建てた後にはそれほど気にならないのに、建てる前にはとても気になるのが住宅の「坪単価」です。チラシや広告でよく目にはしますが、坪単価がどのような計算方法で算出されているかご存じでしょうか。実は坪単価には数字のマジックが隠されている場合があるのです。ここでは、住宅の坪単価の算出方法や住宅費用の内訳、坪単価ではなく総費用としての考え方などについて紹介していきます。
※事例画像はあくまでもイメージです。
▽ 目次 (クリックでスクロールします)
坪単価は自由度があるもの
坪単価とは?
坪単価に含まれるものは?
坪単価に含まれないものは?
数字のマジック?坪単価を安く表現する方法がある
坪単価以外なら何を基準にすれば良いのか
坪単価は自由度があるもの
家づくりを計画し始めると、いろいろなハウスメーカーや住宅会社へ見学に行くことも多くなります。その際に、「うちの坪単価は○○円です」と説明をうけることがあります。筆者も、完成見学会のイベントをすると、約9割の方から毎回のように「坪単価はいくらですか」と聞かれます。ある一定の目安として聞いてもらうのは、とても良いことだと感じていますが、その坪単価だけを聞いて、他の紹介を一切聞かない方も中にはいらっしゃいます。
しかし、坪単価だけで全てを判断するというのは気を付けなければいけないと捉えています。なぜなら、「坪単価の定義」というのは実際はっきり決まっておらず、その金額をいくらに「見せるか」というのは、住宅会社にゆだねられているからです。
坪単価とは?
住宅の坪単価とは、建物の建築金額を延床面積で割ったものになります。
例えば、建物が2,000万円で延床面積が100平米だとします。1坪は約3.3平米なので、100平米を坪に直す場合、100÷3.3=約30.3坪と出ます。
坪単価を割り出すために、2,000万円÷30.3坪と計算すると、坪単価は約66万円となります。
同じ2,000万円でも、建坪が36坪あれば、2,000÷36=55.5555となり、約55.5万円となります。同じ金額なら建坪が大きいほうが坪単価は安くなっていき、10万円程度の差が生まれます。しかし、30.3坪でも36坪でもあくまで建物の金額は同じです。
坪単価に含まれるものは?
一般的に参考とされる坪単価は、「本体工事費」を指しています。しかし、家を建てるには、「本体工事費」と「別途工事費」「諸費用」と大きく3つの費用 がかかりますので、本体工事費を元に算出されている坪単価は、総費用の中の一部でしかありません。総費用の中でのそれぞれの費用割合は下記の通りとなっています。
・本体工事費・・・70~80%
・別途工事費・・・15~20%
・諸経費・・・5~10%
そのため、坪単価が安いといっても、それをもって家づくりの全体の費用が予算に収まっているとは判断できませんので注意が必要です。
坪単価に含まれないものは?
一般的な坪単価は「本体工事費」を指していますが、その他の「別途工事費」「諸費用」とはどのようなものでしょうか。
「別途工事費」とは、地盤の補強工事や水道の引き込み工事、照明器具やカーテン工事、外構工事、冷暖房工事などになります。建物が全く同じものでも、土地が変われば地盤補強の費用が必要になる場合もありますし、水道やガスの配管の条件も土地によって違っていますので、一般的な坪単価としては計算に組み込みにくい性質を持っています。
外構工事や冷暖房工事なども、施主さんによってグレードもプランも変わってきますので、通常は坪単価の計算には入れません。
「諸費用」とは、設計の申請にかかる手数料や銀行の手続き、登記の費用、保険料、印紙代など事務的な要素をもった費用になります。こちらも、施主さんによって費用が変わりますので、通常は坪単価には含みません。
数字のマジック?坪単価を安く表現する方法がある
一般的には、本体工事費を延床面積(坪)で割った金額を坪単価としていますが、営業上、もっと坪単価を安く見せたいという住宅会社もあります。その場合、延床面積ではなく、「施工床面積」で割ると、坪単価は安く表現されます。
延床面積と施工床面積の違いはなにかいうと、ベランダや高さの低いロフトや屋根裏部屋、玄関ポーチなどの部分を含めたものが施工床面積となり、延床面積よりも広くなります。
上記の例で例えた、2,000万円の家で延べ床面積が30.3坪である場合は、坪単価が66万円となりますが、施工床面積が34坪になる場合は、坪単価が約58万円になります。まったく同じ家の坪単価ですが、60万円台と50万円台では印象が変わってしまいます。
こういったことがあるため、住宅会社が坪単価を安くみせる、数字のマジックを使っている可能性を想定する必要があるのです。
坪単価以外なら何を基準にすれば良いのか
さらりと聞いた坪単価が、どこまでを含んでいるわからないことが多い場合は、家づくりに関わる総費用で判断するべきと考えます。特に、諸費用以外の「本体工事費」と「別途工事費」です。
例えば、完成見学会を見に来ていて、その家の総費用額が聞けるようなら確認したほうが良いでしょう。
そして、この家の構造や性能、仕上げに使う素材、住宅設備のグレード、間取りや造作のこだわり度などをしっかり確認します。そして、この家のつくりでこのくらいの本体工事費がかかるという「費用感」の感覚をつかみます。
最初は難しいかもしれませんが、何度か意識していくうちに、「このくらい手が込んでいて住宅設備のグレードも悪くない、コストパフォーマンスがいいな」「ほとんど既製品ばかりでこの本体価格は実際高いかも」など、いろいろな感想がでてくるはずです。あくまで総費用と住宅の中身を吟味して判断することをおすすめします。
坪単価は、目安とするには便利ですが、実際のプランや見積りを依頼する段階になると、百万円単位で予算と合わないことも普通にあるケースです。あとで思っていた費用と違ったということがないように、坪単価は参考にしながらも、住まいの総費用を意識して資金の計画をたてていくようにしましょう。