戸建リフォーム・リノベーション

『緩やかな境界線を持つ家』 ワンルームに沢山の場所がある

費用:

1000万円

実施エリア:

埼玉県所沢市

実施時期:

2004年5月

延床面積:

150平米

築年数:

17年

内容:

築17年の2階建中古住宅のリノベーション。
家族構成が変化することに伴い自宅の増改修をすることになった。
既存建物への不満から、大幅な改修も検討したが、工事費の都合などもあり、既存部分の状態を良くも悪くも素直に受け入れ、積極的に再利用していくことにした。
既存外壁の間口が一間弱という使い勝手の悪い寸法で雁行していることで生じていたデッドスペースについては、そのダブルベッドのような寸法に着目し、子供が増えた際、夫婦の寝室となるコーナーとしてしつらえた。既存の筋交いや梁を出来るだけ残しながら増築したことで、平面が不整形になり、下がり天井が生じてしまうような場合についても、それをネガティブにとらえるのではなく、不整形平面の流動的な形状が庭へ視線を導くことや低い天井が印象的に庭の景色をフレーミングすることに着目し、その効果を積極的に生かすような大型サッシの採用、内装材の選択を行った。
こうした行為は、新築の際に、敷地や周辺環境を受け入れ、読み解いていくのと同じように、前向きに既存の状態と向き合う、既存部分をいわば「第二の自然」として捉える行為だと思う。当初、増改修は特別な仕事のような印象があったが、このように捉えることで、身近なものと感じるようになった。

2階の個室は、増改修によって、設計事務所、団欒の場、また家族構成が変化したときの寝室の確保という多目的な要求に応える必要があった。
複数の個室を設けられるほどの広さではないため、特定の目的に特化しないニュートラルな性格の空間を中心に、それぞれの用途に特化した各コーナーを、間仕切りを介さずに配することにした。
ニュートラルな空間は、増築部分を生かして天井を高くし、住宅というくつろぐ雰囲気と、事務所というクールな雰囲気にも適するよう、内装材にはライムストーンのような趣きのある藁入り漆喰仕上げを採用した。左官仕上げであることを生かして、内壁や天井の形状は複雑な形とし、サッシ位置や形状も、内部からの論理ばかりでなく、内装の彫塑的な雰囲気が外部からも伺い知れるようにすることで、外部と内部の距離感が縮まるような効果を期待している。
また、ニュートラルな空間とひと繋がりに設けられた各コーナーには、それぞれの用途に適した仕上げ(くつろぐためのソファーコーナーには香りのよい青森ヒバ、作業コーナーには資料の掲示板を兼ねた有孔シナベニア、将来寝室となる和室コーナーには、ダークグレーの柿渋灰かぶせ和紙)、そして各々に異なる天井高さを与えることで、空間を差別化している。
ニュートラルな空間を中心に、各コーナーがその時々に応じ緩やかな関係を結ぶことで、その場の質を生み出し、私達の多様な生活を可能にしている。

2階アトリエ・居間

アトリエの居間にあたる場所。正面の本棚は、既存住宅の耐震診断で不足する耐力を補うための壁でもある。
本棚のデザインは垂直性を出しつつ、左側のソファーに座った際、奥行きを感じさせるため、本棚の幅を徐々に変えている。
本棚の中央上部にあるのは、外観から見えるガラス箱。
教会の上部から柔らかく降り注ぐ光をイメージした。

2階アトリエ・ワークスペース

アトリエは増築し、天井をできるだけ高くした。
室内は埼玉県川越市の蔵の左官職人さんと、サンプルを作成するなど試行錯誤の上、ワラ入り漆喰仕上げとした。昔ながらの漆喰は、年月が経過するごとに白さを増し、また、調湿機能、断熱性に優れた素材でおすすめ。
床は30ミリの厚みをもつ秋田杉のフローリング。香りがよく、夏は素足に気持ちよく、冬は暖かい性質を持つ。やや柔らかいのが難点であるが、小さなお子様には転んでも痛くない優しい素材でもある。
右手ワークスペースは1枚の板をテーブルとすることでシンプルで使いやすい。
その奥が寝室となっており、引き戸を開けると、そちらからも座ってテーブルを使うことができる。ワークスペース正面の壁は有孔シナべニア。掲示に優れている。

2階アトリエ・夜景

アトリエは夜は居間として利用するため、色々な場所に応じた照明を設置して楽しんでいる。暖色系の照明の光によって、昼の白い空間とは違った、木の温かみのような素朴で上質な味わいが出る。

庭に面した明るいリビング

既存の4枚のサッシを撤去し、幅3メートルのペアガラスに取り換えたことで、庭とのつながりができた。季節毎に移り替わる緑の風景が美しい。
写真では見えないが、庭への出入りのために、ガラスの右側奥に勝手口を設けた。
天井は手前のリビングよりもあえて低く抑え、仕上げも香りのよいヒバで仕上げた。

1階リビング兼オーディオルーム

既存のリビングをリノベーション。
庭に面する4枚のサッシを撤去し、少しだけ増築。そこに3メートル幅の1枚ガラスを設置することで、庭への開放感をもたらした。
テレビは壁掛けとし、その下にオリジナルのオーディオ収納を設置することで、すっきりとしたリビングに生まれ変わった。
座卓の生活のため、オリジナルデザインで制作。グッドデザイン賞を受賞したこの座卓は、側面に、リモコンをずらりと収納することができ便利。

ガラス箱のある外観

埼玉県所沢市にあるアトリエ兼住宅。
20数年前に建てた住宅にアトリエを増築してリノベーション。
明るいアトリエにするために、ガラスの箱を東側の屋根に設置。
増築された外壁の上部は、表情のあるガルバリウム鋼板の横貼りとし、下部は丈夫で汚れないフレキシブルボード仕上。
夜は外観のガラス箱が室内の光によって『行燈』のように柔らかく光る仕組み。