家づくりに役立つメールマガジンが届いたり、アイデア集めや依頼先の検討に役立つ機能や情報が満載!
アカウントをお持ちの場合
(OFFのときは写真にマウスオーバーで表示)
近年ぽつぽつと空き家が目立つ日当りの良い住宅地。この場所を譲り受けた単身の施主は、3.11の後、誰かと共に住む事−ただし、高度の社交性を必要とせず、見守り機能を持ちながらも、一つの場所を緩やかに共有する自由な住み方—を希望した。
建蔽/容積をフルに使ったボリュームのインパクトを減らす為、また敷地が享受していた採光と風の抜けを生かすという希望、木造賃貸の上下の音の問題から、ほぼ縦割りで高さの異なる3つのスライス=3つの長屋に分節し、それらを南北にずらして配置した。ずれが隙と見え隠れを生み、プライバシーを守りながらも場を共有する気配が染み出るようにと考えた。
各スライスが順に他者によりかかる形で外部空間を持ち、屋上は相互の屋根に囲まれた落ち着きと開放性を併せ持っている。またスライス同士が支え合って浮かぶボリュームの下は、集いの場にもなるオープンスペースとし、風通しの良い軽やかな互助の場をつくろうと試みた。
最初はシェアハウスを検討されていましたが、よくお話を聞いていくと、高度な社交性を必要とするシェアハウスはご自身には向かないけれど、お互いの緩い見守りがあるような、誰かと近くにいる感覚で暮らしたい、というご希望が浮かび上がってきました。そこで、長屋として3タイプの住宅を持ち、独身のクライアントが将来の住み替えも可能で、プライバシーと共有のバランスを吟味した案をご提案しました。
核家族から単身化が進む中、東京でも震災の心理的な影響が大きかった当時、まだ独身だった自分もクライアントの気持ちにとても共感したことを覚えています。ひとりでは大きすぎる場所を受け継いだ時に、気持ちの良い場所をつくり、人と共有して見守りあって過ごしたいというとても人間的な感覚から始まった、時代性も感じるプロジェクトでした。