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【TV放映】
・2023年1月14日(土)テレビ朝日「渡辺篤史の建もの探訪」で放映されました。
【掲載誌】
・住まいの設計 2023年2月号
・RESTLESS LIVING Volume 136(デンマーク)
都心で共に働く夫婦が暮らす、2階建て+ロフトの木造住宅です。
敷地は3方向道路に囲まれた五角形角地で、人や車の行き交いも多く周囲からの視線への対策と洪水ハザードマップに該当した浸水する恐れがある地域でもあり、水害対策も兼ねた計画が求められました。
そこで敷地を取り巻く「光・風・人・車・水」の要素に対して、平面的・断面的な「抜け」をつくり、光や風を内部に届け、人や車の動線を確保しながら、水を受流す構成としています。
また建蔽率を最大限活用する為に敷地形状に合わせた五角形の平面構成として、都内の厳しい法規制に配慮して、2 階+ロフトの断面構成を選択。水害時に建物への影響を最小限に抑える為に1階部分は高基礎を用いて計画としました。
近年増加傾向のある天災への備えを建築に与える事で、御施主様の安全性を担保しつつ、コロナ渦以降でも気軽に安心して集える外の居場所にもなる「開かれた車庫 /public」と お施主様が集めた素敵なインテリアに囲まれた余暇を楽しむ「閉ざされた居間 /private」の2面性を併せ持ち、快適な暮らしを与えてくれる都市型住宅を提案しました。
元々住んでいた都心マンションでは、立体駐車場の不便さや規格化された内部構成での不自由さから戸建て住宅を考え始めたのがきっかけで、建築系の仕事をしている御施主様が偶然見つけた変形敷地の資料を、見つけたその日に弊社に持ってこられたのが家づくりのスタートでした。建築が好きな御施主様からの希望は、「カッコ良い外観・内観」「使い易い駐車スペース」「安心安全と快適性の確保」「IOTの実現」を掲げて、建築家の独創性とハウスメーカー以上の性能を同時に実現して欲しいとの事でした。
周囲に住宅が建て込んでいる事と窓が少ない外観が御施主様の好みであったこともあり、外壁側に極力窓を絞り、1 階の坪庭に繋がる外部吹抜に大きな開口部を設けて、プライバシーに配慮しながら、 採光・通風を確保しました。台形のリビングダイニングは視覚効果で実面積よりも広く感じる空間となり、また回遊性のある間取りと外部吹抜の上部へと視線が抜ける事で、奥行きを感じる設計としています。またランニングコストや地球環境への負荷にも考慮して、住宅の断熱性能にもこだわり、Ua値0.37、熱交換型のダクトレス換気の利用、気密対策も徹底する事で、冬場でも殆ど暖房を使わないレベルを実現しました。
外部をできるだけ閉じた外観にしていたので、完成までは明るさをだいぶ気にされていましたが、住んでみると思っていた以上に明るく、外部吹抜けから入る光の変化が楽しめるとの事でした。また外壁に窓が少ない為、断熱性能が非常に高くなり、冬場は朝少し温めるだけで次の日の朝まで暖房を使用しないでも十分暖かい暮らしが実現でき、さらに遮音効果も高くので、外を走る自動車の音もほとんど聞こえず、趣味の映画やゲームの音量を気にせずに楽しめるとのことでした。
御施主様の好みと快適性の両立を実現できたので、非常に満足いく暮らしができて本当によかったとお褒めのお言葉をいただきました。
実は他の方から土地への問い合わせもあり、土地購入まで時間がなく、3日で現プランの構成を考えました。初回のプランが気に入って頂けたおかげで、最終系までほとんど同じプランでしたので、基本・実施設計は半年で完了しました。御施主様も間取りばかりに時間をかけても時間が勿体無いという意識もありましたので、そこからは御施主様とマテリアルや家具の選定に時間をかけて、建築のディティールと合わせて検討を重ねました。現場にも施主様と出向いては大工さんを始めとした現場の方々と一緒に見え方などの検証も重ね、建築家・御施主様・現場の方との共作により、この住まいは出来上がりました。
台形の形をしたリビングダイニングにあるソファは実は既製品のソファです。敷地形状に合わせて決まったリビングの形で、「132°」という微妙な角度でした。形に合うソファを作ろうと提案したところ、約1ヶ月かけて御施主様が「131°」の角度のソファを自らが見つけて来られて、御施主様の熱意には本当に驚かされました。執念で見つけてきたカッシーナのソファはまるでこの建物の為ではないかと疑うくらい見事にピッタリと納まり、居心地の良い窓辺空間を作り上げました。御施主様と良いものを作り上げる意識を共有できたからこそ、ここまで妥協する事がなく良い住まいを作れた事を肌で実感する事ができました。