入れ(ローン)としてみなされることはみなさんご存じですが、ショッピングの分割支払いも個人情報の中では、ローンと同じように履歴が記載され、支払いが遅れると、遅延情報が残ります。
住宅を購入するなら、まずは遅延の情報をなくすために、少なくとも2年間は遅延を起こさないよう気を付けましょう。また、分割払いにする場合は、自分がいくらお金を使っているかを把握しておくべきです。
また、多くの住宅ローンでは、カードローンの借入れがなくても借入れ枠があるというだけで、その枠も債務としてカウントされてしまうので、使っていないカードでローンの枠があるものは解約した方が無難です。
■一般的に独身女性で子どもがいない人には融資が付きにくい。
家族構成も住宅ローン審査に影響します。共働きの配偶者がいれば、本人だけの収入では返済比率が基準内に収まらなくても、配偶者の収入を合算して返済比率を求めることができるのはもちろんですが、返済比率に合算しなくても、審査に通りやすくなるのです。
家族がいる人のほうが、いざというときに、返済費用を援助してもらえる、家族が居住する住宅を守るために一生懸命働き、返済が滞らないだろうといった理由から審査が有利になると金融機関は考えます。そのような視点から考えると、独身で1人暮らしの女性は審査に通りにくいようなので、他の審査基準を満たすことが重要です。
■ペアローンは避けたほうが無難!?
住宅ローンを利用する際に1人でなく同居親族と一緒に申し込めるローンのことをペアローンと言います。審査を申し込んだが、希望額が融資されない場合に利用する商品の1つです。世帯当たりの所得が増額するので、審査に通りやすくなります。
1つの物件に対して2本のローンを組み、返済はそれぞれで行います。夫と妻がペアローンを使った場合、妻が夫の、夫が妻のローンの連帯保証人になります。1人が他の人の負債にも責任を負う「連帯債務」と異なり、債務保証の範囲は自分が借入した金額分のみになります。
それぞれが団体信用生命保険に加入することが可能ですが、死亡時・高度障害時に保険から完済してもらえるのは該当者の分のみです。もう1本のローン分はそのまま返済が継続することになるので、1人の収入で返済ができなくなるケースもあります。
ペアローンを組んで住宅を購入したものの共働き世帯の妻が仕事を辞めて育児、家事に専念する、離婚するなどでローンを1本にする場合は注意が必要です。1本化することが贈与とみなされてしまい、贈与税が発生する場合があるからです。持ち分によってはペアローンのままでも贈与税が発生するケースもありますので、あらかじめチェックが必要です。
そもそも、1人では借り入れが難しいことがペアローン誕生の理由です。1人の収入では借り入れできない金額で住宅ローンを組んでいる世帯が大半なので、1本化が難しい人がほとんどでしょう。1本にできない場合は家の売却をしなくてはならない場合もありますので、将来を見越してローンを組むべきです。
■税制メリットを考慮した借り入れを
2019年10月に予定されている消費税増税に伴い、住宅ローン控除は減税期間が従来の10年間から13年間に延長され、控除適用のメリットが今後さらに大きくなることが見込まれます。融資を上手に受けて、税制メリットを受けるために、まずは審査の仕組みをしっかり理解しましょう。