2020/08/06更新1like7140view

著者:原 ふりあ

閉じすぎないコートハウスをつくるには

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この記事を書いた人

アトリエ系設計事務所に所属して住宅や大規模建築の設計を行うかたわら、自ら設計や執筆活動も行っています。一級建築士。

新築で家を建てるなら、庭はつくりたい!と思う方が多いのではないでしょうか。立地条件によりますが、住宅密集地では開放的な庭をつくるのが難しいことも。そんなときの一つの答えとして、中庭のある住まい「コートハウス」の魅力と注意点をお伝えします。

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▽ 目次 (クリックでスクロールします)

プライベートな庭をもてるコートハウス

中庭を介した関係性が空間の面白さを生む

閉鎖的にしないためには、窓に工夫を

街に見せるための緑を植える

プライベートな庭をもてるコートハウス

「コートハウス」とは、建物自体や塀で囲われた中庭(=コート)をもつ住宅のこと。平面プランはロの字型やコの字型になっていることが一般的で、外部から中庭の様子が見えません。そのため、よりプライベートな庭をもつことが可能になります。

今回は、旗竿敷地に建つこちらのコートハウスを取り上げます。延床面積は32坪と比較的小規模な住宅です。

上:2階平面図/下:1階平面図

コートハウスの一番の利点はなんといってもプライバシーの高さ。

旗竿敷地はアプローチ(“竿”部分)が長く道路から奥まっているため、家が建つ場所(“旗”部分)は周囲を隣家に囲まれていることが多いもの。周りを4軒に囲まれている──なんて状況もありえます。すると、庭をつくっても、気をつけなければ隣の家から丸見えの使いづらい間取りに。

こういう場合に、建物や塀で囲われた中庭は有効です。
この写真は向かって右側がリビング、左側が中庭です。リビングから見て中庭の先には壁が立っているため、周囲の視線を気にすることなく開放的なレイアウトを実現できています。

仮に庭の先に壁がなかったら……と考えると、どうでしょうか。こちらからは向こうの家が見えるし、向こうからもこちらが見える。結局落ちつかずにレースカーテンやブラインドを閉めてしまうかもしれません。そうなると、せっかく植えた庭の緑を楽しめなくなってしまいます。
この写真は浴室と洗面室。まるでリゾートホテルのように緑の見える開放的な浴室も、コートハウスならではといえます。

中庭を介した関係性が空間の面白さを生む

寝室にも同様に、中庭に面した大きな掃き出し窓をつくっています。平面図を見ていただけるとわかるように(この寝室は「個室1」と表記)、中庭を挟んで向こう側はダイニング、斜めに面するのはリビング、というレイアウトです。

コートハウスでは「庭の先にまた別の部屋がある」という状況ができます。庭が単に景色を楽しむためのものではなくなり、内・外・内という重層的な構成をつくってくれます。単にプライベートな場所ができるだけでなく、部屋同士の関係性によって空間的な面白さが生まれるのもコートハウスのメリットです。

閉鎖的にしないためには、窓に工夫を

利点の多いコートハウスですが、最も気をつけなければならないのは、街に対して閉じすぎないようにすること。

中庭に向けて思いっきり開放的につくることができると、逆に外側に対しては閉鎖的になってしまうことが多いのですが、壁しか見えない家は少し近寄りがたく感じられてしまうものです。また住まう側としても、周囲の様子がまったく見えないのは不安です。印象を和らげつつ、適度に街に開くための工夫が大切です。

この事例の場合、中庭だけでなく「前庭」「裏庭」をつくっていることが、周囲との関係を意識している良い点と感じました。

まず、裏庭について。
上の写真はダイニングで、窓の先に見えるのは裏庭の緑です。裏庭の向こう側は恐らく隣家と思われますが、敷地内に緑を植え、窓のサイズを調整することにより、抜けをつくりながらも視線が気にならないよう配慮しています。

隣地との関係をみながら適所に窓をつくっていけば、閉鎖的な家にならずにすみます。その際に、この事例のようにサブの庭をつくる面積的な余裕があると、景色のコントロールが可能です。
2階の場合は視線の抜ける方向に窓をあけていけば、1階のプライベート感とはまた違って街とつながる開放感が生まれます。

もし都会でかなりの住宅密集地に建てる場合だと、窓のあけ方が難しいかもしれません。旗竿敷地であればアプローチの通路部分には将来的にも家が建ちませんので、そこに向けて窓をあけるのも一つの手です。

街に見せるための緑を植える

閉鎖的にしないためのもう一つの工夫は、街に対して「見せる」という意識で緑を植えることです。
この写真の突き当りには「前庭」に植えられたシンボルツリーが見えています。

ここに木を植えても室内から鑑賞することはほとんどできませんので、家族が目にするのは家に出入りする際のみ。しかし、街からの見え方においてこの緑が大きな役割を果たします。

緑の存在は「この家に住む人たちが街に対して心を開いている」という印象を与えます。すると、建物自体のつくりが閉じられていたとしても、周囲の人は安心でき接しやすくなります。

旗竿敷地でない場合でも、できるだけ壁の外側に木を配置したり、難しければ背の低い植物でもよいので、緑を植えるスペースを少し確保しましょう。たったそれだけで……と思われるかもしれませんが、緑のもつやわらかさはそれほどに効果的です。ぜひ実践してみてください。

この記事を書いた人

アトリエ系設計事務所に所属して住宅や大規模建築の設計を行うかたわら、自ら設計や執筆活動も行っています。一級建築士。

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