注文住宅

RAY

面積:

122㎡

エリア:

東京都世田谷区瀬田

実施時期:

竣工:2011年7月

内容:


敷地は東京の都境を流れる川沿いの街。駅から程近い高台の敷地周辺には緑が溢れ、良質かつ閑静な住宅地が広がっている。外資系金融関係にお勤めの建て主が新たに購入した分譲地は、細長い通路の先に敷地がある「旗状敷地」であり、東京独特の敷地形状である。

 道路に面していない敷地はいささかネガティブな印象を抱きがちであるが私はそう考えない。むしろこの通路こそが道路と住宅を繋ぎとめる重要な緩衝帯として生かされ、パブリックとプライベートを接続させるパサージュ(街路)になると考えている。また、敷地の奥には見下ろしの緑景が広がり、借景として室内に取り込むことができる。加えて敷地周辺の景色を巧みに取り込むことや風の通り道を十分に留意しながら、配置や開口部の計画を丁寧に行っている。

 1階には主寝室と客間、ボディルームを配置し、家族の空間は日当たりの良い2階に配置した。ダイニングとリビングの間に緩やかな段差を設けたのは、単純なワンルームに変化を与える役割に加え、高台敷地周辺の空気感を内部空間にも表現したかったためである。天井をあえて低く抑えたダイニングキッチンにはのびやかな水平連窓を設け、通路側や敷地奥まで見下ろすことができる。その一方で、高い勾配天井に面したリビングは、3階の子供室やスタディルーム、ルーフバルコニーと吹き抜けを介して連続する大らかな空間。トップライトやハイサイドライトからはダイナミックな光が降り注ぎ、壁面に陰影を生み出す仕掛けとなり、室内からは自分達だけの空を眺めることも可能だ。建主の人柄同様、環境の力に逆らわない「素直さ」こそが。この建築で表現したかったことである。

2012年 日本建築家協会優秀建築選100受賞



■DATA
敷地面積:130.11㎡(39.35坪)
建築面積:48.17㎡(14.57坪)
1F床面積:48.17㎡(14.57坪)
2F床面積:47.48㎡(14.36坪)
3F床面積:26.85㎡(8.12坪)
延床面積:122.50㎡(37.06坪)
構造:重量鉄骨造
規模:地上3階建
用途:専用住宅

このプロジェクト事例を手掛けた建築家

黒崎敏

建築家 / @東京都

建築には安全性や機能性、意匠性などが求められますが、それだけで十分とは言えません。我々建築家が創り上げる空間には、何よりクライアントや社会が求める豊かな精神性を表現しなければならないと考えています。  人間や自然、あらゆる人工物との関わりの中から導き出される空間は、社会や環境と結び付きながら時代と共に緩やかに進化し、それに呼応するように人々も変化を遂げます。このようなゆらぎのある生命体との共存こそが建築の本質的な役割であり、設計における導線のあり方や光の扱い方、風の導き方や素材の選択手法などのデザインを決定付ける大きな要因となることでしょう。  大胆さと繊細さの両極を意識し、人間としての視野を広げ、洞察を深めながら、時に流されることのない品格のある建築を目指して、一つひとつの建築に丁寧に向かい合いたいと思います。

黒崎敏

建築家 / @東京都

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