注文住宅

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|ロフト/広間)

休耕地の家|ロフト/広間

ロフト1から広間越しにロフト2を見通す。広間奥行きは3間(5.46m)、間口は2間(3.64m)。ハイサイドライトの明かりが均等に平天井を照らし広間への採光を取っているのがわかる。ロフトと広間はこの様にオープンを基本としているがカーテンのようなファブリックでやわらかく仕切るのもインテリアの変化を楽しむ志向としても、また収納物を隠したいというときも有効である。ロフト奥の壁は非耐力壁なので将来窓を設けることができる。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|ロフトタイプの広間3)

休耕地の家|ロフトタイプの広間3

広間北側全景。右手に玄関ホール出入口や玄関と気配をつなぐ自由開口のニッチ窓があり、ソリッドなプランに柔らかさを取り入れ空間のバランスを取っている。広間の天井高さは3,754mm。ハイサイドライトからの明かりが平天井を舐めるように広がっていく。壁掛け時計はLemnos製(国産)のナチュラルなウッドフレームで空間に合わせて建築家からの竣工祝い。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|キッチン1)

休耕地の家|キッチン1

キッチンから広間を見る。照明は広間や和室がスポットライトなのに対して、玄関やユーティリティと揃えダウンライトで統一している。ダウンライトは色温度を切り替えられる仕様。広間との壁の一部はキッチンの吊戸収納。広間からも取れるように両面開ける方法もあるが、今回は施主がカウンターキッチンやLDKを望んでいなかったことから広間が極力物々しい雰囲気にならないよう、かつキッチンの物々しさを見せないように適度に区画している。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|北東側外観夜景)

休耕地の家|北東側外観夜景

宅地になる前には休耕地沿いに防犯灯が立っていたが、宅地の景観に配慮して防犯灯の移設や既設電柱を行政で撤去してくれた(奥に電柱が立ち並ぶのに対し休耕地から家までは電柱がない)。地域の明かりによる防犯という観点で移設された防犯灯に変わる明かりをこの住まいで実現させている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|東側外観)

休耕地の家|東側外観

はじめは製材業の施主に合わせて木張りの外観で設計した時期もあったが、維持管理、防犯面から見直して既成品のガルバリウム鋼板断熱パネルで包んだ。色は施主がグレー系を希望されたので何種類かのサンプルを確認いただいた上で決定した。 手前は下屋(げや)で玄関、シューズインクローゼット、キッチンが納められている。下屋上部には三連のFIX高窓が嵌められ、広間へ採光をとっている。この敷地は農作業を行う人が頻繁に通る市道と交通量が比較的多いバイパス的な市道の2面に接する角地であるため、寝室や広間のプライバシーを重視して設計している。下屋や広間を取り巻くインナーテラスなどの小間が効果的にバッファゾーンを形成している。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|東側外観夜景)

休耕地の家|東側外観夜景

沿道に対して内部が伺えないよう開口部の位置や数を制御している。広間を建物の中心に据え、東西に高窓を取ることでプライバシーを守りながら採光と通りに対して防犯灯のように照らす行灯の役割を意図している。自然環境に恵まれている分照明器具を減らし、虫が集まる箇所を減らすことも風光明媚な建築に必要な配慮として考えている。せっかくの快適な空間も虫が集まりすぎて気になって暮らせないなんてことにならないよう窓や外部照明の計画を心がけた。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|北東側外観)

休耕地の家|北東側外観

天候によって表情を変えるグレイッシュなガルバリウム鋼板断熱パネル。見る角度、距離によっても変化があり、できるだけ飽きが来ないリブの細かな波板を選定した。建物は延焼のおそれのある部分を避けた配置としているため本来なら特物に外皮の防火性能を上げる必要はないが、付け火被害などを考慮し防犯性能を上げるために採用している。防火上、維持管理上もコストパフォマンスのよい素材である。サッシ含めあくまで既成品の工業製品を用いながら、軒天に本実加工された杉板張りをすることで柔らかな表情を与えている。玄関ポーチの階段は100mm以下に抑え、関節の可動範囲が狭くなりがちな高齢者にも配慮した蹴上設定としている。将来は階段の反対側にスロープを増設できる計画としている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|インナーテラス)

休耕地の家|インナーテラス

3帖のインナーテラス。天井、デッキに杉を使い、デッキは施主支給材の120角を敷き並べ無骨さと耐久性を両立させている。広間、キッチン、寝室の3部屋に面しておりそれぞれの部屋に行き来ができるような位置にある。光のたまり場であり、物干しスペースや勝手口的な役割としても使える。同時に、テラス上部は寝室上部含めロフトになっており、広間の空間的な広がりと大収納を両立している。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|ロフトタイプの広間4)

休耕地の家|ロフトタイプの広間4

玄関ホールから広間へ至る出入口。広間正面にインナーテラス。その先に分筆後の休耕地が広がる。手前左手に見える自由開口は玄関側のニッチと小窓のセット。小窓はアクリル板で奥(南側)に見えるインナーテラス越しの風景を手前に引き寄せる効果もある。視線をインナーテラスへ向けると共に採光はハイサイドライトから採るという方法で窓の役割を制御し、プライバシーとの両立を図っている。テラス上部のロフトの壁は非耐力壁として計画しており、将来開口部を設けることができる。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|ロフトタイプの広間1)

休耕地の家|ロフトタイプの広間1

12帖の広間。白い壁の上部は3連のFIXでその壁の向こうは玄関、シューズインクローゼット、キッチンが納められた低いヴォリュームの下屋(げや)。白い壁、天井はロフトにつながり、広がりを生み出す。その他の壁はシナベニヤを練付け、床はミズメザクラ無塗装品に蜜蝋ワックスをDIYで塗る。木目がきつくなくやわらかな木質空間となっている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|ロフトタイプの広間2)

休耕地の家|ロフトタイプの広間2

3帖のインナーテラスとのつながり。白い壁には偏心アーチのキッチン出入口。杉板のカウンター上部には壁掛けテレビを設置。写真は曇りがかった時間帯のもので日が出ると午前中はこの高窓から日が差し込み、正午は庇で調整された適度な明かりが入る。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|仏間からキッチンを見る)

休耕地の家|仏間からキッチンを見る

引き戸を開け放った仏間から広間越しにキッチンを見る。仏間の出入口は高さを一般的な1.8mに絞ることで天井高さのある広間の天井が見えないひとつの「間」としてその先にある自由開口を際立っている。視線の先には型板ペアガラスの採光・換気窓、開口を横切るように檜のI型キッチンカウンターが垣間見える。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|仏間からキッチンを見る2)

休耕地の家|仏間からキッチンを見る2

仏間から広間に行くために一歩また一歩脚を踏み込むとぐっと高さを抑えた出入口あたりから広間の高窓が視線に入る。コンパクトな家の場合、この一歩一歩のシークエンスの変化をまるで映画の絵コンテを練るように丁寧にデザインすることを意識している。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|仏間)

休耕地の家|仏間

広間から仏間を見る。ご要望の仏壇置場と下部の抽斗収納。両脇にも収納を設けた。広間のシナ合板と同じ仕上げで統一し、檜の柱、杉の梁をあらわしにするなど広間反対側の白い壁と対比的に木質空間を全面に出している。また、広間から来客にも仏間が見えるよう要望があったので出入口は一間の二枚引き戸とし、フォーカルポイントを設けている。左手は南側の寝室出入口で奥にも仏間から出入りできる自由開口が設けられている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|和室)

休耕地の家|和室

仏間との続き間で5.9帖(畳部分で4.5帖)の和室がある。仏壇置場から連続した壁面収納で押し入れが二間設けられている。西側に面する居室であることから熱環境を制御するバッファゾーンとして壁面収納、地窓を設け、広間同様に仏間ともにハイサイドライト(FIX+縦すべり出し窓)を設けることで重力換気ができるパッシブデザインになっている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|和室)

休耕地の家|和室

仏間と和室を仕切る障子はワーロン紙の太鼓梁による3枚引戸。戸袋に収納できるため2室を9帖間1室としても使用できる。上部は下がり壁は設けず気配や空気の流れを作るために梁現しの欄間としている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|和室/仏間)

休耕地の家|和室/仏間

3枚引き戸を開けると仏間の先に南側の寝室へつながる偏平アーチの出入口が見える。左上部スポットライトの上は1帖のロフトが和室、仏間ともにあり、広間に面するロフトとつながっている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|和室/仏間/寝室)

休耕地の家|和室/仏間/寝室

仏間に面する寝室の木製引戸を開け放つ。南面する陽だまりの寝室のシナの壁面が明るく照らされ、自由開口のアーチのシルエットが仏間のインテリアとして浮かび上がる。寝室はゲストルーム的な使い方となるため、普段はこのように開け放ち空気の循環やフォーカルポイントを多くし開放的な使い方を想定している。仏間のハイサイドライトからも四季を通じて異なる太陽高度の光がときにはくっきりと、ときにはこの様に柔らかな光としてシナの壁面を明るめていく。畳は縁無しのほうが広く見せたり、縁に躓く心配も軽減できるが施主が縁ありを希望されたので採用している。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|和室/広間)

休耕地の家|和室/広間

和室から広間を見る。左手のシナの壁面の一部はユーティリティの出入口となっている。同じシナのアウトセットハンガー引戸とし出入口の存在感を薄めている。この住宅は在宅介護も想定して設計しているので、寝室と水廻りの距離を大事にしている。将来広間をケアスタッフや介護士などのケア空間にも対応できるよう間仕切りをしつらえて区画できるようにしたり、介護ベッドを搬出入するためにベッドルーム出入口を広くとったり先を見据えた計画をしている。正面の小窓から玄関の訪問客の気配が伺える。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|仏間/広間/寝室)

休耕地の家|仏間/広間/寝室

仏間から広間を通してキッチン出入口がフォーカルポイントとなっているが、南側寝室への出入口も同様にアーチの出入口となって部屋同士をやわらかくつないでいる。アーチ開口というのは通常曲げ枠を作らないといけないのでコストアップの要因にもなる。この家では3つの出入口と1つの小窓が曲率の異なる自由開口を設けているが曲げ木はひとつも使っていない。シナ壁面や白い壁面がシャープなエッジで開口を穿っており、ローコストなのに繊細なディテールが実現している。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|建具1)

休耕地の家|建具1

和室、仏間への2枚引き戸と南側寝室への開き戸の取り合い。引き戸はシナの壁面とフラットに納め、部屋の存在感より広間の壁面の一部という印象にとどめ、あくまで広間と和室が一室空間になるような建具のあり方を目指した。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|建具2)

休耕地の家|建具2

南側寝室の開き戸を開ける。寝室として最小限の空間で普段は多目的スペースとして利用される。近年家のどこからでも部屋の繋がりや見通されたオープンな住宅が増えたが、家というのは視線で繋ぎ止めすぎると距離感が破壊され、やがて成長とともに息苦しい環境となる。そうならないよう適度に開く/閉じる、籠もれる、つながれるというON/OFFができるプランニングを心がけたい。そして、広すぎる部屋よりも身体に見合った最低限の部屋を手に入れることと、部屋同士のつながり、その全体像の豊かさを楽しみたいものである。大きすぎる家はやがて自己管理ができなくなるのである。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|建具3)

休耕地の家|建具3

仏間も開け放った状態。(スイッチ、コンセントプレートは引き渡し前の状態で実際は壁面に近い色で合わせています)

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|建具4)

休耕地の家|建具4

すべて開け放った状態。寝室にの窓辺には長さ1.6Mのキャスター付きベンチ収納。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|建具5)

休耕地の家|建具5

仏間側の建具のみを開け放った状態。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|仏間1)

休耕地の家|仏間1

ハイサイドライトから光が落ちる。出入口上部の天井高さは2.2m。上部にロフトが見える。ロフトは隣の寝室上部のロフトとつながっている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|仏間2)

休耕地の家|仏間2

仏間と寝室の引き戸を開け放った状態。南側寝室からの光が出入口を通して回り込んで仏間の壁面を明らめているのがわかる。部屋の状態が常に静的で均質ではなく、良いかたちで他の部屋の光環境や風環境の状態の変化の影響を受けるようにできないか考えている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|仏間全景)

休耕地の家|仏間全景

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|和室全景)

休耕地の家|和室全景

地窓、高天によって開放的な周辺環境からプライバシーを守る。その閉鎖的な制御状態をキャンセルするように地窓、高窓から爽やかな光が入り込む。建築とはつくづく制御と開放の統合を美的に行うものだと感じる。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|キッチン2)

休耕地の家|キッチン2

スイッチで照明の色温度を切り替えた状態。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|キッチン3)

休耕地の家|キッチン3

IHの壁の隣はスノコ敷きのシューズインクローゼットで玄関、その先に玄関ホールが見える。広間の白い壁はキッチン側では収納や手すり、ニッチ窓が並ぶ。買い物袋をぶら下げて帰ってきたときは玄関ホールではなくすぐキッチンに行ける効率の良さがある。来客時も広間からキッチンー玄関へ行ける。裏動線もギャラリーのように清潔感ある空間となっている。キッチンカウンターは檜の2枚接ぎ。吊り戸棚やカウンター収納はシナランバーで大工工事でできる仕様を標準にしている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|キッチン4)

休耕地の家|キッチン4

色温度を切り替えた状態。食材の色をきちんと見たい場合は演色性の良いランプを選ぶ必要があると同時に色温度を高めに設定する。家や介護空間に共通するが洗面所やトイレなど血色や肌ツヤを確認する必要のある生理空間も同様である。おしゃれで色を選ぶ以外にも正しい知識で色や素材を選ぶことが本当のデザインである。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|玄関1)

休耕地の家|玄関1

玄関のこだわりは「開放感」「天井が高い」「採光」「玄関収納」「土間」「階段」「戸」というSUVACOのデフォルトでは説明がつけられなかった。玄関というのは人や物が出入りする表の、公の顔とも言える存在である。客を追い返すのも招き入れるのも入りやすさ一つで決まる。かつて宮脇檀さんは玄関戸は内開きが良いと言った。それは客人を招き入れやすくするには押して入るの方が入りやすくウェルカムだからというものだった。現代は引き戸が主流である。この家も引き戸であるが入った正面に「何が待ち受けているか」を大切にしていて、今回はニッチ窓を設けた。押し縁でアクリル板を押さえているだけなので取り外して視線のみならず空気もつなげてもよいだろう。勝手口的なスノコを上がった先にキッチンが見える。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|玄関2)

休耕地の家|玄関2

色温度を切り替えた状態。玄関、シューズインクローゼット、キッチンが機能的に並んだ空間だが、いわば字義通りギャラリーのような状態にもなっている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|玄関ホール1)

休耕地の家|玄関ホール1

玄関ホールコーナーに設けられたコーナー棚を兼用した郵便受け。留守がちな家庭は宅配ボックスを設けるほうが望ましいが、コストを気にされる場合や、知れた配達員で家の事情など察してくれるケースなら一般的なポストでよいだろう。この家の場合は壁面埋め込みタイプで外に出なくても受け取れる仕様とした。一番の理由は寒冷地なので冬季、朝家の外に出て心臓発作や脳溢血など寒暖の差による発症を避けるためである。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|ロフト用梯子)

休耕地の家|ロフト用梯子

北側玄関ホールと南側寝室上部の2箇所に各ロフトへ至る開口が設けられている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|ロフト1)

休耕地の家|ロフト1

玄関ホールから梯子を登ると6.5帖の大容量収納のロフト1に至る。天井は広間が平天井に対して高い方で1,280mm、低いほうで740mmの勾配天井。天井が切り替わる部分はトラフ照明等のライン照明器具設置スペース。将来器具取けができるようにスイッチ、2次配線までは実装している。ロフト照明を追加することでこの家の照明計画は完成するようになっているので住みながら手を加えるとよいだろう。左の壁にエアコンが取り付く。手前の壁は和室上部のロフト背面で柱、間柱を表し、引き抜き金物も表しとして仕上げコストを抑制すると共に、リビングの仕上げと対比効果をもたらしている。「束」の文字が小屋裏の雰囲気を助長している。すべてが真新しいのではなく、懐かしさを感じつつ、家の作りを一部でも知るスペースを設けることと施主支給材を見せるという要望の一部をダイレクトに反映している。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|ロフト2)

休耕地の家|ロフト2

「ロフト2」からハイサイドライト越しの風景を見る。この地帯は「居久根」という防風林を各家がみな同じ方角に植えていて、冬季の北風から家屋を守るという習慣がある。しかし高齢化が進むと屋敷林の管理がままならなくなり伐採するケースも増えている。この家もそうで、そのため建築で防風するように間取りや開口計画を施している。建築家から見れば、既成品のフェンスなどで画一的な外構になるよりも、本来のこの地域に根づいていた暮らしの風景に戻るような植栽計画や景観形成の自助努力もお願いしたいと考えている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|ロフト/和室)

休耕地の家|ロフト/和室

「ロフト1」から「ロフト3」越しに和室を見下ろす。和室2室の続き間としての全体像が一番わかる。天井の白が和室の壁半分まで立ち下がり、広間のシナの壁面が和室に入り込み収納までひとつづきの仕上げとして連続して和室の仕上げが自動的につくられている。コストの話と収納量の話で言えば、一般に床面積の1割あれば収納量は足りるとされている。しかし、基礎や地盤改良費などの工事費用が嵩んだり、予算が限られる場合、収納スペースを増やすことは施工床面積にダイレクトに反映されるため収納スペースに頼りすぎない整理整頓や物を増やさない生活上での工夫も必要である。この家でも建坪をコンパクトにしてもロフトを多くとっているのでその分の施工費は追加費用として載ってくることは留意されたい。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|ロフト4)

休耕地の家|ロフト4

寝室からロフトに上がると隣の仏間に面する「ロフト4」と出会う。ロフトの壁はこのように「半仕上げ」状態で下地を表しにしている。右手に広間が見える。突き当りの石膏ボード表しの区画は広間に面する神棚。施主が信心深いご家庭ということで一般的な旧家の神棚のようにしっかりとスペースを設けている。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|洗面所/トイレ)

休耕地の家|洗面所/トイレ

トイレはご要望の独立式。来客は玄関ホールに面する奥の開き戸から入り、家族は手前を日常動線として切り分けている。一般的に住宅のトイレは介護施設や公共施設ほど広く取るのは難しい。だからこそ日本のすまいはホテルタイプのように洗面所とトイレは一体的に設計するのが主流である。今回は独立を希望されたので将来介添えが必要な場合でも十分な最低限のスペースを備え、さらに両方の扉を開け放つことで介助し易さを向上できるよう配慮した。天井は杉本実小節~上小節。床はコストバランスと掃除のし安さを考慮しキッチン同様クッションフロア。

休耕地の家~農地転用後の平屋の住まい~ (休耕地の家|洗面所)

休耕地の家|洗面所

マーブライトカウンターにベッセル式洗面器。ご要望のシャワー水栓を取付けた。カウンターはW1200✕D500。できるだけ収納量を造作家具でというご要望とご予算をバランスさせることは容易なことではないのでいつも難しいが、カウンター下部の抽斗収納とミラー収納程度は標準としている。独立式トイレにも手洗器カウンター収納と吊戸棚を設けている。天井を木質にする理由は湯上がりの湿気を吸湿してもらうため。トイレを24時間換気にしているので、洗面所にまで換気扇を設ける必要がなくなる。壁も珪藻土など調湿効果の高い素材にすることで快適性は向上する。これ以上に洗面やバス空間を充実させたい、ラグジャリーにしたいという時は入念に予算計画を。

写真の説明を固定表示

(OFFのときは写真にマウスオーバーで表示)

いい家!
4

この家がいいと思ったらクリック!

関わり方

設計, 監理

用途

自宅

居住者

家族(子供1人)

所在地

宮城県東松島市

敷地面積

400.01㎡

延床面積

74.53㎡

階数

平屋

間取り

3LDK

期間

設計:6ヶ月 、施工:4.5ヶ月

完成時期

2018年07月

設計会社

前見建築計画一級建築士事務所

施工会社

若生工務店

宮城県指定の大規模集落に指定されたエリアに建つ23坪の木造平屋の住まいです。
身内の休耕地を譲り受け、農転許可、開発許可を受けて宅地造成を行った上で建築した分家住宅です。

施主が製材所を営んでいたことからできる限り支給木材を使うこと、3部屋、ロフト、トイレ別、対面式キッチンは避けたいなどが要求条件でした。プレカットは採用せず、昔ながらの手刻みで支給材を加工し建て方を行い、躯体や和室の柱・梁のあらわし、ウッドデッキなど要所要所に支給材を使用しています。

75平米というのは厚生労働省の住生活基本計画における「居住面積水準」で郊外や都市部ではない一般地域の大人二人暮らしが多様なライフスタイルを想定した場合に必要とされる床面積の水準です。

平面は五間四方(9.1m✕9.1m)の単純な正方形の輪郭を持つ入れ子構造が特徴で、「広間」と「小間」というコンセプトでできています。
12帖の広間の周囲に玄関-スノコ敷きのSIC-キッチン-杉の角材を敷き並べたインナーテラス-小部屋-仏間-和室-浴室-洗面所-トイレ-スレート貼りの玄関/ホールなどの小間が取り巻いて広間を周辺環境から守っています。
計画段階でライフスタイル(や気にする方は風水による部屋方位や配置)に応じて広間の広さや小間の種類や配置を変更することができる柔軟性があるプランニング開発を行いました。

広間に立つと3.8m弱の天井高が迎えてくれます。午前中はハイサイドから光が注ぎ、シナの壁面を日時計のごとく光が移動していきます。広間を取り巻く小間の上部には大収納のロフトが張り巡らされ、広間をさらに広く見せてくれます。正午にはインナーテラスが光のたまり場となり、夏は日差しを遮り南風を運び入れ、冬は広間まで光を運ぶ装置となります。午後は和室の地窓とハイサイドから美しい光が差し込みます。地に足をつけつつ空間の抑揚によって空の移ろいや室内を移動する光の戯れなどプライバシーを保ちながら時を感じることのできる断面計画となっています。

動線計画は廊下をなくすことで条件である部屋数や各部屋の広さをできる限り確保しながら「居住面積水準」を確保しています。コスト抑制を条件としてなおかつ部屋の広さを得たい場合は廊下を造ってはいけません。周囲の部屋同士の移動と居間からの各室への移動が丁寧に交通整理できている合理的なプランニングで、玄関ホールから広間を介さずに、スノコ敷きのシューズインクローゼットを介してキッチンに行ける家事動線も備えたり、キッチンからテラス、寝室からテラスへ一筆書きで行けるなど回遊性がある使い勝手が広がるプランニングとなっています。

東面(道路側)は一般的な軒高に抑えた玄関、SIC、キッチンが納められている下屋(げや)で、通りからの圧迫感を軽減するとともに下屋上部をハイサイドライトにすることで沿道からの視線を制御しつつ、居間への採光確保と、沿道や地域の行灯のようなシンボリックな光のかたちを与え、地域の防犯面にも寄与できるような照明計画を前提としてコスト抑制に努めながら慎重にかたちを導いています。西面は仏壇やクローゼット、押入れのヴォリュームを突出させて西日に対するバッファゾーンの役目を担わせ、東面同様突出部(下屋)上部をハイサイドライトとして採光窓と換気窓の連窓を設けています。

自然豊かな農業集落に建つため、外構などは住みながらゆっくり育てられるよう決めすぎないように施主に一任しています。

家づくりのきっかけ・施主の要望

東日本大震災で家屋を流失なされたご家族からのご依頼でした。土地を探すのも難儀し、奥様のご実家の空き家をみなし仮設として許可を得てしのいでおられましたが、玄関から床の高さが高くて全体がバリアフリーになっていないなど暮らす上で障壁が多い古びた空き家でした。当初はこのご実家の土地を分筆して再建をお考えでしたが、日当たりの悪い土地であることや、接道条件が農業用水をまたいでだったため橋をかける必要があるなど土地にかかる諸費用が増えることもあって断念します。この地域は大規模既存集落という県指定の農業地帯であり、奥様のご実家も営農されていました。ですが、加齢とともに休耕地が増え「自然を相手にする」ことがままならなくなります。そこで休耕地に建てることはできますかと?依頼がありました。条件などは上記事例の概要をご参照ください。

この事例の見どころや工夫したところ

安定したほぼシンメトリーなファサードに対して、入れ子の平面計画によって各部屋(小間)の個性が外観ににじみ出ることで日本建築の特徴のようなシンメトリーが微妙に崩されていくプランニングとなっています。コンセプトである「広間と小間」は東北地方の農家住宅に通ずる間取りの延長にあります。「田の字プラン」というのがありますが、これは農家住宅のうちでも愛知県など西側に見られますが、東北地方では田の字を一室の広間として利用してきたという文脈に基づいています。その上で今回広間を中心にその廻りに諸活動のための小間が取り巻くという単純な考えから断面計画や採光・通風計画などを考えています。

コストダウンの工夫というのはクロスや器具頭数を減らすとか、既成品のサイディングにするなどありますが、性能確保が大前提ですから大幅にダウンと言うほどではありません。
ただ、ロフトの床を構造用合板表しにするとか、ロフトの壁を間柱表しや引き抜き金物を隠さず見せるとか、フローリングを全面張らず水回りは低廉なクッションフロアで済ませる、フローリングを無塗装品にして蜜蝋ワックスを施主に塗ってもらうなどのメリハリはプロジェクトごとに考慮しています。

今回施主が材木の製材所を営まれていた関係で構造材、羽柄材は支給してくださったので、大工の加工費はプレカットより増えましたが、それでも材料費を抑制できた分トータルでは確実なコストダウンが実現できました。逆に休耕地を宅地造成したため、造成費用や支持地盤層が一般宅地より深く1mまで掘らなければならなかったので、その分の土工事、基礎工事はベタ基礎で済む地盤より倍のコストが掛かっています。しかし、この土地でベタ基礎にしようとすると地盤改良費が上乗せされ布基礎の方が安くなるという逆転現象が起きたため布基礎を採用しています。それにしても基礎の増加分を建物で抑制する必要があるわけですが、今回は木材を支給くださったことでうまくバランスしています。

構造は一般的な在来工法でバランスよく耐力壁を設け耐震等級3をクリアしています。そのうえで将来ロフトに窓を設けたいという場合にも窓を設けられるように非構造にするなど小屋組みの架構を一工夫しています。

施主の感想

これからお引越しなので入居後の感想はまだ聞けていませんが、とても喜んでくださいました。片付けや整理整頓があまり得意ではないとおっしゃっており、そのため極力置き型の家具やものは増やしたくないというクライアント様でした。そのためロフトをご所望されたのですが大容量のロフトは様々な可能性を担保して計画できたと思います。

事例の進み方

支給木材の利用や3部屋必須などありますが、基本的にお任せされました。当事務所ではいつも単純なヴォリューム模型から入り、比較検討を提示します。そのうえでメリット・デメリットを共有いただいて方向性を確認します。それは最終的な形のための取っ掛かりですが、並行して家族の癖のようなもの、設計に必要な家族像のようなものをヒアリングします。今回のようなおまかせの場合は設計者は事務所の仕様に基づいて周辺環境や立地条件、将来像をイメージしながらコンセプトメイクしますが、自分で仕上げや照明器具、家具は見聞きして決めたいという場合はショールームにご案内し決めていただきます。ただそれでも設計はこれが良いと思いますという理由や意見は必ず言うようにしています。建築はファッションではなく長くその場所に残るものですからできるだけ飽きのこないマテリアルやデザインを心がけるようにしています。空間とあう家具を設計することもありますし、ランドスケープもフローリストらと協働してご提案することもあります。

印象に残っていること

基本お任せいただいておりましたが、施主の廻りにも建築関係者などがおりまして、意見徴収などは行っていたようです。「こういうこと言ってました」とか「この方がいいそうです」という「他者の意見」をよく打ち合わせで聞かされました。その中でも神主から間取りが悪いとか土地に対してあと八度振ったほうがいいとか助言があったそうで、実施設計が進んでから設計変更を求められたこともありました。なぜその他者の意見が良いのですかと問うこともあったり、よくよく聞いてみると根拠がない意見を慣習的な信頼関係だけで鵜呑みにされてしまったりということもあり、それを解説したり軌道修正することが多かったのが印象に残っています。第三者的な意見を知りたい気持ちもわかりますが、あまり信心深すぎて自然の摂理などを無視したプランニングに陥ったり、設計工期が延びることでお引渡し時期も延びるためコストアップの要因になってしまいますので避けるべきことだと思います。良きパートナーとして共に良いものづくりにご参加頂ければ後戻りなく快適な住まいづくりができます。

パース/模型/CG/スケッチなど

いい家!
4

この家がいいと思ったらクリック!

この事例のコンセプト

手掛けた建築家

前見建築計画一級建築士事務所

前見建築計画一級建築士事務所

前見建築計画はお陰様で創業10年を迎え脂が乗ってきた設計事務所です。 建築計画、意匠計画を中心に学び、日々変化するライフスタイルや技術に対する複合的な条件を大胆さと繊細さでシンプルに統合することを強みとしています。 また安易に過去の◯◯風というスタイル(様式)を持ち込まずその場所の歴史や風景、お客様の雰囲気にマッチする最適なデザイン構築を行っています。 構造、設備エンジニアリングや必要なパートナーと都度チーム編成を行い、お客様のご要望を丁寧に実現してまいります。

所在地

東京都小金井市前原町3-2-29-206

資料請求

専門家のことをもっと知るため、まずは資料請求してみましょう。作品集やカタログ、会社概要など、資料の内容については専門家にご確認ください。

こんな相談ができます(匿名)

住宅事例や対応エリア・金額感についての質問や、打ち合わせの日程や内見同行の相談など、匿名で問い合わせ可能です。

前見建築計画一級建築士事務所さんのそのほかの住宅事例

この住宅事例を見ている人におすすめ

もっと見る

この住宅事例に関連するキーワード