2021/01/16更新1like14470view

著者:熊井博子

日本の家はなぜごちゃつく?「いい家」で素敵に暮らすための準備をしよう

この記事を書いた人

熊井博子さん

ビルダー・建築設計事務所に営業/広報として勤務した後、住宅専門誌の編集を経て、住宅関連の執筆と一般の方の家づくりサポート等に従事。インテリアコーディネーター、照明コンサルタント。

“素敵な暮らし”を夢見て家づくりを考える人も多いかもしれません。でも実際は、いい家ができれば素敵な暮らしが叶うわけではありません。とかく家にばかりあれこれ求めがちですが、いい家を生かすためには住まい手側の“住みこなすスキル”も不可欠です。

住まいが完成してプロの手を離れたそのときに、「あれっ?」ということのないよう今からできる準備をしませんか。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

家に“素敵な暮らし”はついてこない

念願の住まいが完成し、いよいよ入居。当初は他人の家のように思えた住まいでも、1年もすればすっかりなじんで日常の景色になるものです。毎日生活しているのですから当然といえば当然ですが、そのなじみ方は大きく2つのパターンに分かれます。

ひとつは、新居を上手に住みこなしているパターン。家をつくるときに思い描いた「こう暮らしたい」が現実となり、家族が新しいライフスタイルを獲得しているかたちです。こうした場合は家主の家への愛情が伝わってくるようで、家づくりに携わった者としてはなんともうれしい気持ちになるものです。

その一方で意外に多いのが、とにかく雑多で元のライフスタイルがそのまま継承されているパターン。当初語っていた「こう暮らしたい」はどこへやら、あのこだわりはなんだったのか、そもそもこの家である必要があったのだろうか、とこちらが脱力してしまうこともしばしばです。

これは、家のつくりやデザインがどうのというより住む人の意識や習慣の違い。
本来家は家族のプライベート空間ですから、住まい手が良ければそれで良いのですが、もし、以前の家に不満を抱いて「素敵に暮らしたい」と新築を決めたのだとしたら、後者は残念すぎる結果です。もしかしたら、家に愛着を持てずに家の寿命を早めることだってあるかもしれません。

家に“素敵な暮らし”がついてくるわけではありません。どんな家でも住む人ごとに全く違う結果をもたらします。となれば、家にばかりあれこれ要望するのではなく、今現在の暮らしを見渡してみて、自身の習慣や意識を磨くことだって家づくりに欠かせない準備といえるはずです。

日本の家は、なぜごちゃつくのか

実際、日本の住まいはごちゃごちゃしがちで生活感たっぷりのケースが多いといえます。それに比べ、テレビや雑誌で紹介される諸外国の住まいは露骨な生活感を感じさせることがあまりありません。もちろん撮影用ということも大いにありますが、それを割り引いて考えても、やはり総じて日本の住まいはなぜか雑多でモノに溢れかえっているのも事実です。一体なぜなのでしょう。

国民性がうかがえる面白い本があります。

マテリアルワールド・プロジェクト(代表ピーター・メンツェル)著『地球家族 世界30カ国のふつうの暮らし』。一般家庭の家財をすべて庭先に出し、家族と一緒に撮った写真集です。およそ25年前に発刊された本ですが、今に通じる各国の感覚の違いが見えてきます。例えばアメリカは大きな家の広い庭に大量の家具・家電、おもちゃが並び、アイスランドでは家族や家財と一緒に馬や楽器も写っています。伝統的な泥建築の家に暮らすマリ共和国では、家財といっても素朴な器や調理道具が並ぶ程度。その中で、驚かされるのが日本の家のモノの多さ。家の大きさと不釣り合いなほどモノが多く、「一体どこに収まっていた?」と不思議なぐらいです。これはこのお宅が特別多いということではなく、日本の家庭ではごく普通の量。もっと荷物が多い家も少なくないはずです。
表紙 『地球家族 世界30か国のふつうの暮らし』 著者:マテリアルワールド・プロジェクト(代表:ピーター・メンツェル) 発行:TOTO出版

表紙 『地球家族 世界30か国のふつうの暮らし』 著者:マテリアルワールド・プロジェクト(代表:ピーター・メンツェル) 発行:TOTO出版

日本・ウキタさん一家 『地球家族 世界30か国のふつうの暮らし』 著者:マテリアルワールド・プロジェクト(代表:ピーター・メンツェル) 発行:TOTO出版

日本・ウキタさん一家 『地球家族 世界30か国のふつうの暮らし』 著者:マテリアルワールド・プロジェクト(代表:ピーター・メンツェル) 発行:TOTO出版

考えてみれば、欧米は家族の変化に応じて住み替える文化。対して私たち日本人はひとつの土地に土着して住み継ぐ文化。もったいない精神と相まって、モノをとっておく傾向があります。そのうえ高度経済成長期以降に身についた大量消費の感覚も未だ残っているのですから、意識しない限りはモノが増え続け、ごちゃごちゃした生活から抜け出すことはできません。

じゃあ仕方ないと諦めたくなりますが、日本の家は昔からモノに溢れていたわけではありません。むしろ、かつては世界に誇れるほど決まりよく整った暮らしが営まれていたはずです。簡素な美しさが追求された茶室を見れば、日本人のアイデンティティにはそうした美意識が備わっていると思えてきます。

気軽にモノが手に入るようになって以来見失いつつある「簡素美」の感覚を呼び覚ませれば、シンプルに整ったライフスタイルを取り戻せるかもしれません。

さぁ、何をどう見直さなければいけないか。

素敵に暮らしたい人の3か条

今いる家の中を見回してみて、「ごちゃっとしているな」と感じたら、実践してみたいことが3つ。

(1)所有するモノの量をコントロールする
「新居にはとにかく収納を」と考えている人も多いと思います。確かに必要不可欠なスペースではありますが、「あればあるほど良い」というのは考えもの。スペースがあるほど、前述の「何でもとっておく」傾向は強まるばかりです。

収納とはいえ、室内である以上は人が暮らすのと同じ性能を備え、坪あたり何十万円というお金を払って確保された有償空間です。要るか要らないかわからないモノのためにスペースが拡張され、代わりに家族の居場所が圧迫されるのだとしたら、本気で考え方を変える必要があるはずです。

まずは、「家(自分)が持ちきれる量」を決めること。線を引くこと。新たにモノを買うなら代わりに何かを放出し、入れ替えること。収納は底なしブラックホールではないのです。ミニマリストとは言わないまでも、モノの量のコントロールができなければ、大枚を投じて何でもかんでも保存できるスペースを確保するしかありません。

(2)局所でなく、大きく見る
モノを選ぶときにはその個性に惹かれて選ぶことが多いですが、置く・飾る・並べるのであれば、判断基準は変わってきます。周りと調和するかどうか、引き立つかどうか。好きだから・気に入っているから・便利だからと表に出せば、ごちゃごちゃ街道まっしぐらです。ファッションでいうトータルコーディネート同様、パーツではなく全体に目を向けながら、ときに引き算をする勇気を持って置く・飾る・並べる必要があるのです。

(3)使ったら、戻す
最後の最後に当たり前すぎることを書きますが、これができないがために素敵な家を台無しにする人があまりに多いのも事実。「使ったら、戻す」。加えていうなら、「とりあえず」は禁物。「今忙しいからとりあえず」「決まった場所がないからとりあえず」。こうした「とりあえず」がいつしか常態化するのは誰しも身に覚えがあるはずです。

習慣である以上、住む家が変わっても慣れ親しんだ感覚が消えることはありません。急に変えることができないからこそコツコツ見直し、新しいスタートに備える必要があるのです。

今すでに上手に暮らしている人は新たな住まいで素敵に暮らすイメトレを、そうでもないなと自覚する人は今日からできる“見直し”をしていきましょう!今から備えれば必ず実を結ぶはずです。
家をつくる最中は、プロがずっとそばにいてくれます。どれだけ心強いかしれません。でも、家が完成したら“卒業”です。そこからは、住まい手自身が自分の力で理想の暮らしを叶えていくことになります。

自信を持って“卒業”し、理想の暮らしを心から楽しめるよう今からできる準備をしていきましょう。

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