2017/07/06更新0like4657view

著者:水沼 均

天井は隠れた魅力の宝庫!間取り図ではわかりづらい、魅力満点の頭上生活を手に入れよう

この記事を書いた人

水沼 均さん

建築設計の学校で長年教師を務め、大勢の生徒さんと接してまいりました。年齢、経歴、そして住まいへの思いも大変多様で、他では得られない貴重な経験ができました。その経験を生かして、豊かな住まいづくりに役立つような記事をたくさん書いていきたいと思います。

新居の間取りや家具などを計画するのはとても楽しいものです。でも実際に暮らし始めてみると、天井という要素の存在感が意外に大きいことに気がつきます。視界に入る面積の割合が、天井はとても大きいからです。天井を工夫すると住まいが2倍にも3倍にも魅力を増します。ここではすてきな天井の作り方の数々を伝授いたしましょう。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

天井に段や吹き抜けを設けて変化を楽しもう

2階のほとんどを片流れの大屋根で包み込む住まい。
パブリックとプライベートを分ける壁を珪藻土壁で仕上げて、その壁に沿って太陽の光を取り込み、家の中を明るくしようという施主の発想を叶えました。木のルーバーは、冬至における太陽の南中高度で角度を決め、夏至の南中高度時に一番遮るようにルーバー間隔を決めています。そこにプリズムを載せているので、光が分光して色々な角度で室内に入り込んでいます。
斜線制限や景観法が定められた、条件に制限がある狭小地。
敷地内に3つのボリュームの箱をもうけ、それぞれに角度をつけることで余白をつくりました。天井吹き抜け部にネットを採用して、光を遮ることのない子供が楽しめる場所に。

天井板を取り払って骨組みを見せる

天井板というと、なんだかツルッとして扁平で退屈なイメージがありますよね。なにか天井に変化をつけたい。そんなときにぜひ考えてみると良いのが、天井板を張らずに天井裏の骨組みをむき出しで見せるという手法です。

下の写真では屋根を支える骨組みを見せることで、繊細で美しい住空間を作り出しています。
この手法は、制約の多いリフォームやリノベーションのときにも真価を発揮します。下の写真は戸建て住宅のリノベーションですが、部屋の天井の一部だけを骨組み現しにすることで、とても豊かな変化が生まれています。
そして下の写真は築50年を超える戸建て住宅のリノベーションですが、天井板を張らずに屋根の骨組みを見せることで、新築に勝るほどのインパクトを住まいにもたらしています。

シンボルとしての天井

大昔から建築の天井は、天や空、雲、天蓋などを表すシンボルとしてデザインされてきました。そしてこうしたシンボル化は現代の住宅でもよく見ることができます。

下の写真の住まいでは高い天井が真っ黒に塗装されていて、まるで夜空の漆黒や古民家の天井のような不思議ななつかしさを感じさせてくれます。
リタイア後にゆっくり暮らすための約20坪の小さい住まい。
隣の寺院の屋根にならうように方形の小さな屋根。この単純な構成の中に、2種類の自然光が存在する空間を生み出すように設計。トップライトから落ちてくる光と、地面にバウンドして上がってくる間接光。これらの光が季節や天気により変化して豊かな空間に。
山縣洋「WO 寺院に呼応する方形屋根の平屋の住まい」

天井を宙に浮かべて眺めよう

天井板そのものはシンプルな形態であっても、光の当たり方を工夫することで、際立った個性を持つ豊かな天井を作り出すことができます。

下の写真は平らでシンプルな天井ですが、周囲にグルリと高窓を設けているために天井面の周辺がとても明るく、あたかも天井が宙に浮かんでいるかのように見えます。天井は頭上を一面に覆うだけに、重量感が出すぎると重苦しい雰囲気になってしまいがちなのですが、このように光を効果的に用いることで、天井が独自の軽やかさをもたらしてくれるのです。
同様に下の写真でも天井の浮遊感を感じることができます。そして天井に当たった光は柔らかく反射して、部屋全体を淡い光で満たしてくれます。
浜田幸康「IZ HOUSE」

ガラスで透明な天井を作る

天井はふつう不透明なものですが、思い切ってガラスの透明な天井にしてしまうことで、空と一体になった開放感ある住空間を作ることができます。

下の写真のダイニングルームはガラスの天井に覆われていて、いつも空を眺めながら天の動きと一体になって生活を楽しむことができます。そして大きな窓からは豊かな緑が眺められ、都会で暮らしていることを一瞬忘れてしまうような住まいです!

天井が内と外とをつなぎとめる

天井と窓の関係を工夫して設けると、楽しい屋内外の一体感を演出することもできます。

下の写真の住まいでは、壁一面に取り付けられた大きな窓が屋内と屋外を一体のものに結びつけています。頭上を見ると天井板が屋外までそのまま延びていって、内外のつながりをますます強いものにしていることがわかります。庭に美しい自然があるときには、ぜひこんな楽しい演出をしてみたいものですよね。

和室こそは天井の宝庫。素材感も豊かです

和室には、実は大変凝った天井のしつらえが数多くあることをご存じでしたか?和室というと一件シンプルで地味な感じがしますが、実際は屈指の装飾性を持った賑わい空間なのです!

和室では一般に、天井に杉板を用います。和室には床に畳、壁に土塗り壁と、とても触感に富んだ素材を用いますが、天井にも杉という柔らかい木を用いることで、視覚と触覚に豊かに訴えかけるコーディネーション。

下の写真は、珍しいグレー色の網代天井をしつらえたモダンで美しい和室。網代天井は、色をかえて、さまざまなインテリアスタイルに合わせられる素晴らしい素材なのかもしれませんね。
そして下の写真はシックなナチュラルモダンの和室ですが、こちらも中央部に網代天井を設けています。壁や障子窓はキリッとした硬質な表情ですが、天井に触感豊かな素材を用いることで、豊かさを倍増させています。

リフォーム・リノベーションでこそ天井は生きる!

リフォーム・リノベーションではとかく制約面に悩みがちですが、実はこんなときにこそ、天井デザインの成果は大きく発揮されます。特にマンションのリフォーム・リノベーションでは、既存の大きな梁をどう処理するかが設計者の腕の見せどころとなります。

下の写真はマンションのリノベーションですが、天井に段を設けることで既存梁をうまく隠しています。そして段差を利用してエアコンを設けています。さらに段差部分を曲線で囲って、インパクトあるデザインにしています。
リノベ不動産|Beat HOUSE「変わった間取りの物件こそ、リノベが生きます」
アウトドア用品、スノーボードや自転車などが十分における夫自慢のガレージのある住まい。
ガレージと玄関から室内に入る動線上の天井しつらえに変化をもたせてスペース分けをしています。自転車メンテナンススペースも、ガレージ横で大きな掃き出し窓も作って車からすぐに下せる動線がとても便利。
住まいの魅力は天井を工夫することで倍増してくれます。天井は間取り図には現れてこない部分なので、はじめのうちはちょっとイメージしにくいかと思いますが、ぜひ設計者に頼んで室内の完成予想図(パース)か模型を作ってもらいましょう。これらを見てみると、天井の存在感がいかに大きなものであるかがおわかりいただけると思います。

特にリフォーム・リノベーションの住まいでは、制約を逆手に取ったような魅力を天井がもたらしてくれるチャンスは多大です。天井を工夫して、ぜひ楽しい頭上生活を手に入れましょう!
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