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敷地は地形のアップダウンが厳しい住宅密集地の中、谷間の東斜面にしています。
周辺を歩くと急傾斜に密集する建物の隙間からは思いがけない高さで向こうの屋根が見えたり、接近する建物の隙間から谷無効の遠景がのぞいていたり、多様な方向性をもった隙間を介して直近のものとそれらの物が密集する都市の遠景とが同時に存在する。立体的な風景の展開が見られます。
こうした地形と建物が密集してつくられる多様な解像度をもった隙間から風景に着目し、それを建築化することを試みました。
建物は敷地形状に合わせてやや東西に長い短形とし、東側と西側で床の高さを半階ずらしています。また短冊状の壁をお互いに接しないよう並べることで、壁と壁の間や床版の上下のように水平にも垂直にも重なりあうように隙間を構成しています。
東側には眼下の家々や谷向こうの緑といった都市の遠景が広がり、一方隣地と近接する南北方向は隣家の外壁や雨樋といった直近の物が見えます。半階ずれた上階と下階の生活と開口越しの風景が重層して、都市の遠景と直近のモノ、建物内の生活という異なる解像度が同時に展開することで空間が活性化します。
建物内はそれぞれが同程度の大きさとなるよう田の字に四分割し、各スペースの床の角を切り取った、その中心部分に吹き抜けをつくっています。この吹き抜けは四分割された各スペースが等しい関係性を持つように田の字に対して45度振れており、床同士をつなぐ階段スペースにもなっています。お互いが等しく向き合いながら半階ずつずれて3階に積層することでそれぞれのスペースはヒエラルキーなく並びます。こうしたニュートラルな空間構成は、一方で外部からの陽ざしや眺望、あるいは温熱環境の違いでそれぞれ異なる室を持った場所となります。