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設計、監理、インテリア、エクステリア(庭・外構)を担当
京都市東山区。五条坂から1本入った細い路地には戦前に建てられた古い長屋がひしめいています。昭和の古き良き路地の面影を残しながらも、空き家問題、建物の老朽化、観光客によるプライバシーの侵害、インバウンド需要に伴う民泊・ゲストハウス化など、現代的な問題にも直面しています。
今回は長屋を所有する家主さまからのご依頼で、その一角を子育て世帯や高齢者向けの賃貸物件としてリノベーションすることになりました。
1階は和室だった2部屋をつなげた居間を中心に、坪庭を囲む見世の間、建具を介して向かい合うキッチンとも一体的に利用できる間取りに変更。限られたスペースの中に浴室・洗面室・洗濯機・冷蔵庫の設置場所も確保しています。床材は30mm厚の杉フローリングを用いてローコストながら断熱性を向上、壁は左官と合板にて補修、天井は劣化部分を剥がして2階床の荒板仕上げ。キッチンは業務用厨房機器を組み合わせたシンプルなつくりに。2階は間取りの変更は行わず劣化部分を修繕。天井は構面補強と断熱材を付加した上で船底天井に変更。グリッドプランを生かして、家中の建具を必要に応じて配置換えして再利用し、新たに製作する枚数を極力減らしました。
建物は数年間放置されていたため損傷が激しいものの、ビニルクロス、アルミサッシ、システムキッチンといった継ぎはぎリフォーム部分を撤去すると、京町屋ならではの繊細な構造と雅な意匠、屋外と屋内が一体となった気持ち良い空間が蘇りました。
リノベーションにあたっては京都市の補助金制度を最大限活用し、イニシャルコストの低減に努めています。
第36回住まいのリフォームコンクール住宅部門優秀賞(2019)
Architizer(US)/2019(featured)
居間・濡れ縁・坪庭が連続的に繋がる町屋らしい空間。塀の杉皮は貼り替えている。(撮影:笹倉洋平)
ひとつの雰囲気をつくりながら、様々な増改築の履歴や住人の趣向によって微妙に各戸のデザインは異なる。(撮影:笹倉洋平)
玄関戸の奥に半屋外の内玄関。右手は見世の間。アトリエや小さな店舗など職住近接した多目的利用が出来る間取り。(撮影:笹倉洋平)
ステンレス業務用厨房機器を組み合わせたシンプルなキッチン。(撮影:笹倉洋平)
雑草と廃棄物を一掃して坪庭を復旧。アルミサッシを撤去して木製建具に変更。(撮影:笹倉洋平)
町屋の空間や素材は現代の住宅より遥かにソリッド。特別な配慮をしなくとも回遊性や流動性は高い。(撮影:笹倉洋平)
狭い道路の両側に長屋の軒が連なる。(撮影:笹倉洋平)
今回リノベーションを行った住戸。劣化の激しかった柱は根元でカットして継いでいる。(撮影:笹倉洋平)
入口近景。外観は劣化部分の修繕に留めた。露出された設備配管やメーター類も近隣に倣い、隠蔽せずそのまま。(撮影:笹倉洋平)
土壁・板貼りは状態の良い部分は既存そのまま利用。(撮影:笹倉洋平)
要らなくなった小振りの建具を再利用して収納棚を新設。(撮影:笹倉洋平)
東西の坪庭に挟まれた居間は明るく風通しも良い。(撮影:笹倉洋平)
キッチンは居間に向かって配置し、引違戸を開ければ対面利用できる。(撮影:笹倉洋平)
キッチンの既存天井は撤去し火袋を復原。建具越しに2階の居室とつながる。(撮影:笹倉洋平)
玄関の床面は土間と居室の中間レベルに設定して段差を軽減。(撮影:笹倉洋平)
2階。既存天井板を剥がして船底天井に変更。(撮影:笹倉洋平)
壁面の孔は解体時に発見された下地窓。普段は掛け障子で風雨をしのぐ。(撮影:笹倉洋平)
遠くに比叡山をのぞむ。(撮影:笹倉洋平)