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この家の敷地は、まだ豊かな緑が残る山の北斜面に造られた造成地の北端に位置し、南東方向にはその山の頂を臨み、北方向には川の反対側の斜面を遠望することができます。建築主は、ここに家族3人と両親2人のためのローコストな二世帯住宅を建てることを要望していました。設計するにあたっての大きな条件は2つ。第一に、この敷地の特性を豊かさとして活かせるような家にして欲しいということ。第二に、奥さんの大好きなル・コルビュジエの住宅のようなデザインにして欲しいということでした。
建物は木造3階建てで、1階は親世帯と共用の水回り、2~3階は子世帯となっています。その南北に細長い形状平面は南北方向に3等分されています。南北両端に東と北に向かって眺望が得られる居室を配し、中央に共用の水廻りと縦動線である階段が収められています。設計において一番注意を払ったのは、眺望や隣家の窓の位置も含めた周辺の環境に生活の場を細やかに対応させるということです。木造軸組構造とした建物の柱・梁・筋交と窓との関係を調整し、室内外を選択的につなげるようにしています。隣家に面する外壁面では、隣の窓と向かい合わないような位置に窓が設けられ、パノラマ状の眺望が得られるところでは、部屋という単位を越えて柱・梁・筋交の位置とは無関係に水平連続窓(ル・コルビュジエの近代建築五原則の一つ)が設けられています。
この家の窓は、全体としては規則性がなく設けられているように見えます。一般的には、こういった不規則性をなるべく排除することがデザインを洗練させる方法と考えられていますが、この家ではあえてその不規則さを受け入れることにしました。不規則なデザインは、多くの家具や日用品で溢れている日常生活の乱雑さに馴染むと考えたからです。この家では、いつもきれいに片づけていなくても、あまり気にしなくていいのです。
室内の生活の場と周辺環境(眺めの良い方角や避けるべき隣家の窓の位置など)に合わせて窓を配置した結果としての不規則なデザイン
リビングの一角にしつらえられた書斎コーナー
廊下からリビングルームを見る。水平連続窓が廊下からリビングへと連続しています。
吹抜けからリビングルームを見下ろす。リビング上部の吹抜けは将来増床予定。
水平連続窓が建物の端から端まで連続しています。
水平連続窓を通してパノラマ状の景色が見られるキッチン
不定型な形の造付けダイニングテーブル。水平連続窓から周囲の景色が見渡せます。
水平連続窓があるベッドルーム