注文住宅

『モンタージュ』プライバシーを守りながら開放感を保つ家

実施エリア:

埼玉県東松山市

内容:

70代の夫と50代の妻が暮らす平屋の木造住宅。来客が多いため、大勢が集える広間とプライバシーが確保できる寝室の他、夫婦それぞれの趣味室と客間2室を希望された。また庭から自由に出入りでき、庭でとれる野菜を洗える屋外スペースも求められた。

そもそも区画整理による開発地150坪を建て主が購入したのは、土地の半分を菜園とするためであった。区画整理事業は現在も継続中で、敷地周辺にはまばらに戸建住宅や木造アパートが建つばかりである。つまり、現時点で建築を定着するガイドとなる周辺環境が存在しない。しかし、敷地北側には4車線の高架道路が、東には3階建ての高齢者福祉施設が、道路を挟んで南には、マンションが計画されている。数年の間に周辺環境は一変し、外部に開放を求めるのが困難になることを想定する必要があった。

外観は、正方形の平面を立ち上げた箱を道路、隣家、菜園、物置とのバランスにいて配置するに留まる。 内部においては、天井高3.6mのこれもまた正方形の居間を、外側の正方形とは中心をずらして配置している。居間の周辺部には、他の居室と水まわり、半屋外的な中庭を風車状に計画する。居間と周辺部は引戸によってつながるが、壁をもたないため、居間から360°向こう側の空間へと視界が開いていく。
居間には壁がなく天井も高いことから閉塞感はないが、外部に対しては閉じた空間といえる。光は、外周部の諸空間の窓を通して入り、間接光として居間に注がれる。これは敷地周辺環境の変化を想定した解答であると同時に、外周部を光によって空間的厚みをもつ現象的境界として規定するものである。居間に立つとき、方位や前後といった感覚を無効としながら、隣接する空間に視覚的、空間的、現象的重合(モンタージュ)を意識する。

極めて図像的平面計画でありながら、視界は、意識は、常に外側へと流れていく感覚が、この建築の本質にある。