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札幌中心部の狭小敷地ながら、川に面した眺望のよい場所にたつ個人住宅です。
川に面した眺望と背後に住宅が近接している周辺環境の対照的なあり様を持つ「SPROUT」の敷地は、狭くて多様な居心地のいい空間と特徴的な外観を生み出すきっかけを与えてくれました。
変形した鈍いプロポーションを持つこの建築は、一見、特異な姿を見せながらも、対照的な周辺環境のあり様に対する開き方と、多様なアクティビティのための内部空間の細やかな分節・変化によって、必然的に形づくられています。
「狭さ」は決してネガティブなことではなくて、豊かさを内包しています。
敷地の形に合わせた最大限のフットプリントを確保しつつも、それを一様に使うのではなく、階段を中央に置いて内部をさらに狭くて小さな空間に分節していく。分節された空間は適度なレベル差がつけられ、それぞれが異なる「居場所」となっています。
「こんなに狭くて大丈夫!?」と少し心配になるくらい、クライアントと打合せを重ねる中で、自然に、狭くて豊かな空間が収斂されていきました。
狭さの感覚や質は、周辺環境との繋がり方によって多様に変化するものです。
LDKや浴室は、大きな開口・テラスと庇によって、ダイレクトな光をコントロールしながら、視覚的に外部と繋がる広がりを獲得しつつ、特徴的なねじれた外壁の外観を生み出しています。
一方で、玄関から続く小さな土間や小上り・主寝室は、ハイサイドライト等で間接的に光を取り込みながら周辺と視覚的な隔たりをつくることで、狭さが強調された居心地のよさを生み出しています。
周辺環境や空間との繋がり方をコントロールすることによって、分節された狭さに豊かさを与え、多様な「居場所」を生み出す。
多様なアクティビティが内包される住宅にとっては、光や視覚に対する不均質性のようなものが必要なのだと考えます。
この小さな家からクライアントの新たな生活が芽生えていくと同時に、この場所の古い街並みに対して、この建築が新たな芽となり、変化を生み出すきっかけとなることを願っています。