注文住宅

タガイ/チガイ

面積:

169㎡

エリア:

埼玉県

実施時期:

2007年

内容:

・設計段階での家族構成は、ご夫妻と3人の小学生のお子さん。が、建て主さん曰く「子供達は18歳で出て行くかもしれないし、30までいるかもしれない。今は隣に住むばあちゃん達2人も、一緒に住むかもしれないし、そのままかもしれない」が「最終的に夫婦2人で7LDKに住む、という状態にはなりたくない」…もっともです。

・そこで、目指したのは「いびつなワンルーム」。寝室と子供部屋3つ を並べる代わりに、リビングを中心に全部がひとつながりの、空き地のような、ただしデコボコとしたスペースを準備しました。

・全体は、4つの帯でできています。隣り合う帯を、平面的/断面的、内と外とに「タガイチガイ」にずらすことで、空気的には繋がり、気配は感じつつも姿は見えない隅が出来、性質の異なる領域が生まれます。
・4つのうち、3つの帯の端は小さな塔となっていて、その上のロフトは各子供の基地です。アルコーブ状の最小限の基地から、ライブラリ、階段、 リビング、和室、 テラス、縁側と、性質を変えながら間 仕切なしに連続する家族共有のスペースを、子供たちは、その時々で選び、飛び地のように占領します。
例えば学校で、教室の自分の 席の他に、校庭のある樹の下や、図書室の窓際の席など、お気に入りの場所があったように、住宅だけれども、その時々で家族の各メンバー が、陣取る場所と互いの距離を選べることを考えました。

・家は目下のところ、ほぼ基地にたてこもることなく、床におもちゃをひろげ、階段に座って宿題をし、行き止まりのない家中でおいかけっこ をする子供たちに占拠されていますが。が、将来、今は絵本であふれた2階ライブラリを、父の、母の蔵書が、じわじわと占めていく光景もまた、想像できます。

・ひとり(個室)か全員(LDK)か、の二者択一ではなく、また「パブリック」と「プライベート」の2分節でもなく、その間に無限に存在する家族のメンバーの組合せ、人と人との距離をできるだけ豊富にする。そのことが同時に、時とともに家族が成長し変化しながらも、多様に暮らしていける家の形を提案しました。

Photo: Masao Nishikawa

西、道路側外観。全体は4つの帯で構成されている。
photo: Masao Nishikawa

リビング・ダイニング。和室にそのまま繋がる
photo: Masao Nishikawa

吹抜からの見下ろし ほぼ全ての場所が間仕切なしで繋がる

2Fライブラリーゾーン 
3人の子供達の絵本や玩具は、共用のものも多く個室に置く必要はない。1Fリビングと吹抜でつながった2Fの手摺にあたる部分をぐるりと本棚とし、家族皆のライブラリとした

2Fライブラリーゾーン。
奥の左右のアルコーブが子供達個々のスペース(上にはロフト)。
3人の子供達の絵本や玩具は、共用のものも多い。1Fリビングと吹抜でつながった2Fの手摺にあたる部分をぐるりと本棚とし、家族皆のライブラリとした

壁の色は、それぞれ子供達が選んだ色。はしごを上がるとロフト。

キッチンから上がれる2Fユーティリティ。奥は寝室

洗面側からユーティリティを通して、モザイクタイルの貼られたキッチンを見る。
左は家族の人数分のそれぞれの衣類が収まる造付棚。各個室ではなく浴室脇のこちらにまとめてあることで、洗濯後の収納の手間も減り、合理的。
右側は階段下を棚として活用。食料品のストック、瓶なども様々なサイズの棚に収まる。

山岸綾

竣工したてが美しい住宅よりも、住まわれて使われて、時には手をいれて、育つような建築を、場所と住まい手の方とコラボレーションしながら、一緒に作りたいと考えています。 住宅設計の楽しいところは、住まい手の方と対話しながら、その家族が・その場所で・どんな距離で・どう暮らすか、という、絶対にひとつひとつ違う(しかも正解が一つではない)住まい方の、最初は曖昧な輪郭を、ワクワクと一緒に取り出していくところだと思っているからです。(リノベーションであれば、元々の建物の素敵なところを活かす面白さもあります。) この仕事を続けてきても、クライアントの方とお話しするたび、暮らし方・習慣や大事に思うポイントが本当にそれぞれで、「住む」ということの多様さにいつも驚かされますが、唯一の「家」の形をご一緒に楽しみながら探せたら、と思います。

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