2017/12/15更新0like5134view

著者:SUVACO編集部

専門家フィーチャー

名古屋のリノベーションを牽引するアネストワン。代表・青山さんが見据える「リノベの先にある風景」

名古屋のリノベーション会社の草分け的存在とも言えるアネストワン。しかし彼らは初めからリノベーションを考えていたわけではなかった。代表取締役である青山信春さんに、アネストワンのこれまでの軌跡と、これから目指す世界についてお聞きした。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

株式会社アネストワン 代表取締役社長 青山信春さん

株式会社アネストワン 代表取締役社長 青山信春さん

立ち上げた会社をゼロからやり直そうとした時、リノベーションに出会った

いまや名古屋でリノベーションといえば、知らない人はいないほどの会社となったアネストワンだが、そこに至るまでの道のりは決して順風満帆ではなかった。

もともとインテリアが好きだった青山さんは、卒業後、カーテンやカーペットなどを扱うインテリアメーカーに就職する。時はバブルの絶頂期。面接の場で内定をもらえた。そこで4年ほど働いた後、内装工事の会社へと転職する。そこでも6年ほど働いたが、下請けだったためお客さまの顔が見えず、ダイレクトな声が届かないことに物足りなさを感じていた。その会社が倒産したことを機に、独立することを決意する。
独立した当初

独立した当初

内装工事の元請け会社を立ち上げ、コンサルタントの勧めに従ってちらしを活用する戦略をとったところ、これが当たった。しかし、お客が来すぎてしまい社内はパンク状態に。ちょうどその頃、元請からの多額の負債も重なって次々に人がやめていき、最後は妻と自分だけになった。

「もう一度、ゼロからやり直そう」
そう思った矢先の2003年に、1冊の本と出会った。

それが、ブルースタジオによる『リノベーション物件に住もう!(超)中古主義のすすめ』だった。
「この本を読んで、『これだ!』と直感的に思いました。こだわりのオーダーキッチンや、オープン棚で好きなものに囲まれている暮らしなど、ライフスタイルと住まいがリンクしていて、とにかく衝撃的でした。中古住宅を再生するという動きはいずれ全国に広がると確信しました」

当時、大阪ではアートアンドクラフト、福岡ではアポロ計画が活躍するなど、都市部にリノベーションの萌芽が現れ始めていたが、名古屋ではまだ新築至上主義が根強かった。そこに、いち早く「リノベーション」という住まいのあり方を標榜し、設計者の新卒も採用した。新生アネストワンの誕生であった。

東海エリアにて、リノベーションのさざ波を起こす

その後、アネストワンに大きな転機が訪れる。以前ちらし制作のことで相談に乗ってもらったコンサルティング会社から、とある不動産会社の新規事業に関する相談が来た。中古物件をリノベーションして販売する再販事業の立ち上げにあたり、設計・施工ができる会社を探しているというのだ。この案件を受注したことで、企画から設計・施工、ちらしに至るまで幅広く関わることができ、数多くのリノベーション実績をつくることができた。
この頃に手がけた事例

この頃に手がけた事例

もう一つのきっかけが、「リフォーム産業フェア」というエンドユーザー向けのイベントだった。名古屋で初めてリノベーションを啓蒙するブースをつくりたいという主催者の要望に応じて、9m×6mの空間に古材を貼ったり通路に石を敷き詰めたりして、当時としては珍しい海外のような世界観を作り上げた。足りない部材は事務所にあるものをはがして持って行った。このブースが大きな反響を呼び、新築もリノベーションの仕事も一気に増えていった。何より、ようやく名古屋にもリノベーションの波が押し寄せてきていることを実感できた。
リフォーム産業フェアでの様子

リフォーム産業フェアでの様子

上質な暮らしを軸に、本物の質感にこだわる道を選ぶ

アネストワンが作り出す住空間には「アネストワンらしさ」とでも言うべき、オリジナルのトーン・世界観がある。この空気感はどのように生み出されているのだろうか。

「実を言うと、初めから確固たる世界観があったわけではありません。事業を立て直した時に採用した設計者の二人、山下と草野に、ある程度好きなようにデザインをさせました。彼らには私にはない感性があるので、それらを取り入れながら徐々にアネストワンらしいスタイルを作り上げていきました」
東海エリアでもリノベーションを手がける企業が増え、市場が活性化していくなか、青山さんは次の一手を考える。

「他社と競争するのではなく、競争のないところに出て行きたいと思っています。他社が空間をファッションのように変えることを打ち出すならば、弊社はファッションではなく暮らしを中心にしようと考えました。そこから生まれたのが『暮らしをつなぐ』というコンセプトです。30代後半の大人をターゲットに、暮らしに軸足を置いた上質な空間づくりを目指しています」
そこで青山さんは、設計の二人にも「目線を上げる」よう指示を出した。素材についても、本物に似せた「なんちゃって建材」などは使わずに、漆喰など本物の自然素材にこだわることにした。

「本物の素材は、実際に暮らしてみるとやはり全然違います。また、家具やキッチンも要望があればオーダーメイドで作ります。基本は手作り。手仕事を大事にしています」
当時新卒で採用された山下晶子さん、草野祐也さんも今では「大人」世代に。アネストワンの中核を成す存在だ

当時新卒で採用された山下晶子さん、草野祐也さんも今では「大人」世代に。アネストワンの中核を成す存在だ

小冊子『トリノス』が新たなつながりを作り出す

アネストワンの手仕事、そして「暮らしをつなぐ」というコンセプトの1つの体現が、彼らが長年発行し続けている小冊子『トリノス』だ。住宅やリノベーションに限らず、暮らしに関する幅広いテーマを取り上げたフリーペーパーだ。
アネストワンが発行しているフリーペーパー『トリノス』

アネストワンが発行しているフリーペーパー『トリノス』

「15年ほど前からちらしの形で始め、小冊子になってからも12年ほど経っています。おしゃれで自然派、本物志向の人を対象に、そういった方々が足を運びそうなカフェ、書店、雑貨屋、花屋など約120のお店に置かせていただいてます。どのお店に行っても『トリノス』が置いてあることで、アネストワンを知っていただき、徐々にファンになっていただければと思っています」

毎号の企画・制作から、冊子を置いてもらうお店の開拓まで自社で行う。リノベーションが本業の会社が、こうした冊子を自前で作り続けるのはさぞ大変なことだろう。

「手間はかかりますが、正しいと信じたことはやり続けないといけないと思っています。徐々にですが、効果も現れていると感じています」
『トリノス』を置いてもらっているお店を誘致した「トリノスマルシェ」というイベントを実施したところ、予想をはるかに上回るお客さんが駆けつけ、食事関係の店に至ってはお昼には完売してしまうほどの盛況ぶりだった。
「トリノスマルシェ」の様子

「トリノスマルシェ」の様子

「『トリノス』を通じてつながりを持ったお店は、われわれにとってパートナー。ものすごく大事な存在です」

アネストワンがこれから目指す世界とは

青山さんが次に目指す世界はどのようなものだろう。

「アネストワンが、人々にとって豊かな暮らしの入り口になれればと思います。出口は新築でもリノベーションでもいい。実際、『トリノス』という冊子からも、ある時期から『リノベーション』という文字を外してしまいました。リノベーションに限らず、『暮らしをつなぐ』というコンセプトを体現する存在になれたらと思っています」

青山さんは、長年の夢だった自邸をつくる際、大好きなヴィンテージ家具をしつらえるのみならず、タイルは自ら手作りしたという。
青山さんの自邸

青山さんの自邸

「粘土を広げて素焼きまでしましたし、釉薬(ゆうやく)も問屋まで見に行きました。そのおかげで満足いくものができて、未だにトイレに入る度に『ああ、いいなあ…』と思います(笑)。
青山さん自ら素焼きしたタイルが印象的だ

青山さん自ら素焼きしたタイルが印象的だ

自分で作ったオリジナルのものがあるだけで、家に対する満足度が高まります。こうした家づくりの楽しさを、もっとお客さまと分かち合いたいですね。オリジナルの家具やパーツ、素材なんかも徐々に増やしていって『アネストワン・スタイル』を完成させたいと思っています」

青山さんにいくつかの質問

1. 建築家/デザイナー以外で選べるとしたら、どんな職業に興味がありますか。

物作りしたいので、クラフトマン。60歳になったらやろうかな……。 建築士にもなりたいですね。

2. 影響を受けた建築家やデザイナーを選ぶとしたら誰ですか。

建築やデザインではないのですが、経営に関して何人かの経済学者の影響を受けています。 『ビジョナリー・カンパニー』のジム・コリンズとか、ランチェスター戦略の竹田陽一さん、エクスペリエンス・マーケティングの藤村正宏さんなどです。経営の勉強は絶えず続けています。

3. 好きな住宅建築を一つ教えてください。

住宅ではないのですが、ハンス・J・ウェグナー。彼が手がけた椅子はシンプルですわりごこちが良くて飽きが来ない。かつ丈夫なんです。

あとは、住宅で言えば、アルヴァ・アアルトですね。アアルトの自邸をPCの壁紙にしています(笑)。
6. 料理はしますか。もし、得意な料理があったら教えてください。
弊社の社員たちと料理教室に通っているのでいろいろつくります。特にキッシュはよくつくりますね。あとはイタリア料理が好きです。ちなみに、ガスオーブンを使うとめちゃくちゃおいしくなるのでおすすめです。
料理中のワンシーン

料理中のワンシーン

青山さんお手製の料理

青山さんお手製の料理

7. 好きな音楽やアーティストはいますか。
ブラック&コンテンポラリーが好きですね。

8. 好きな言葉・座右の銘を教えてください。
日々、前進。昨日より今日、今日より明日。
対応業務 注文住宅、リノベーション (戸建、マンション)
所在地 愛知県名古屋市名東区 (ほか全3拠点)
主な対応エリア 愛知県
目安の金額

60平米 フルリノベ900万円〜

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