注文住宅

水庭の家

実施エリア:

栃木県

実施時期:

2008年竣工

延床面積:

115平米

内容:

夫婦二人と男の子四人のための住宅です。
初めてお会いし、プランニングを開始した時、ご主人は27歳。で、4人の子供。尊敬します。
少子化が進む中、小さな男の子が4人ということ自体が『家族の個性』と言えますよね。

夢一杯の家づくり

私と出会う2年前に土地を購入。その土地は変形旗竿敷地。「建築家に設計を頼むんだ」という強い意思で、ハウスメーカーでは建て辛い土地を、格安で購入したとのこと。
その後、なかなか自分達がピンとくる建築家が見つからず、ずっと建築家探しをしていたそうです。縁あって、私が設計をすることになりました。
夢一杯で始まった家づくり。昨日のことのように思い出されます。

平屋建ての外観

旗竿敷地で、竿の部分が約30坪、旗の部分が約100坪の土地です。竿の長さが20m近くあるので、ゆったりとしたアプローチとなり、車も3台余裕で並べられます。道路・アプローチは北側なので、北側玄関となっております。
敷地の周囲は住宅に囲まれ、南側に窓を設けても日光は期待できません。土地は平屋建てが充分可能な広さがあったので、建物は平屋とし、中庭から光や風を取り入れるように設計しました。なので、外観にはあまり窓がありません。
外壁は『銀黒のガルバリウム鋼板(波型)』です。ガルバリウム鋼板はローコストな材料ですが、使い方次第で、立派な材料に見えます。端から端までは21mほどあるので、結構な見応えです。
最初の提案で、「密集住宅地外に建つので、対してClose、内に対してOpen」というのが、気に入ってもらえたようです。

玄関を開けると

旗竿のアプローチを真直ぐ進むと、背の高いドアと長いキャノピー(庇)がお出迎え。
そして玄関ドアをあけると・・・。水庭の風景が、目に飛び込んできます。来客者は皆ビックリ、というか固まるらしい。
玄関の向こうが南側なので日当たりも良く、大きな空も見える開放的な玄関です。向こう側には、屋上へと続く緩やかな階段が見えます。

水庭あそび

内部に入ると。LDK、子どもスペース、玄関、廊下が一体となった平屋のワンルーム空間が広がっております。
家の中心に配置した中庭には水が張られ、子ども達にとっての格好の遊び場となります。
もともと、オープンな家族関係を理想とし、個室の子ども部屋は要らない。さらには、玄関らしい玄関も要らない。というご夫婦の考えでした。

最初の提案では、水庭ではなく、ウッドデッキを敷いた中庭だったのですが、奥さまが「水を張ると面白くないですか?」と。「面白いですね〜、でも掃除はどうしますか?」と切り替えしたら、「言った私が責任取ります」って感じのコミュニケーションにより、この『水庭』が実現しました。
「水庭のある家の子どもは幸せだろう」「時々水を入れたら、ホコリや汚れ対策に有効」などなど、前向きに。

家族の夢が詰まった『水庭』です。きっと、お掃除も苦にならない。と言うか、水庭のお掃除は、家族のコミュニケーションの大切な場にもなるでしょう。

LDK

キッチンはステンレス一枚板のアイランドタイプで、奥さま拘りのグローエのクロスハンドル水洗が可愛らしく付いております。
壁の裏側に、ちょこっと見えているのはバスタブです。
奥の開口部の外にはデッキテラスがあり、浴室からも出られるバスコート兼洗濯物干場となっております。
床仕上げとして用いたのは、フローリングではなく、ラワン合板の上にオスモカラーを塗っております。出来る前は安っぽくなるかと心配しておりましたが、結果として1820×910サイズの大きな合板が黒光りして、とても個性的な仕上がりになりました。

浴室からバスコートを見る

浴室とユーティリティ(洗面、トイレ、脱衣、洗濯機)とが一体となったワンルームで、カーテンで仕切られます。浴室の向こうはバスコート兼洗濯物干場です。洗濯が終わると、浴室を通って洗濯物干場に出れるので、動線的にとても便利です。
床はヒノキ板で、定期的に上げて干してもらっています。窓を開けておくと、風通しも良いので、気持ちの良い浴室になっております。
もともと建主さんは、ゴロンとした形の置き方が希望でした。出来上がった頃、3人の子ども達が浴槽に入って、じゃれ合って遊び始めました。それを見ていた1歳半の四男は・・・。
やっとヨチヨチ歩きを始めた頃です。目を離して、放っておいたら、浴室から泣き声が。見に行ったら、なんと浴槽の中で泣いているではありませんか。どうやら、浴槽に入りたくて、自力でよじ登り、頭から落ちた模様。
そんな浴室は、子ども達にとってもお気に入りの場所です。

建主さんからの手紙

(前略)
我が家も少しづつ、我が家らしく、こなれて来た感じがします。もちろん、汚れたり、傷ついたりはしていますが、それすらも愛しい我が家です。
ただただ、何もせずゆっくり床に転がって、雲を眺めているだけでも、それがとっても幸せだし、美味しいコーヒーを黙って啜っていても、心がしっとりと落ち着くし、とても不思議な魅力のある家です。
毎日毎日が楽しく過ぎて行きます。
(中略)
他の方がどういう風に感じて下さるかは、それぞれですが、この家は世界一の家です。間違いなく。不便もありませんし、何よりも飽きることがない。
ただ、ボーとしているだけでも楽しいから、家族はすっかりで出不精で、家が何より大好きで安らげます。
時間がこの家はゆったりと流れていて、客人も穏やかに時が過ぎていくようです。
皆さん「気付いたら、もう、こんな時間になっていたんだ〜!?」と、名残惜しそうに帰って行かれます。
居心地が良いと感じてもらえるのは、本望ですね。
(後略)
上の写真から、そんな生活を想像していただければ幸いです。

子供スペースから見た水庭の様子

水庭に面して、子供4人の勉強机とデザイナーズチェアが並んでおります。
水庭の向こうには、リビングやキッチンも見えます。
空は青く、雲のゆっくりとした動きが見られます。
家の真ん中にある大きな水庭の存在が、家族それぞれが何処に居ても、離れながら繋がっているという程良い距離感を保ち、大人だけでなく、子どもにとっても安心感を生み、その結果、自立を育む環境が創れたのではないかと実感しております。

水庭の夕景

「水庭を渡る風に心安らいだり、雲や星を見ながら過ごしたり。
子供たちと同じように、この家は色々と表情が変化するので、毎日新しい発見があります」と奥さまのお言葉。
夜になると、水面やガラス面に照明や星の光が映りこみ、キラキラ反射しあって、とても幻想的な雰囲気になります。

屋上から見た夕景

夕日が沈む頃、勾配の緩やかな階段を上り屋上テラスに出て、
そして振り返ると、こんな景色が目に飛び込んできます。
奥さまは、「暗くなって、ここからほんのり明かりが灯るリビングを見るのが好き」なんだそうです。
もちろん、ご主人や子供たちの動きに目を配りながら。
屋上から見る『花火』の眺めも抜群なのだとか。

水庭を体一杯に楽しむ子ども達

長男:気分転換に、よく一人で屋上にいます。叱られた時などは、スッキリするようです。
次男:広い家を存分に散らかす(笑)天才です。今日もあっちこっちで宿題を開けた形跡があります。
三男:家中を所狭しと走り回っています。朝日の差し込む部屋で目覚めるので、すかり寝起きが良くなりました。
四男:足取りも安定して、いつも3人の兄の後ろを一生懸命付いていきます。家の中に響く、可愛らしいテペテペという足音は、彼のモノです。

建主さんから戴いた、生活感溢れる近況報告でした。子ども達の喜ぶ顔が、私にとっても何よりの励みになります。