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設計、監理、エクステリア(庭・外構)を担当
築100年超の長屋を、単身者または夫婦世帯向けの簡素な別荘物件としてフル・リノベーションしました。
既存長屋には傾いた柱や座屈した壁が見られ、構造補強が必要な状態でした。地震時の構造安全性、快適な温熱環境、天井高のある開放的な空間が求められました。
長屋の構造特性を踏まえて倒壊の防止に絞った構造補強を行い、束ね柱と柱頭のアーチ型ガゼット・プレートが意匠上の特徴にもなりました。既存建物の古びた壁面を一部そのまま露出させたり、空間を仕切らないことにより、限られた予算に応じることができました。
予算内で要望を満たすだけでなく、意匠的にも気に入った空間ができたことに満足しておられました。
お施主さんが初回打ち合わせまでに仕上げ、キッチンやユニットバスなどのお気に入りリストをまとめておられたこともあり、かなり迅速・スムーズに設計を進めることができました。とはいえ、やはり古い町家のスケルトンのフル・リノベーション。この現場でも解体工事後は、隠蔽部の補修などの追加工事や、現場状況に応じた変更対応はそれなりに必要でした。
終始お施主さんのお気に入りを尊重しながらも、プロとしてそれに対しフィードバックやアドヴァイスをさせていただきました。
昭和時代を思わせる既存の茶色ボーダータイルは保存して意匠に取り入れつつ、外壁は京都のあるお茶の老舗に倣い、落ち着いた墨色にしています。1階は既存の木製窓サッシの上から木製の糸屋格子を取り付け。2階は、玄関上部に元々あった虫籠窓(スリット窓)を復旧。既存の引き違い窓サッシ交換後、大正時代の竣工時にあったと思われる木製欄干を復元。昭和っぽい茶色のボーダータイルと炭色の外壁以外、なるべく竣工当初の意匠に戻すことを目指しました。
この築100年超の長屋は、幅1.6mほどの路地に建つ五軒長屋の端一軒。周囲は大規模ビルにびっしり取り囲まれています。建替えの再開発から取り残された孤島のような、昔ながらの路地空間。
玄関口からの眺め。奥には坪庭が見えます。右側の白い壁面の扉の裏には分電盤やインターネットなどの通信機器が納められています。
奥に坪庭が見えます。構造補強材である束ね柱とその柱頭のアーチ型ガセットプレートが意匠上の特徴にもなりました。
既存の丸太梁をまくら梁や束ね柱などとともに浸透系塗料で着色しています。写真の右側の土壁と木製窓は既存のまま見せています。白い壁は新設のふかし壁で、内部に構造補強や諸設備を納めています。
左側の既存すりガラス窓に木製の糸屋格子のかげが見えてます。 窓の上部に、既存ファサードの下屋を支える桔木が見えています。
正面の棚の下部はキッチン排気ダクト取り回しスペースとなっています。古さを愉しむデザイン趣旨と工事費を抑える観点から、既存の土壁の一部を敢えて露出させ見せています。
2階スペースのうち、高さの低い厨子2階の部分(写真の中央、奥)はたたみ敷きとしています。写真の右側に見える界壁(隣家との隔壁)については、全面にファイバー・グラス吸音材と遮音シートを施工の上、石膏ボードの目地をずらしながら二重貼り施工しています。その上にさらにエアコン配管や電気設備のためのふかし壁を施工し、遮音性能(就寝時を含む日常生活音のプライヴァシー)を確保しています。
傾いた既存柱と2方向から添え柱をラグ・スクリューでガッチリ取り付けた「束ね柱。」 無垢の木材は経年でどうしても痩せます。接合部が緩まないようゴム座金などを用いた緊結を標準仕様にしています。
窓のない真っ暗な既存物置の床を抜いて玄関の吹き抜けとしました。100年前の虫籠窓を復旧したところ、自然光が入り壁に貼られていた大正時代の新聞紙やポスターもはっきり見えるようになり、古さを愉しむ趣旨から敢えてそのまま残すことになりました。写真右側の畳み部屋の窓には新調の引き違い障子を取り付けています。右側の欄干には、お施主さんが見つけて来られた古材の欄間を縦向きに組み入れています。