家づくりの学び舎

2023/08/01更新0like1071view

著者:tennto1010

住まいの性能(防災編)ー住宅に求められるレジリエンスとはー

昨今ビジネスや教育の現場で注目されている「レジリエンス(回復力、復元力)」は、困難な局面や逆境に柔軟に対応し、生き抜くために身につけたい能力です。住宅でも同様に、災害や環境の変化に負けないレジリエンスを備え、住む人の命や生活を守り抜く性能が求められています。
この記事では、もしもの災害に耐える住まいのレジリエンスについて考えます。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

住まいに求められるレジリエンスとは

レジリエンスは「回復力」や「復元力」と訳せるとおり、逆境を受け止めたうえで、ダメージを最小限に抑えて元の健全な状態に戻る力のことです。住まいに当てはめると、災害そのものへの対応力と併せ、その前後にどうあるべきなのかも含めた性能が問われているといえます。

一般社団法人日本サステナブル建築協会では、レジリエンス住宅の要件をフェーズごとに以下のように整理し、チェック項目を用いて住宅への備えについての関心を促しています。

◆平常時の免疫力
◆災害発生時の土壇場力
◆災害発生後のサバイバル力

参照資料)CASBEE-レジリエンス住宅チェックリスト 一般社団法人日本サステナブル建築協会
こうした分類を参考に、具体的な対策がイメージしやすい備えや、見逃しがちな点などに注目しながらご紹介します。

◆平常時の免疫力

人の体は免疫力の低下によって抵抗力が奪われ、感染症やさまざまな病気を発症してしまいます。住宅の場合も、瑕疵(かし)や不安要素があると非常時に踏ん張りが効かず、住宅としての機能を失ってしまいます。では、食事や運動が体の免疫力アップにつながるように、住まいの免疫力の向上にはどのような対策があるのでしょうか。

1.快適な温熱環境の維持

断熱性能が不十分な住宅では、結露の発生によるカビやダニの増殖、さらにダメージが進行すると構造材の寿命を縮める事態となり、非常時に持ち堪える力が奪われてしまいます。そもそも、屋内の温熱環境は、住む人の健康寿命に影響を及ぼし、時に命に関わる重大な問題を引き起こす要因の一つ。健康な毎日があってこそ、もしもの時にも動じない身体をキープできるのです。
田所裕樹建築設計事務所「木と和紙の家」

2.安全性の確保

室内の段差解消や落下物への備え、生活動線を障害物でふさがない整理の習慣など、日常生活に不安やストレスがない家は、非常時にも、盤石の強さで家族を守ることができます。

3.防災意識を高めて非常時に備える

今、ここで地震が起きたらまず何をする?次は?と、日常的に災害を具体的にイメージすることで、心の備えとモノやコトへの備えが前進します。

気負わずに災害に向き合うために、例えば毎日の買い物が非常時の備えにつながる「ローリングストック」など、まずは無理なく実践できることからはじめてみましょう。ストック品は、キッチンと玄関のように、複数箇所に分けてリスクを回避する「分散備蓄」が理想です。

4.こまめなメンテナンスで住宅の健康寿命をのばす

メンテナンスがしやすい建材や設備を選択することは、住宅の健康寿命をのばすことにつながります。また、普段は見えないところにある配管の劣化状態や構造躯体の損傷の有無の確認には、天井裏や床下などに点検口があることが大前提です。定期的なメンテナンスで、非常時のライフラインの故障などのダメージも最小限に抑えられます。

◆災害発生時の土壇場力

土地の災害リスクや家そのものの性能、コンディションを把握していれば、災害が起きたその時「この家にいれば絶対に大丈夫」と、安心して命を預けられます。とるべき行動も明確になり、落ち着いて対処することができます。

1.土地のリスク把握

自宅が建つ土地の災害リスクは、ハザードマップ等で確認できているでしょうか?洪水や土砂災害、津波や高潮など、自然災害リスクが高い地域では避難経路の確認も欠かせません。また、見落としがちな防火地域や準防火地域指定など、都市部の住宅地での火災延焼リスクにも意識をむけ、特に避難経路には燃えやすいものを置かないなどの対策を講じましょう。

2.耐震性確保

日本で住宅を建てるうえで耐震性を考慮しない方はいないでしょう。しかし、1981年6月以降の新耐震基準さえ満たしていれば大丈夫とは言いきれません。例えば、熊本地震では大規模な地震が2回重なったこともあり、木造住宅では、2000年6月以降の現行基準(※1)の家とそれ以前の家とで損壊状況に大きな差がでました。また一方で、現状耐震性が最も高い耐震等級3の木造住宅では建物への被害はほとんどみられませんでした。

「とりあえず倒壊しない」から「災害後も安心して住み続ける」へと、レジリエンスの観点からも耐震性への認識に転換が求められています。

※1 2000年6月以降、木造住宅の基礎や接合部仕様、耐力壁バランスの検証が具体化。1981年6月〜2000年5月までの新耐震基準と区別して、2000年基準という。

参照資料)
「熊本地震における建築物被害の原因 分析を行う委員会」報告会プリント 国土交通省住宅局
平 泰博|タイラヤスヒロ建築設計事務所「吹抜けで家族が繋がる高性能住宅〜袖ヶ浦・蔵波台の住まい」
大規模な耐震工事が難しい場合などには、住宅内で寝室やリビングなど特定の部屋だけに強固な耐震性をもたせる「居室耐震」という選択肢も。一室がいわばシェルターのように組み込まれ「ここにいれば大丈夫」と、家族が真っ先に避難できる場所をつくります。自治体のシェルター設置への補助金制度も拡充しており、新たな耐震対策として動向に関心が集まっています。

3.暴風雨等への備え

年々規模を増すように感じられる、台風や豪雨による水害や土砂災害。被災後の現地の映像などでは、屋根や外壁がはがれブルーシートがかけられている様子を目にします。普段目に入らない屋根や、被害を想像しにくい外壁は、強度の把握やメンテナンスを怠りがちなので注意が必要です。窓を守る雨戸やシャッター設備は、災害はもちろん防犯の観点からも有効です。

◆災害発生後のサバイバル力

「早く日常を取り戻したい……。」被災後に人が切実に願うのは、この一点に尽きるでしょう。災害後に如何にダメージからの回復ができるか、レジリエンス住宅の真価が問われるサバイバル力は、どのように取得できるのでしょうか。

1.落ち着いた行動が回復を早める

気が動転して慌てた行動にでると、思わぬ二次災害に見舞われるリスクが高まります。例えば、非常持ち出し袋は、避難経路になる玄関に準備するなど、慌てていても最低限とれる行動をイメージしておくことで、二次災害のリスクを減らし、日常生活への復旧に注力することができます。

2.ライフラインの復旧までいかに粘れるか

一度災害がおこれば、電気、ガス、水道が止まり復旧までに長い時間がかかります。これまでの災害では、電気→水道→ガスの順番で復旧するとされていますが、最速の電気でも復旧には1週間前後かかることがあります。
特に切実と言われるのが断水です。1日あたり飲料水としての必要量は1人3リットルとされているので、この数字から家族分に必要な量をローリングストックしておくのが目安です。生活用水は、貯湯タンクが活用できるエコキュート、雨水タンクや家庭用貯水タンクの活用などでいかにサバイブできるか、イメージ+シミュレーションで検討します。

3.省エネ住宅はインフラ強度も高め

高効率設備による省エネと太陽光発電などによる創エネ、高性能断熱をセットにしたZEH住宅は、停電時でも太陽光発電や蓄電池を活用して電源が確保できることが強みの一つです。また、高い断熱性能により、真冬や真夏の過酷な気象条件下での避難生活でも、室温が適温に保たれ、体調維持に大いにメリットをもたらします。
ご紹介した対策の一つ一つは特に目新しいことではないですが、災害に対する住宅性能を、日常生活と災害との境界を大きく捉える「住宅のレジリエンス」として整理しなおすことが、災害への向き合い方や行動を変える助けになるのではないでしょうか。住まいづくりにレジリエンスの視点を持ち、今できることから行動にうつしてみませんか。

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