注文住宅

ALLEY

実施時期:

竣工:2013年2月

延床面積:

102平米

内容:

8年前に墨田区で設計・監理を行った「MINI」のクライアントが結婚し、東京スカイツリーにも程近い下町の風情が残る小さな敷地を購入した。今度は夫婦のための家をつくりたいとそのご主人より依頼を受け、記念すべきAPOLLO2棟目のプロジェクトがスタートした。
前回の「MINI」同様、袋小路の奥にある狭小敷地であることから、車両の通行や施工性を考慮した上で主体構造を木造としている。外壁には落ち着いたダークブラウン色のガルバリウム鋼板横葺を採用しているため、古い街並みにも違和感なく馴染んでいる。
前面道路側をあえてガラス張りにすることで、昼は外壁に馴染むモダンな風景に、夜は内部の木造表し天井やストリップ階段がライトアップされ、光の塔のごとくドラマティックに浮かび上がる仕組みとした。ファサードの大開口部に加えペントハウスに設けたスカイライトからも光のシャワーが降り注ぐため、室内は明るく、住宅密集地であることを感じさせることはない。
大きな木製引戸を開けると現れる広い玄関土間の先には、客間としても利用可能なコンパクトな空間を用意。上り框に腰かけてながら、土間との一体感を味わえる中間領域は、昔ながらの日本の生活空間を彷彿させるマルチパーパスな空間である。2階のファミリールームには椅子やソファを置かずあえて掘りごたつ式の座卓をメインに据え、そこからは東京スカイツリーが見上げることができる仕組みとした。築地で食材を仕入れるほど料理やお酒が大好きな御夫婦のために2人で本格的な仕込みのできるコの字型のオープンキッチンを用意。キッチンエリアと座卓エリアの間に段差を設けることで、小さなワンルームのなかに程良くアクセントを生みだしているのも特徴だ。夜は間接照明をメインとしたライトアップで昼とは異なる非日常の空間が浮かび上がる。普段から忙しいエンジニアのDINKS夫婦にとって、精神に充足を与える空間こそが求めていた家の姿なのかもしれない。

■DATA
敷地面積 :52.78㎡(15.96坪)
建築面積 :32.89㎡(9.94坪)
1F床面積 :32.89㎡(9.94坪)
2F床面積 :32.89㎡(9.94坪)
3F床面積 :32.89㎡(9.94坪)
PHF床面積 :3.46㎡(1.05坪)
延床面積 :102.13㎡(30.89坪)
構造 :木造
規模 :地上3階建
用途 :専用住宅

黒崎敏

建築には安全性や機能性、意匠性などが求められますが、それだけで十分とは言えません。我々建築家が創り上げる空間には、何よりクライアントや社会が求める豊かな精神性を表現しなければならないと考えています。  人間や自然、あらゆる人工物との関わりの中から導き出される空間は、社会や環境と結び付きながら時代と共に緩やかに進化し、それに呼応するように人々も変化を遂げます。このようなゆらぎのある生命体との共存こそが建築の本質的な役割であり、設計における導線のあり方や光の扱い方、風の導き方や素材の選択手法などのデザインを決定付ける大きな要因となることでしょう。  大胆さと繊細さの両極を意識し、人間としての視野を広げ、洞察を深めながら、時に流されることのない品格のある建築を目指して、一つひとつの建築に丁寧に向かい合いたいと思います。